Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 2: Elpha
part2


ハインラインブリッジ中村准将との通信二時間四十五分後・・・

「あと二時間ちょっとか」

フォルスリングはブリッジのスクリーンに提示されてる時間を見てつぶやいた。
あれから何も変化はなく時間が経っていた。
その間に彼は二機のトランゼスSのパイロットを決め本部への言い訳を考えていた。
エンジントラブルだけでは納得しないかもしれなかったので念のためにと。
ブリッジのクルーも独自の時間つぶしていた。
岬少尉は、熱心に本部から流れる通信をモニターしている。
いまの所、本部には嘘だとばれていなかったらしい。
五時間が何ごともなく終わってしまう気になっていたその時である。

「艦長、120.34.57 の位置にニュートリー粒子が異常発生、ゲートが開きます」

「わかった、お客さんの到着かな」

そういいながらスクリーンへ目をやると光が発生し、青い渦巻きみたいな現象が現れた。
しかし船は出なかった、代わりに光る物と閃光が現れる。

「な、なんだぁ?」

「どうした?」

「船の反応がありません!!こ、これは!艦長、ゲートから放出してるのは金属・・船の破片です!」

「なに?」

ゲートから光る物がどんどん流れ出し、きらきらと星のように輝く。
美しい現象という者もいるが索敵に付いていたサモン少尉の顔は明るくなるよりどんどん白くなっていった。
そして次にゲートから吹き出してきたのは眩しい閃光であった。

「なんだあれは?!」

「わかりません、少々お待ち下さい・・・・・・・」

サモン少尉は急いで艦のセンサーを使い閃光の解析に当たった。
そしてそれから出た結果をみて彼は

「解析の結果あれは船のエンジン暴走による爆発と断定!」

「反応炉事故がゲートの中で起ったのか?!」

「そ、それはわかりませんが、このままだと、ゲートが崩壊します!!」

「!!!!!!」

ブリッジにいる全員はそれがどういう事になるか説明が無くても分かっていた。
実際にゲートの周りに亀裂らしき物が現れはじめた。

「反転180°!最大戦速で離れろ!」

「だめです!間に合いません!」

その時、閃光はとうとう針を刺された風船から出る空気の様にその空間を崩壊した。
その結果、空虚が出来たところに物質が塞ごうと光の速さで集まった。
ぶつかり合うニュートリーノ粒子はそのあまりな強さに原子分解し、星をも破壊する融爆をおこした。
小惑星をいとも簡単に破壊出来る衝撃波が発生され、水面に水滴が落ちた時に起きる波の様に広がっていった。
その前兆とも言える振動がハインラインを揺らしはじめる。
その出来事にあっけにとられていたフォルスリング艦長であったがすぐに気をとりもどした。

「なにをぼけっとしている!シールド!シールドを展開しろ!総員対ショック体制をとれ!!」

「は、はい!!」

「総員、直ちに対ショック体制をとってください!早く!」

悲鳴に近い声で岬少尉が乗り組み員に伝えたが遅かった。
彼女自身が準備する前に衝撃波はハインラインの右舷に直撃した。

「きゃあああ!」

「うわあああ!」

「なんなんだぁあ!!」

右舷に付いていたカタパルトデッキはいとも簡単にもぎとられ、まるで波に攫われる木の葉のようにハインラインは衝撃波に飲み込まれいった。
中にいる人間はまるでカンを子供にふられた飴玉の様に席からほおり出されたり、寝ているところから飛ばされたりした。
電磁機が火花を飛ばし感電した人もいれば、爆発が起こり大怪我をした者もいる。
格納庫ではそのような衝撃を絶えるように出来ていないベッドからTAが倒れた。
数人のパイロットと整備員が下敷きになったのは言うまでもなかろう。
真沙緒が乗っていたトランゼスも例外では無く倒れはじめた。
だが起動していた為、彼女は反応的に腕を差し出し人を下敷きにすることを止めた。
その上に数機のTAが落ちる。
もしトランゼスSではなくハイ・ランツだったらその重さを支えきれなかったかもしれない。

「ヒュート!艦の向きを変えろ!」

「無理です!メインエンジンエネルギーの逆流でシールドを保のがやっとです!」

「ばかもの!後方スラスターを使って波へと艦首をむけろ!!!」

「は、はい!!!」

なんとか席に付き、いくつかのキーを押すとハインラインはゆっくりと方向を変えた。
そしてハインラインはなんとか衝撃波から通りぬけた。

「各所被害状況を報告せよ!」

艦長椅子につかまりながらフォルスリングは命令をくだしたが、答えがすぐ来るとはきたいしていなかった。



「よし!次!」

ぱん!と包帯が巻かれてる腕を叩くと、がっちりとした体格をもった白衣の男がは次の負傷者を呼んだ。

「いて!傷をたたかないでくださいよ先生」

「それぐらいの傷でなにをいっておる!ほらほらじゃまだ!」

「ったく、このおやじは・・」

「なにかいったか?」

「い、いや!失礼しますぅ」

一人が離れ次の男が医者の前に座った。
ここはハインラインの食堂である。
医務室で乗組員大半の治療を一度にすることは無理なのでここに緊急治療室と化した。
男性が治療されている場所のの反対側に白いカーテンが引かれ、女性の治療をおこなっていた。
そこには真沙緒と岬少尉の姿があった。

「ちょっとじっとしていてね」

治療機を片手にもった女性乗組員がその機械の先端を真沙緒の左太股に当てスイッチを押した。
先端が赤く輝くと同時に鈍い振動音がする。

「いた!」

痛みが急激に増えたため真沙緒はちょっと声をだす。
冷や汗をかいていた為、前髪の数本のが額にくっついていた。
看護婦は便乗しておらず、軽傷で済んだ者が治療を行っていた。

「はい、おわったわよ」

「ありがとう」

足を動かし痛みがないと確認した後治療台から降りた真沙緒は、治療のために脱いだスカートをはき直し、カーテンから出た。

「真沙緒!」

「薫・・・」

真沙緒を呼び止めた女性は岬少尉のこと薫であった。
彼女は額にしてある大型ばんそうこうを片手で押さえながら真沙緒のところまできた。
どうやら衝撃波がハインラインを襲ったとき頭をコンソールに当てたらしく、軽い脳震盪から来る頭痛のため片目をつぶっていた。

「大丈夫?」

「え?あ、うん・・・真沙緒こそ、格納庫の方は大変だったらしいね」

「・・・・・・数人が倒れたTAの下敷きになった・・」

真沙緒の手にちからが入り、目に涙が溜まった。

「・・・・・・・」

薫は何か言おうと口を開けたが、やめた。

「じゃ、私格納庫に戻るから・・・」

「うん、・・・今夜、だめ?」

「ごめん・・・じゃ、」

それで真沙緒は格納庫にもどり、薫もブリッジに戻った。



「負傷者150名、死者10名・・・メイン・エンジンはシールドからのオーバーロードと衝撃波により生じたエネルギーの逆流のため出力が25%に落ちてます。長距離センサーは現在使用不能です、復旧にはあと3時間かかります・・・・」

「もういい・・・衝撃波の被害はどこまで広がっている?」

「はい、軍の船が数隻が我艦の様に衝突し、同じような被害を受けてます、幸いにエルファ星系にたどり着く前に消滅したそうです」

「民間に被害が出なかったのが責めての救いか・・・」

艦長室でフォルスリングは、サモン軍曹より被害報告を受けていた。

「それで原因はつかめたのか?」

「いえ、それには調査船が必要なので現在我々だけでは解明は無理かと、ただゲートから吹き出ていたものは確かに船のかけらであり、数隻のものだと断定できます」

「数隻のものか、乗組員が全員死亡した事をねがうな・・・亜空間を永遠にただうよりはましだ」

「そうですね」

その時である、机の上にあったラップトップから通信の受信を知らせる音がなる。

「ふう、ご苦労・・残りは後で読ませてもらう」

「はい、では失礼します」

サモンが部屋を出た事を確認するとラップトップにあるキーを押しパスワード入力した。
それが受理されたところで中村准将の顔がスクリーンに現れた。

『飛んだことになったな、大佐』

「はい」

『私はすぐに帰還しろと命令したはずだぞ』

「しかし我艦はエンジン不調のため・・・・」

『嘘を言うな!新造戦艦にエンジン不調があるはずなかろう』

「かりにそうでなくても、被害は同じでしたよ」

『私が言ってるのは規律の問題だ』

-この男・・・事件の事をなんともおもってないのか-

『とにかく命令違反をした君の責任がとわれる、スラスターだけでも使ってさっさとその空域を離れろ!』

「しかし衝撃波のため、メインエンジンが・・・」

『心配するな、スペースタグをそちらへ向かわせた、付く前に復旧しないと軍の笑い者になるぞ?』

「・・・・わかりました、できるだけ早く帰還します」

『ああ、そうしろフォルスリング大佐いいな一刻早くそこから離れろ』

そこで通信がおわった。

「ふう」

大きくため息をするとフォルスリングはサモン軍曹の報告書を手にしブリッジへでた。



「よーーし!そのまま、そのまま!ゆっくり!」

トランゼスSが倒れているハイ・ランツの肩をつかみ引っ張り起こす。
そしてTAベッドに収めた。
がきん!という金属音でTAが固定されたことが確認された。

「それで最後だ!零少尉ご苦労様です!」

吐き気がする真沙緒はなんとかそれを押さえ、トランゼスSを自分のベッドに戻した。

「う!」

口を押さえ何も入ってない胃から込み上げて来る液体をできるだけ押さえた。
無理もなかった、格納庫に戻った彼女は、トランゼスSで倒れたTAをおこしベッドに戻すさい、無残につぶされた仲間の遺体をみなければなかったのだ。
死者がでたのがここで一番多く、まだ二、三機のTAの装甲には彼らの血と肉片がまだ付いていた。
整備員たちがそれをできるだけそれを早く落そうとしている。

『う、うげぇ!』

スクリーンに降板ではいている者の姿が見えた。

「ご苦労様です」

青い顔をしたランがコクピットから這い出る真沙緒を迎えた。

「どうぞ」

「ありがとう」

タオルをランがさし出したが、それを受け取ろうとした瞬間ランがそれでいきなり口を押さえた。

「げぇえ!」

と言う声とともにトランゼスSの胸に吐いた。

「あああ!ばか野郎!」

整備長が走ってきて彼を強引にリフトにのせた。

「あとで片づけておきます・・・う!」

「うん、お願い・・・」

としか真沙緒は言えなかった。

「零少尉はもうあがってください」

「いや、しかし」

「無理しないでください、早く行かないと命令にしますよ」

これ以上意地を張っても無駄とわかり真沙緒は小さくうなずくと格納庫を後にした。
自室に戻った彼女は制服を脱ぎ捨て、束ねていた黒い髪をほどいて、冷水のシャワーを浴びた。
それでも吐き気は消えず、とうとうその場で声を出して吐いた。
何も出なかったが少しは気分が良くなり、そのまま髪をまともに乾かしもせずシートを身体に巻き付け深い眠りに落ちた。
すべてが悪い夢であったことといのりながら。

Back|Next
Back to Story Index
Back to Tran-DS Index