MCAP型の製作例5 |
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Feastrex 励磁型NF5Ex用エンクロージャー TR130c型 |
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TR130c型のコンセプト ミューズの方舟2008スピーカーコンテストに出品した、副空気室が3部屋、ダクト6本のエンクロージャーTR130b型は、そこそこのサイズでありながら、30Hzまでを十分なレベルで再生し、一部ではとても好評なシステムでした。 コ ンテスト終了後、モニターを募集していたところ、引き取りたいというご要望を頂いたので、開口部をを超高級品のFeastrex D5e TypeU用に改造し、お引渡ししました。お引渡しまでの間は、自分で購入したNf5Exを取付けて調整していたところ、Feastrexの励磁型にすっ かり嵌ってしまいました。お引渡ししたTR130b型と、Nf5Exとの相性は素晴らしく、聞けていたときは、至福の音楽を楽しむことが出来ていました。 それが今では、Nf5Exは、保管用の箱の中に静かに入っています。 TR130b型が出来過ぎだったため、同じものを再び製作しても良かったのですが、折 角なので、更に向上を狙って、新しい箱を製作することにしました。使用するスピーカーユニットは、Feastrexの励磁型、Nf5Exです。Nf5Ex は、同社の励磁型ではローエンド機種になりますが、上級機と比較してもさほど劣らない性能で、一度聞くと虜になります。高音の分解能が素晴らしく、高域が 強めに聞こえますが、少しもきつさがありません。この高音とバランスをとるには、中低域から超低域までを厚く聞かせることが必要です。これには、MCAP 型がぴったりなので、今回もMCAP型を採用しました。 MCAP型は、まだ始まったばかりですが、一度製作すると、他の方式はもう作る気がしません。MCAP型をうまく作ればバックロードホーンや共鳴管よりも十分に小さく、ダブルバスレフと比べても大差ないサイズで、中低域の落込みもなく、癖の少いシステム構築が可能です。 今 回の新作の設計にあたって、最初は、折角新たに作成するのだから、副空気室を4つに増やして、8自由度型にしようと考えました。しかし、サイズの問題、板 取の無駄の問題が解決できませんでした。そこで、結局、8自由度型は諦め、6自由度であるTR130b型の空気室とダクトの断面積を増やし、低音の更なる 増強を図ることにしました。 今回は、高級スピーカーユニットを使用するので、試行錯誤ではなく、13cm型の最終形にしたいと思います。 |
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設計の詳細 TR130b型に至るまでの複数のエンクロージャーを設計製作してみて分ったことがいくつかあります。 (1) 空気室容量にはゆとりがあったほうが、低音再生に有利で、共振周波数が同じでも、サイズが大きいほうが音圧が高くなる。これは、シングルバスレフの設計と同じことである (2) ダクトの断面積は、小さめのほうが音圧を大きくできる。大気開放側のダクトの断面積は、副空気室の容積と設計上の共振周波数とから決めるべきであって、振動板の面積に拘る必要性は少い。 (3) 内部ダクトの断面積は、大気開放ダクトの断面積よりも大きめにとるのが良い。そうしないと、バランスよく共振周波数を分散させることが難しい。 但し、今回採用するスピーカーユニットは励磁型のため、発熱により共振周波数の誤差が発生します。計算は困難で、永久磁石型との差は、誤差範囲のようですので、拘らないことにしました。 |
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設計仕様 最低共振周波数の目標を27Hzとし、1本につき18mm厚のサブロク合板を1枚と決め、試行錯誤した結果、表1の通りの設計仕様が決定しました。副空気室が3個のシステムで130mmドライバーでは3作目ということで、型式 はTR130cと命名しました。 注:製作のときに、片側を間違って組立ててしまい、修正しましたが、空気室の配分が異り、共振周波数が夫々違ってしまいましたので、元の設計のほうをTR130c型、間違って組立てて修正したほうをTR130c2型と呼ぶことにします。 表1 TR130c/TR130c2型の設計仕様
少し小型のTR130bでも十分な低域の再生が可能だったので、この設計では更に良くなるものとおもいます。心配なのは、全て合板で製作することにし たため、見た目が悪くなるということ位でしょう。20Hzの再生に挑戦も考えましたが、中低域を犠牲にせずに設計すると、かなり大型になりそうだったの で、今回は 見送りました。20Hzまで欲張るのであれば、空気室をもうひとつ増やして8自由度のQU型にしたほうが良さそうです。それには、奥行きを450mm位にまで大きく するか、高さを1100位にするかが必要になります。今回は、板を無駄なく使うことを考慮した結果、20cmシステムのTR200a型と大差ないサイズに なりました。大型と云えば大型ですが、設置面積はTR130bよりも若干小さくなっています。 |
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設計図 空気室の配置は縦に一列で、単純な三角法で表示します。三角法は、簡単そうですが、普段図面を見慣れていない人 には見難いかもしれません。製作図面はPDFで 示し ます。 また、材料は、サブロクサイズの18mm合板を2枚使用します。材質はスーパーシナアピトン合板としていますが、これは、作りやすさと価格のバランスを考 慮したもので、音の好みで決めたものではありません。音の良し悪しを決めるパラメータは無数にあり、材質もそのひとつではありますが、それだけでは音の良 し悪しは決まらないからです。 板取は、 PDFに示します。図面は、Nf5Ex用のものですが、少し加工すると、D5eも取り付けられるようになります。穴加工を変更し、FostexのFE138ES-Rを使用しても良い結果が得られることでしょう。 間違って製作することになった、c2型の組立図、板取図をリンクの部分に示します(初めから製作する場合の図面ですので修正して製作したものとは多少違います)。 |
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製作 製作にあたっては、板の寸法を確認した後、ダクトを組立てます。 ![]() ダクトを組立てたら、ダクトと間仕切りを組合せます。 ![]() 次に、間仕切りをバッフル板に接着してゆきます。 ![]() 下記は、間違ったほうのc2型です。この時点での確認が不足していました。 ![]() 次に、背面板と組合せます。 ![]() 左右が違っているのが分りますね。この時点では間違いをどう修正しようか決めていませんでした。 結 局、下記のように主空気室から下側(写真では右側)の空気室に向けてのダクトを付け、その下側(写真では右側)の空気室と最下部(一番右側)の空気室とを 結んでいた空気室を塞ぎました。空気室の容量配分は異ったものの、チューニング周波数は殆ど変わらない修正ができました。 ![]() 最後に側板を接着して組立完了です。 ![]() 今回は、アクリルラッカーではなく、ワシンのウレタンニスを使用しました。仕上の腕が悪いため、見た目、手触りは良くありませんが、許容範囲と思います。 ![]() |
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試聴 いつもと同じように、音楽ソースと正弦波を聞きました。 音楽ソースを聞いたところ、概ね想像通りの鳴り方で、低域は30Hzは十分出ているし、注低域の落込みも感じられません。ゲルギエフの春の祭典の大太鼓の一発でも、十分に受止めました。集合住宅なので、パワーを入れては鳴らせませんが、今迄では最高の鳴り方です。 当 然のごとく、弦楽器は美しく鳴るし、低音の輪郭もくっきりとします。TR130b型と組合せたときより多少低域の厚みが出てきたようで、高域がおとなしく 感じられます。全体のバランス、自然さという点ではTR130c(c2)型のほうが上ですが、TR130b型のほうが高域が切れ込んでくる感じが強調され ていました。好みの差の範疇に入る程度だと思います。音楽ファンには、恐らくTR130c型のほうが良く、サウンドマニアには、TR130b型のほうが好 みに合うかもしれません。 TR130c型を使用するときには、励磁の電圧は14V以上の高めにしたほうが、厚みのある低域に対して高域のキレが良くなりますし、大太鼓の一発の芯が強くなり、好ましい結果となりました。 放熱については、設計で意図した通りで、上側のダクトを通じて暖かい空気が排出されることを確認しました。これならば、放熱を気にしないで励磁の電圧を上げることができます。 低域の再生限界は確認していませんが、正弦波の32Hz以上は、振動板の振れも小さく、中域と同程度のレベルで鳴ったのに対し、24Hzでは、振動板の振幅が大きくなり、空振りとなりました。低音再生限界は、24Hzと32Hzの間のどこかにあるようです。 そ れにしても、Nf5ExとTR130c型エンクロージャーとの相性は良く、Nf5Exは、空気を的確にドライブして、TR130c型の箱を鳴らすことがで きました。この箱は背圧の負荷が大きいため、弱いドライバーでは、充分に鳴らないと思います。Fostexのドライバーを使用する場合には、 FE138ES-Rでは力が不足しそうなので、FE168SSあたりを使用すれば充分な力が発揮されるのではないかと思います。 総合的な評価としては、充分に設計通りの鳴り方で、満足できるものとなりました。 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
以上 | ||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||||
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