この文章は、医者でも看護士でもない、ましてや熱帯医学の専門知識など全くない、ただタンザニアに住んでいるという一日本人としての森熊の個人的見解を書いたものですので、その点を考慮の上、お読み下さい。
アフリカを旅したい、アフリカへの出張・赴任が決まったという人は、マラリアを始めとする病気が心配なのではないでしょうか。今や日本ではマラリアはほぼ絶滅したとはいうものの、昔は沖縄や九州・四国南部などにはマラリアはあったのです。第二次世界大戦後に、マラリアにかかった邦人が海外から帰国したため一時的にマラリアが流行したこともありますし、それ以前にもマラリアはありました。あの坂本龍馬もマラリアを持病として持っていたという説もあります。
そして、ここタンザニアでは、マラリアは死亡原因のトップであり、人口約3千万人のうち、毎年数万人がマラリアで死亡すると言われています。
森熊の知り合いの日本人の中にも、マラリアで死にかけた人が何人もいます。日本に帰ってから発病した人や後遺症が残った人もいます。そして、亡くなった人も‥。
マラリアは死ぬ病気です。死にたくないのなら必ずマラリア対策を行うべきです。
マラリアはマラリア原虫を媒介するハマダラ蚊によって伝染します。ハマダラ蚊がマラリア感染者(タンザニア人の半数以上は感染者と思われます)の血を吸うことによって、マラリア原虫を運び、他の人を刺すことによって新しい感染者を作っていきます。
マラリア原虫が人の血液中に入ると、増殖を始めます。日本人の場合、マラリアに対する免疫がない人がほとんどなので、マラリア原虫が体内に入ると、ほとんどの場合、発病してしまいます。マラリア原虫が血液中で増殖し、赤血球を壊し、体内を巡るようになると、肝臓などの内臓の機能を低下させたり、脳内の毛細血管を詰まらせて、死にいたらしめるわけです。
マラリアにならないようにするには、とにかく蚊に刺されないようにすることが最も大切です。また、マラリア予防薬を飲んでいれば、たとえ刺されても、ある程度は発病を防ぐことができます。
もちろん、蚊に刺されたからといって必ずマラリアになるわけではありません。
とにかく蚊に刺されさえしなければ、マラリアに発病することはないのですから、蚊に刺されないような予防策を取れば、かなりの確立でマラリアを防ぐことができるのです。
ここまで読めば、マラリアになる確立はそう高くないので、予防薬を飲まなくとも大丈夫と思うかもしれません。しかし‥
「命をかけたバクチ」をする気がないのであれば、マラリア予防薬は飲むべきだと思います。
実際にアフリカにいれば、マラリアに罹る確立は高いのです。
例え、アフリカを旅したことのある知り合いが、「マラリアの薬なんか飲まなくとも大丈夫」と言っても、それはたまたま運が良かっただけであり、自分がマラリアにならない理由にはなりません。
「現地の人にとってはマラリアはカゼのようなもので、簡単に治ってしまう」と言う人もいます。
これは、現地人の場合、マラリアに対して免疫があるので、発病しても重傷になりにくいのです。しかし、免疫のない日本人が発病すると、命取りになる可能性はずっと高いのです。そして、ここタンザニアでは、マラリアは依然として現地人の死亡原因のトップなのです(最近はHIVでの死亡も多くなっていますが)。
「マラリア予防薬は副作用があるから飲まない方がいい」と言う人もいます。
確かに、マラリア予防薬には、副作用がないとは言い切れません。
(例えば、クロロキンという薬は、予防薬としても治療薬としても使えますが、予防用としては毎週1回2錠、治療用としては1日目4錠・2日目4錠・3日目2錠と飲むのが一般的ですが、これを一度に10錠イッキに飲むと妊婦は流産すると言われ、一度に20錠以上飲むと死ぬこともあると言われています。でも、最近はこのクロロキンさえ効かない耐性マラリアが増えています。)
しかし、副作用と死とを引き換えにするのは愚かだと思います。いろいろな種類の予防薬があるのですから、自分の身体(体質)にあったものを選べばいいのです。(でも、友人のなかには、どのマラリア予防薬も合わなかったという人もいます。)
マラリア予防薬として、現在はメフロキンが最も一般的に使われていますし、クロロキンとパルドリンを併用することもあります。その他にもドキシサイクリンなどの予防薬があります。これらの薬はどれも副作用が起きることがあることが報告されています。しかし、副作用の発生確立は数パーセント程度以下のようです。
では森熊と家族がマラリア予防薬を常用しているかというと、実は「飲んでいません」。
これは、短期の旅行者と長期滞在者では若干の違いがあるからです。マラリア予防薬は内臓などに影響することがあります。ですから長期間服用し続けるのは副作用が恐いからです(通常は例え2年間飲み続けてもほとんど副作用は出ないと言われているので、まあ、そんなに心配はいらないのでしょうが‥)。それに、森熊の自宅近辺にはハマダラ蚊はいませんし、上記に挙げたような、蚊に刺されないような工夫を日頃からしているからです。
そして長期滞在者の場合、マラリアがどういうものか知っているので、ある程度はマラリアかどうか予測できますし、熱が出たら必ずすぐにマラリアの検査をします。(森熊はアフリカ滞在の合計3年半で4回、マラリアになっています − いづれも軽かったですが)
でも、旅行者は旅行スケジュールもあるし、ただのカゼとか旅の疲れとかと勝手に判断して、マラリア検査をしないことがあるので危険なのです。
ただ、マラリアには潜伏期間があるので、森熊も日本に帰国する前からは予防薬を飲むようにしています。
ところが、マラリア予防薬を飲んでいれば、絶対にマラリアに罹らないかというと、そうではありません。ただ、予防薬を飲んでいれば、例えマラリアになっても症状が軽くすみ、死ぬ危険が少なくなるのです。(治療の必要性はあります)
マラリア汚染地域に行く場合には、1〜2週間前から予防薬を飲むと良いと言われています。でも、日本ではマラリア予防薬を手に入れるのはなかなか困難です。となると、現地に着いて、薬を購入するまでの期間は特に注意が必要です。
また、最近はマラリア予防薬に抵抗性のあるマラリアが増えています。
ですから、予防薬を飲んでいるからと安心せずに、蚊に刺されないようにすることが大切なのです。
もう一度言いますが、
運悪くマラリアに罹ってしまっても、すぐに治療を始めれば、ほとんどの場合、完治します。
ですから、熱が出た場合には必ずマラリア検査を行うようにします。しかし、1度ではマラリア反応が出ないこともあるし、マラリア予防薬を飲んでいる場合はマラリア反応が出にくい場合があるので、「マラリアではない」と診断されても、時間をおいて、もう1度検査をします。マラリアの症状は人によって違いがあるので、他人の症状と見比べて素人判断をしてはいけません(日本人が罹患した場合は、通常は40度前後の高熱が出るのが普通です)。潜伏期間は8〜30日(平均約2週間)であり、すぐに症状は出ないので、マラリア汚染地域から離れたとしても、すぐに安心せず、4週間くらいはマラリア予防薬を飲み続けます。
日本ではマラリアの診断・治療ができる病院は極めて少ないですし、マラリア治療薬を手に入れることも難しいですから、アフリカで刺されて、日本に帰ってから発病したら大変です。
また、治療が終わっても、完全にマラリア原虫が体内からいなくなったとは限らないので、治っても数日後に再度マラリア検査を行うようにします。
具体的なマラリア予防薬、治療薬については、ある程度の知識はありますが、森熊は医療関係者ではないので、ここには書きません(何かあっても責任は取れないので)。しかるべき人に聞くか、以下のリンクをご参照ください。個人的にメールをいただければ、アドバイスくらいはいたします。