10月5日(日)

October 5th (Sun), タンペレ通信に戻る( Back to Index)


(秘密基地)

 冬になると、屋外に駐車してある車は、エンジンが始動しにくくなる。ましてや、ウチの Uno は、夏でも朝一番の起動には、10回ほどセルのオンオフを繰り返さないとエンジンが回らない車である。冬に備えて暖房装置を備えた駐車場を予約する必要があった。アパートの管理会社にサウナの予約に行った際に紹介されたのが、地下駐車場である。この駐車場、入り口は常時シャッターが降りていて、散歩の際に「これ何だろうね」と、家族共々不思議に思っていた施設であった。賃貸料は、月120マルッカ(3000円)だから、地価の高い日本の水準からすると割安間がある。
  
 (トンネル)       (地下駐車場)       (歩行者入口)

 駐車場は地下8階(ヘルバンタのスイミングホールと同様、核シェルターとしての使用を考慮して、このような地下深くに作った施設なのではないのだろうか。普段はエレベーターを使うが、ら螺旋の様に交差する二つの階段は、緊急非難用に思える)、岩盤の中をくり抜いて作った施設で、岩肌に直接塗装をほどこしてあるところも、スイミングホールと同じである。シャッターの前で、管理会社からもらった磁気(だと思う)キーを装置にかざすと、閉まっていたシャッターが上がり始める。まるで、サンダーバード(知ってる人は若くない)の秘密基地、少しカッコいい(現在、我が家ではは、秘密基地と言えば、この駐車場を指している)。シャッターをくぐると長い下り坂のトンネルが続くが、たちまちフロントガラスが曇ってくる。外は吐く息が白くなるような寒さ(日本人の感覚では十分寒い)でも、中は上着のいらない春の温度である。当然、地上の駐車場のようなエンジン保温用のコンセントは姿も形も無い(この装置を使うことを密かに楽しみにしていたので、少々残念な気もする。地上の駐車場は、どこが管理しているのだろう)。
 指定の場所に車を止めて、出口のエレベーターに向かう。ところが、厚い鉄の扉に阻まれてしまう。どこに鍵を当てるのだろうと考えていると、向こうから知り合いがやってきた。職場で廊下を挟んで向かい側に部屋を持つラッセさんである。彼なら英語が通じる。「この駐車場、使うのが初めてなので、出方が分からないのだが」と言うと、出口まで案内してくれた。エレベーターには1階(地上)と2階(地下)の表示しかないが、乗っている時間は長い。外に出ると、素子の保育園のすぐ北隣、今まで Uno を置いていた場所から100mと離れていない。

(ワイパー停止 II)

 冬期にワイパーなしで走ることは考えにくいので、フロントワイパーの故障したUno を修理に出した。Uno をを買ったフィアットのディーラーは、にあるのだが、何分ワイパーの動かない車である、日和を選んで(雨の降っていいない日を選んで)出向く必要がある。雨の降っていなかった先週火曜日の午後(この日はシンポジウムのバックアップのために朝5時から働いていて、午後3時を過ぎると、さすがに疲れてきたこともあり)、ディーラーに出向いた。調べてもらうと、ワイパー用のモーターとフューズボックスが壊れていると言う。両部品を交換すると、作業料込みで1,600マルッカだと言う。「待ってくれよ。それじゃ、購入価格の2割だぜ。」と、喉の奥まで言葉が出かかったが、言ってどうなるものでもないので止めた。
 なにしろ古い車なので、いろいろと故障のあることは覚悟していたつもりだが。期待に十分以上答えてくれる車である。それとも、これから更に楽しませてくれるのだろうか。とにかく、冬期のフィンランドを、この車で長距離走るのは止めた方が良さそうである。

(フィンランド語教室 II)

 週に一回の教室にはも欠かさず通っていいる。教室内では、私がどれほどの実力か全員が理解しているので、居心地は悪くない。全く手に負えないとき(の回数が多すぎる気もしないではないが)は、サリ先生が飛んできて英語で説明してくれるし、いつも私の前に座るフェリックスさんは、笑顔の素敵な人で、嫌がらずに下手な会話の練習相手になってくれる。奥さんはフィンランド人で語彙は豊富である。ヘルバンタから同じ教室に通うアンドリューさんも奥さんがフィンランド人。二人とも母国語はドイツ語のようだ。家庭内の会話は何語なのだろう。
 アンドリューさんは、ノキアに勤めている。ヘルバンタにはノキアの研究センターがあり、多くの電気・コンピュータが働いている。タンペレ工大の学生が就職先を決めたと聞くと、ほとんどがノキアである。それでも移動体通信(日本では知らない人が居るかもしれないが、ノキア・コミュニケータという万能携帯端末は、テレビコマーシャルによく登場する。携帯電話にファクス、インターネット端末の機能を加えたスイスアーミーナイフみたいな製品だ。)で急成長しているこの会社では、技術者が不足しているようで、多くの外国人助っ人を迎えている。Uno の修理のあと車で教室に行ったので、家までUno で送ると、彼も16年間同じ車に乗っている言っていた。なあんだ、みんな古い車に乗っているんだ。何しろ、テレビのコマーシャルで宣伝していたスズキのRV 車 (2L) が200,000マルッカ。車は全て(?)輸入車のフィンランドで、安く買えるはずがものね、と変な満足感があった。

(学科会議)

 金曜日の午後、数学科の学科会議があった。学科会議といっても、教員、技官、研究者(ほとんどが大学院の博士過程および修士過程の学生で、もしかしたら、学部の学生も含まれているかもしれないが、皆、大学からもしくはプロジェクト資金から給与をもらっている)合わせて総勢30名くらいの会議である。まともな会議になるわけがない。前回開かれたのは夏休み前だから数ヵ月に一度の会議か。学科の運営方針、新しく会議室に入れる机のデザインの相談から、最近のグループメンバーの研究紹介などが話し合われ2時間半、価値ある議論、決定があったのだろうか。
 たぶん、私は出なくても良いのだろうが、こんな人間がグループ内にまだ居るということを示す意味で同席した。会議は当然のようにフィンランド語である。さっぱり分からないので、この時間はメモ用紙を持ち込んで、自分の考えていることをまとめる時間に使わせてもらった。来週、エストニア出張を控えて超多忙のマラさんは、当然のように欠席。内容は別にして(なにしろ、内容は全く分からないのだから)、多人数の会議にしては、議論もまともに行われていたようなので、(公共部門の)日本よりはマシかもしれないが、効率の良い会議とは言えない。金曜日の午後だし、会議後には皆居なくなったので、数ヵ月に一度、職場の親睦を図るための行事(の前座)だったのだろうか。

 感じの良くない文章で終わってしまったので、紅葉も終わりに近づいた、晩秋のフィンランドの景色を載せます。今朝(月曜日)の天気予報によると、いよいよ明日はフィンランド全土で最低気温が零下になる模様、私には真冬に思えますが、まだまだ序の口。

  
(晩秋のフィンランド)


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