ブリティッシュロックと私1998年1月16日更新
世界のどこかにイージービーツのファンサイトが既にあったなら、きっと私はこのバンドのサイトをつくったことでしょう。このグループのプロデューサーはビートルズで有名なジョージ・マーティン。しかし、恵まれた環境にありながらシングルヒットすらままならず、遂にアルバムの1枚も完成することが出来ないまま解散したグループです。ヴォーカリストのレグ・キングの資質と、音楽的リーダーであったアラン・キングのソウルに対する憧憬とが混じり合い、優れたブルーアイド・ソウルをバンドとして体現しました。このことは、強いパーソナリティや派手なフロントマンを擁していた同時代の他のバンドに比べると地味な印象を与える要因のひとつであったのかもしれません。ソウルのカヴァーの仕上がりの良さは1級品なのですが、キャッチーではなかったこともまた、彼らの商業的失敗の要因でした。 「I' ll Keep On Holding On」は、マーヴェレッツがオリジナルなのですが、このオリジナルはマーヴェレッツとしてはかなり出来が悪い部類に入ります。アクションは、それを見事に改作し、60年代ブリティッシュビートを代表する1曲にまで高めました。黒人女性コーラスグループが歌ったけなげな少女の思いを、レグ・キングとアクションというイギリス人白人男性グループが視点を男性の側に変更して歌ったことで、この歌は完全にいわゆるストーカーの歌に変質しました。憧れの女の子を物陰からじっと見つめている少年の姿を描き出したこのアクションのヴァージョンは、もしかしたら後年のポリスの「Every Breath You Take」に何らかのインスピレーションを与えたかもしれません。 スティングがどうかはわかりませんが、元ジャムのポール・ウェラーはこのアクションの大ファンです。「The Ultimate Action」のライナーノーツは彼の手によります。 今、アクションのレコードは、3タイトルしかないでしょう。前記の「The Ultimate Action」と、「Brain --- The Lost Recordings 1967-68」「Mighty Baby(Mighty Babyというアクションの後身バンドのアルバムだが、The Action名義の録音を含む)」だけです。 モッズバンドとして語られるのが関の山のアクションですが、カルトとしておくには惜しい実力派であることは、上記のいずれのレコードからでも伺い知ることが出来ます。初期のブルーアイド・ソウル時代も、中期のサイケデリック時代も、イアン・ホワイトマン加入後の複雑化していった後期も、いずれにおいても水準を遙かに凌ぎます。「Brain」は音が極悪ですし、演奏も完成度の点では劣りますが。 アクション、マイティベイビーと充実した音楽を残していた彼らですが、なぜ表舞台に出てこないかというと、ヒット曲がほとんど皆無なのと、活動の実績が乏しいことに尽きると思います。マイティベイビーの頃にはシングルヒットは以前ほど重要ではなくなってきていたけれども、彼らはイスラム教に入れ込んで放浪の旅をしたりと、依然として主流とは無縁な道を歩むのであった。後にアラン・キングはThe Aceを結成。しかし、彼のバンドはThe Boysに始まり、The Action、Mighty Baby、The Aceと素っ気ない名前ばかりで、検索エンジンで発見するのは困難なのでした。 「Brain」の音源は、元々はアルバム制作のための作品集であったのですから、デモの類は無理にしても、恐らくまだきちんとしたものが残っているんではないかと思うんですが、ポール・ウェラーがテープ倉庫に入る覚悟を決めない限りは見つかりそうもありませんね。 -- Discography -- The Action "The Ultimate Action" (Edsel Records ) The Action "Brain The Lost Recordings 1967/68" (ASACD01) Mighty Baby "Mighty Baby" (Big Beat CDWIKD120) 棚橋勝敏(イージーファン)
「Delerium's Psychedelic Archive」のThe Actionのページ 「Delerium's Psychedelic Archive」のMighty Babyのページ
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