Tran-DS: The Side Story of Tran-D
Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 5: The Beginning of the End
Part 3
頭が少々ボーっとし体が少しだるい感じでフェナは体を起こした。
「おはよう!」
元気な声でフィオが挨拶し、そばにいるシルフィードも一度吠え彼なりの挨拶をした。
「わ、わたし」
自分におきたことを思いだそうとフェナは手を額に当てた。
下腹部の痛みはやらわいではいたがまだ残っている。
さっきのことを思い出しフェナは慌てて手を下に当てる。
下着は新しい物にされており、なにかのパッドが入れられている。
なにこれと思い、取りだそうとしたとき真沙緒が手首をつかむ。
「だめよ・・・また下着を血だらけにしたいの?」
なにが起こっているのかわからず、うろたえた顔をするフェナをみて真沙緒は少し困った。
「フェナ貴方、まさかこの7年間の間生理が・・・」
なにそれという顔をするフェナをと真沙緒はあっけに取られたかのように口をぽっかり開けた。
沈黙がしばらく続いた。
はぁとあきれたのか真沙緒はため息をする。
「Will 聞こえてるんでしょう?どういうことなの?」
だが答えは帰ってこない。
潮の香りを運ぶ風が医療室のカーテンを靡かせる。
まあ、いっかと真沙緒はおもうとまるで自分が母親みたいじゃないと内心思う。
一度背伸びすると真沙緒は再びフェナと顔を合わせた。
「もう痛くないでしょう」
小さく首を立てにフェナは振った。
「なら、起きて着替えて・・出かけるわよ」
「え?」
フェナが首を傾げると真沙緒はほんとうにあきれたかのようにため息をする。
「ほら、フィオ貴方も着替えてらっしゃい、町に行くんでしょう?」
その言葉を聞くとフィオの顔は明るくなり、やったぁーと叫びながら廊下を走っていった。
○
一人の老人がラグナス重工の支社長と向かい会っている。
「なにか不機嫌そうだな、エドワード」
老人の顔の表情をみて、支社長のジックスがいう。
このエドワードと呼ばれた老人はジックスの側近的な存在であると同時にフィリスのお目付け役である。
ほとんどシンボルとしてTAデータ収集チームサテライトのチームリーダーをしているフィリスと違い彼が色々と仕事をしている。
彼がチームサテライトを動かしているといっても過言ではない。
変な虫がフィリスに付かないよう監視しているのも彼であるが、今の状況をあまり交合ばしく思っていない。
無理もないことではあったが、それを見て知らぬふりをしている支社長に対してかれはある程度いらいらしていた。
「ジックス様はいったいどのようにお考えなのです?あのような者に好き勝手させておいて、ましてやフィリス様をもまきこんでおります」
落ち着いてはいるが腹を立たせていることはジックスには見えていた。
フェナの過去を知っているもう一人の男として彼にとっていま地下の工場と言うべき場所で行われていることが面白くないのである。
フィリスも自分の言うことを聞かず毎晩おそくまでその怪しげな作業の手助けをしている。
「好きにやらせているだけだ。罪滅ぼしとしてはまだまだだろうがな」
「罪滅ぼしですと?ジックス様にそんなことをする必要がないのでは?」
なんの罪滅ぼしだ?とエドワードは言いたいのであろう。
「エドワード、何をそんなにうろたえている?彼女がやっていることは我々の計画のマイナスにはならんだろう」
「しかしお嬢様に危険が・・・・」
「そんな事はないことはおまえが一番よく分かっているはずだ。何をそんなに恐れている?」
そうだ、彼は恐いのだ、あのフェナという娘が。
母親と同じ姿を持つ彼女をエドワードは恐れているのである。
7年前自分がやった事がこのような形で帰って来るとは思いも付かなかったのである。
フェナは確かに死んだはずなのだ。
そうなるよう自分がある意味で糸を引いたのだから。
これは自分しか知らないことのはずである。
だが、こともあろうかのように死んだはずのフェナは生きている。
そして母親のように技術的な頭脳をもっている。
それだけではない、その美しさもそのまま受けついでいる。
彼女がハインラインから運び込まれる所を見たとき、さすがに心臓が止まるかと思った。
「おまえがフェナを前線へ送り出したことは知っている」
驚きを隠せず、エドワードはジックスと目を合わせた。
「私のためにやったことだろうがな・・・・何故そんな事をしたかは聞かん」
「あ・・・・」
ジックスは表情を変えずエドワードをみる。
「おまえは恐れていたのだろう?フェナのことが公けになることが、ちがうか?」
エドワードの拳に力がこもる。
「それともなにか別な理由があるのか」
その言葉を聞くとエドワードの拳に爪が食い込み始めた。
「エドワード・・・・おまえにはまだ私に言ってはいない事がありそうだな」
「い、いえ、そんなことはありません」
冷や汗を流しながらエドワードはやっとそれだけをいう。
もちろん嘘である。
彼はフェリスが憎かった。
彼女の才能がうらやましかった、そして彼女のジックスへの気持ちがゆるせなかった。
かんたんにいえば嫉妬心であったかも知れない。
しかしそれだけではフェリスの最愛の娘を死へ追いやることはない。
なにか原因がはっきりしない憎しみをエドワードをもっていた。
自分にない明るさなのか、彼女のいつまでも子どもみたいな性格であろうか。
人間には大した理由もなく人に憎しみを持つことがある。
フェリスはエドワードにとってはその人だったかもしれない。
フェリスの笑い顔をみると心中で黒いものがうごめいた。
『もう、エドワード、そんな暗い顔をせずに!そんなことでは・・・・・あははは!』
そうだ、その後に続いた一言である。
他人にとっては冗談ですむ物だったかもしれない。
だがその一言が押さえていた黒い物を開放した。
そしてできるだけこの女性を不幸にしてやると思ったのである。
その結果、フェナは前線で戦死した。
彼の「復讐」と言えるものは終わったはずであった。
これであの女も悲しさのどん底に落ちるはず、はずだった。
「エドワード・・・おまえは私にとっては欠かせない人間、いや友人だ。いままで私に仕えたことを感謝している。しかしこれ以上あの娘のことになると話しは別だ。なにかをした場合それなりの覚悟をしておけ」
「は、はい」
体の震えを押さえ、憎しみが表に出さないようにエドワードは素直に答えた。
話しは終わった。
何かも分かっているジックスいこれ以上何もいっても無駄である。
敗者は静かに挨拶をすると社長室を後にした。
ジックスは目の前のラップトップのキーを押した。
そこには最後にフェリスから送られて来たメッセージが出た。
それをもう一度読み直すとジックスはため息をする。
そしてポケットからたばこを取り出し火をつけた。
大きく煙を吸い込みそれを吐き出す。
煙は暗い部屋の闇へと上がり消えていった。
「これでいいのか、フェリス」
たばこの煙はただ暗い闇へと上っていき、答えを示さなかった。
○
「こら!フィオ!服が汚れるでしょう!」
フィオが町の風景をみながら走るのでころぶのではないかとフェナは心配しているのである。
買ったばかりが汚れるのはごめんである。
青いフレアスカート、白のブラウスそしてその上には青のブレーザー。
けして安いものではない。
どんなものがいいの?と聞かれたフィオはすぐにフェナの目と同じ色の服といった。
フィオのオレンジの髪には合わないと思われたが、返ってフィオを可愛らしくさせた。
いままで半ズボンだったので、始めてスカートをはいて、気にいったのかフィオは試着したまま店を飛び出した。
大急ぎでお金を払い、皆はフィオを追ったのである。
皆というとフェナ、真沙緒、フィオのほかミア、アーリー、フィリス、リックとシルフィードである。
もちろん女性のショッピングには荷物担ぎが必要とされる。
いかないといっていたアーリーとリックではあったが、美しい女性4人とかわいい女の子一人と一匹の頼みとなれば断れない。
リックとアーリーはこの先悪夢を見る覚悟でついて来る。
シルフィードも町がめずらしいのか吠えながらフィオを追いかけていく。
その楽しそうなフィオをみてフェナは来てよかったと思うと同時にフィオとまともな時間をすごさなかったことを後悔した。
フィオの笑顔をみると心が落ち着くと思いもしなかったである。
これなら、これから何回来てもいいかなとフェナは思った。
そんな思いに漬かっていたらフィオがフェナの服をちょいちょいと引っ張る。
「今度はフェナの番!」
それに賛成するかのようにシルフィードが吠える。
「え?私はいいよ・・・」
「そうはいきません」
意外にそういったのは真剣な顔をしたフィリスであった。
「貴方も女性なんですから!」
と何かに腹立てかのようにフィリスはフェナの手を掴み強引にある店に連れていこうとする。
「フィ、フィリスさん?」
あっけに取られミアは二人を追った。
真沙緒とフィオは顔をあわせ、小さく笑うと三人の後追う。
アーリーもリックもいきなり起こった事態が把握出来ずしぱらくぽかんとしていた。
そして五人がある店に入るとやっと我に返りったのである。
その店の前に来た二人の足は入り口で急ブレーキをかけた。
店の名前と窓に飾られている広告をみたためである。
Emita's Secretと窓にかかれてある。
そして広告には男の欲望を起こすような下着姿の美女が飾られていた。
「まいったね、こりゃ」
リックが照れくさそうに頭を掻きながら道の側にあるガードレールに腰を下ろした。
アーリーも店の中に入る勇気が出ず、リックの側に腰をかけしばらく待たされることと、荷物の多さを覚悟した。
店内ではフィリスが少々赤くなった顔を隠しながらフェナの奥へと進む。
目の前にあった店に入ってしまったのである。
ランジェリー専門店、その上一番有名であるそこに入るのはフィリスも始めてであった。
ミアと真沙緒も少々顔を赤くし、少々どぎまぎしながら二人についていく。
真沙緒に手を引っ張られフィオは何がなんなのかわからず、きょろきょろと展示されてある商品をみる。
フェナは少々迷惑そうな顔をしてフィリスに引っ張られていった。
しかしこういう店は女性の下着だけを売っているわけではなく服も売っている。
女性の美しさを引き立てるようなドレスとかスカート、ブラウスなど飾られていた。
そこまでたどり着くとフィリスはまるでなにか取り付かれたかのようにフェナにあうような服を探し始めた。
何あれ?と店の手前の方に指差すフィオに真沙緒はただ、まだ早いから知らなくていいのよと言うしかなかった。
といいつつ真沙緒は展示された物を見始める。
触って生地を感じたり、値段を調べたりしている。
気に入ったものを見つけると値段を見て真沙緒の目はまるくなった。
高いのである。
目を二、三回もつぶりまた値段をみる。
やっぱり最初に見た時の値段である。
大きなため息をしてほかの物を探そうとした時、しゅっと風を切る音を立てながら一枚のカードが投げられた。
「好きなだけ使えるわよ」
フィリスに渡された服と共に試着室に入る前のフェナが言う。
「え?こ、これどうしたの?」
真沙緒の質問にフェナはちらっとフィリスを見た。
「Willにちょっとおこづかいをもらったの・・・・」
ま、まさか?!と真沙緒がいう前にフェナは一刺し指を口にあてながらフィリスに引っ張られ試着室に入った。
ぽかんとした真沙緒が正気に戻るまで数分がすぎた。
外で待たされるアーリーとリックはガードレールの上に座って中の様子を見ようとしていた。
しかし、広告とか邪魔で、女性群が店の奥の方へとすすんだ事が重なりどうなっているか分からない。
「しかし、また高い所に入ったな」
リックが背伸びをしながら言った。
その時ある物が彼の視線に入った、この町の風景に似合わない物が。
町の風景を見るふりをしてあたりを見る。
一人、二人・・・ざっと7人。
「アーリー・・・・」
「気づいているよ・・・・・俺達を見張っている」
さすが元軍人だなとリックがいうと再びガードレールに腰を降ろした。
「で?」
アーリーは答えを知っていたがリックに意見を求めた。
「可能性は二つあるな・・・一つはおせっかいじじいの命令でお姫様の護衛をしている馬鹿。もう一つは・・・」
「俺は後者を選ぶな」
リックが言いおわる前にアーリーが二つに一つの答えを取った。
今度はリックがアーリーに尋ねて来る。
「で?」
「この顔ぶれで町を出歩いたのがまずかったかな?」
「そうかもな・・・だが相手は誰を狙っている?お姫様をさらったってあの社長はなにもしないだろうな」
「お姫様は二人、いや三人。相手に取って今一番いては困る相手はだれだと思う?」
「白雪姫か・・・・」
Tran-DSZの制作が始まった時、フェナと真沙緒がいままでの事を話した。
お互いTran-DまたはTran-DSに出会ってから危険な目にあわせた者同士。
話さない分にはいかなかった。
というのは真沙緒の意見であった。
フェナはどうでもいいように思っていたらしい。
二人にとって、フェナ、真沙緒とフィオにおきた事は、驚くべき事であった。
軍を大量に動かし、相手はTran-DSをつぶそうとしたのである。
そして一人の男がフェナを「再び」我がもののにしようとしている。
この事を聞いたアーリーはその男に対して激しい怒りが生まれていた。
かつてフェナと同じ戦車部隊に配属され、アーリーは弟みたいに可愛がられた。
しかしある日前線基地に突然キラードールが襲い、なぜかフェナは連れ去られた。
数週間後、逃げてきたのか、だれかに開放されたのかフェナは砂漠でさまよう所救助された。
拷問とかに合わされていたようでフェナは精神的に不安定であった。
男兵を叫びながら避け、夜になるとなにか抵抗しようとし服従させられたフェナの叫びが基地内響いた。
その内容からしてフェナはどんな目に合わされたか想像できた。
「再び」という言葉を聞いたときアーリーは直感的にフェナの悲鳴の原因を見出した。
当たり前だがこのことは誰にもいっていない。
言えなかった。
「リック・・・武装してきてるのか?」
「うん?ああ、しかしこれじゃ通用しないだろうな」
皮ジャケットの中に隠していた9mm口径の銃をアーリーが見えるようにちょっと引き出す。
「けんかは強かったっけ?」
「その質問をそっくりそのまま返すぜ」
どうすると思った瞬間二人は同時に店の中に飛び込んだ。
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