暗くなるまでこの恋を


レンタルビデオ店で遭遇した変なおじさんには気に入って貰えなかった映画でしたが、結局自分で借りて来てました。この映画を観るのは今回が3回目ですが、やはり素晴らしい映画でした。

1969年に公開されたこのフランス映画は、基本的にはサスペンス映画なのですが、そこでは究極の愛の形の一つが描かれています。カトリーヌ・ドヌーブが演じる女性マリオンは、お金やファッションに目がなく、男を手玉に取るのは朝飯前という魔性の女です。一方、ジャン・ポール・ベルモンドが演じる男性ルイは、自分が愛した女性に愛を捧げるためだったら自分の全てを失っても構わないという優しい青年実業家です。この二人の関係は「カルメン」のカルメンとドン・ホセの関係に良く似ています。こんな二人が出会えば、当然のように話は悲劇的に展開します。ただし必然性のある悲劇は決して嫌なものではなくて、とても素晴らしいものです。また、カトリーヌ・ドヌーブとジャン・ポール・ベルモンドという二人の名優は、それぞれ「はまり役」とも言えるような役を見事に演じきりながら、しかもとてもシックで、画面からは二人の華やかな魅力が伝わってきました。二人が一緒に画面に映っているだけで素晴らしい「絵」になっていました。

映画の中のセリフもカッコ良く、

「君に出会うまで人生は簡単だと思っていた」

とルイがマリオンに語るセリフにはとても感激しました。人の人生は誰かとの出会いによって大きく変わってしまうというのはよくある話ですが、たとえ悪い女に振り回されながらも、それを自分が選んだ道として肯定するルイの態度に感激したわけです。そんなルイの心境を表すセリフが他のシーンでも出てきますが、これもとてもいいセリフですので取り上げてみます。以下はルイが友人とやり取りするセリフです。

ルイ「彼女といて幸せとは言えないが、彼女無しには生きられないんだ」
友人「私が君の立場だったら・・・」
ルイ「僕の立場? 君は僕の立場にはなれないよ。これは君の人生には起こり得ない事なんだ。君は違うタイプの人間だ。これは僕に起こった事で、僕はこれに立ち向かわなければならないんだよ」

私は結局この映画は「男のための恋愛映画」の一つだと思います。絶世の美女だけれども究極の悪女がいて、その女性を愛するがために破滅に追い込まれてしまう男というのは、男の抱くファンタジーの一つだと私は思います。


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