超合金さん作 TYPERの星


超合金さんの御厚意により、NIFTY-Serve, FHPPC 6番会議室 で、95/02/13〜95/03/06 に 掲載されたTYPERの小説「TYPERの星」を掲載させて頂きました。



〜 「TYPERの星」が出来るまで 〜

軽やかなタイピングのために○馬の指に付けられたTYPER養成ギプス。
しかしこのギプスのせいで、○馬は箸も満足に使うことができず、貧乏な生活の中で唯一楽しい食事もおなか一杯食べることが出来なかった。
堪えかかねた○馬は体に取り付けられたギプスを取り外し、父一○に投げつけた。
「とうちゃん、オ・・レ・・・こんなのするのはいやだ!」
「ばかもの、このギプスをはずしてはならん」
父一○はギプスを拾い、窓をあけた。外には無限の闇と何百万という星が輝 いていたが、その中で輝きが一段と増している星を指さし、
「○馬、あの星がなんの星かわかるか。あの星はTYPERの星といって日 本どころか、世界のLXerがめざしているものなのだ。」
〜 NIFTY-Serve, FHPPC, Mes( 2), #16287 95/02/10 より抜粋 〜


なんていう超合金さんの書き込みから登場した「TYPERの星」。
TYPER の小説はコレが始まりでした。
そして、そこから...、
思わず、相手にLXを投げ当てて怯んだ隙に打ち込む「LX・TYPER一号」。
打ち込む指が見えない「LX・TYPER二号」(これは、最後にLXの首の部分から破滅の音が聞こえるらしい (^^;)。
スローな入力で、かつ目的のキーを避けて横のキーを打ってしまう「LX・TYPER三号」。
と話題はどんどん発展していき、

さらに、さらに...、
始めは草TYPERの助っ人として金を儲けしてて、その後再びTYPERの星を目指して...、なんていう話し。
見え隠れする謎の5傑衆裏を従えて、全国のTYPER道場を裏から支配する総裁...。そしてその影を追って闘う...。秘密兵器はフルキーボードサイズの特注LX。筐体はチタン合金製!、なんていう話し。
時を止めてタイピングする吸血鬼。タイピングロボを操る少年...。
スポ根、ハードボイルド、ギャグ、怪しい格闘物、科学もの、SFアクション...。とたくさんの話しがでました。
「TYPERの星」は、そんな多くの人とのやりとりの中から生まれた小説です (^^)。

TYPERの星 − 序章

TYPERの星 − 誕生編


TYPERの星 − 序章


 みなさん こんにちは。超合金です。

 はじめての創作です。パロディなんですが、2番会議室で冗談でいったら
受けたので調子にのってちょっとだけ作ってみました。読んで見て下さい。
できればみなさんにアイデアを出して頂き、更におもしろくしたいと思いま
す。よろしくお願いします。m(__)m

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  TYPERの星(序章)

 西暦20xx年、人類とコンピュータの歴史は常時携帯パソコンが登場す
るこにより、劇的な変化を遂げたのである。20世紀後半に発売された人類
初の常時携帯パソコンである「HR200LX」は、発売と同時に全世界で
爆発的に普及した。まさに1人1台時代の到来であり、その収益による莫大
な資金力をバックに発売元のHR社は世界の政府を次々と支配していた。
HR社社長は「HR社の人間でなければ人にはあらず」と言える程の権力を
持つようになり、またHR社以外の人間はそれに従わなくてはならなかった。

 HR200LX(以後、LX)は人々の生活を変えていった。何をするに
もLXが必要な社会となり、いかに早く正確にタイプするかが有利に生きて
いくためには絶対不可欠なものとなっていた。更にHR社はHR社に入るた
めの条件にタイプの速度を加え、誰もが早く正確にタイプできるようにと練
習用ソフト「TYPER」を開発し、人々に無料配布した。

 「TYPER」に人々は熱狂した。「TYPER」はもともとタイプの練
習用ソフトであったがゲームソフトとしての1面を持っていたため、人々は
趣味と実益を兼ねそろえたソフトに猿状態となっていた。HR社はその風潮
に油を注ぐかのようにTYPERの得点を競い争う「TYPERリーグ」を
設立し、優勝者に絶大なる権力と莫大な賞金を与えた。更に試合の模様を全
世界に放映し人々の感心を「TYPERリーグ」に釘付けにしていた。

 この物語は「TYPERリーグ」に長きに渡りトップの座に君臨した男の
物語である。人々は彼のことを「TYPERの星」と呼んでいた。

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(つづく・・・・???)

1M友の会 超合金 (VYC01146)

       〜 NIFTY-Serve, FHPPC, Mes( 6), #07536   95/02/13 掲載 〜

TYPERの星 − 誕生編


みなさん こんにちは。

「TYPERの星」の第2弾です。どうぞ、よろしくお願いします。m(__)m

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 HR社は人々の政治への関心をそらす為にTYPERソフトのスポーツ性
を強調し、TYPERリーグを設立した。

 本来はタイピングの1人練習用ソフトであるTYPERソフトだが、1対
1、1対複数、複数対複数での対戦を行うことにより競技スポーツとしての
地位を築きあげた。
TYPERリーグは個人戦である「鉄人バトルリーグ戦」と団体戦である「
八犬伝バトルリーグ戦」から構成されており、ほとんどの選手が両方のリー
グに登録されている。

 「鉄人バトルリーグ戦」とは1対1の対戦からなる勝ちぬき戦であり、個
人のTYPERとしての技量によってのみ勝負に勝つことができる。
そしてこの「鉄人バトルリーグ」で最後まで勝ち残った者だけがすべてのT
YPERの頂点に立つ「鉄人」の称号が与えられ、巨額の富、権力を欲しい
ままとした。

 「八犬伝バトルリーグ戦」とは複数対複数の対戦からなる総当り戦であり、
個人のTYPERとしての技量とチームでの連係プレイが勝利への重要な鍵
となる。
「八犬伝」と名が示す通り八犬士の役割である8人の男性TYPERとお姫
様の役割である1人の女性TYPERの合計9人が1チームとなった人間軍
人将棋である。
ルールは軍人将棋と同じ様に闘技盤上で戦いが行われた。
闘技盤はそれぞれの陣地と相手陣地への通り道が2つ用意されており、交互
にTYPERを移動させ相手TYPERと隣同士になったときに戦闘が始ま
る。
戦闘は「鉄人バトルリーグ」の戦闘とは異なり、ヒットポイント制(それぞ
れのキャラクターの生命ポイントを決めておき、その生命ポイントがゼロに
なった時、闘技盤場から退場する。なお、生命力の回復は薬草、回復魔法の
利用のみ可能)を導入し独自のバーチャルワールドを造りだしていた。
このバーチャルワールド内の戦闘は全世界に放映され、人々は映像に釘付け
となり熱狂した。
そしてその熱狂により人々は内に秘めた残虐性を暴露し、さらに強い刺激を
追い求め体制への不満のはけ口としたため、熱狂のピークをお姫様役である
女性TYPERが倒れる時になるように操作され、ショー的な要素をふんだ
んに取り込んでいったのである。
このような対戦を1年間に渡り行い、勝敗の数により優勝チームが決定され
HR社から莫大な賞金が支給された。


 星 太歩(ほし たいぷ)は試合の前の緊張感を楽しんでいた。
幾度なく経験した感覚。
意識が針の先のように砥ぎすまされていく。
体が熱くなり、堪えきれずに魂がうめきをもらす。
筋肉の躍動を精神力で押さえ込み、精神の高揚をウォーミングアップで抑止
していた。

「この一瞬のために」

目を閉じると遥かな想いがよみがえる。
すべてはあの日から始まった。
あの日の想いが・・・・・・・・・・。


 10年前、東京、秋葉原、若竹店内

  太歩のLXは旧式であった。
 新型LXは機能が大幅にアップされ、さらに今までのより頑丈な作りをし
  ておりキータッチもすばらしかった。
 しかしとても買える金額ではない。
 (こんないいキータッチは久しぶりだ。)
 太歩は自分のものにならないと解ると、無性に新型LXが愛しく思いひた
 すらタイピングという会話をLXとしていたのである。

  すると店員が声をかけてきた。

 「いいタイピングだね。こんなタイピングをすればLXも喜ぶだろ。
  どうだい、新型LXを欲しいと思わないかい。」

 店員の質問に太歩はうさん臭そうな表情をした。
 (魔法のカードを持ってこなくて良かった。)

 「お客さんの腕前ならそんなのはすぐ買えるようになるよ。
  もし、やる気があるならここに行ってごらん。」

 店員は名刺サイズの大きさの地図を置いたとたん奥に引っ込んでしまった
 のである。

  太歩はしばらくLXと会話を続けていたが、LXの反応が今一歩よくな
 いのだ。
 店員が置いていった地図をLXも気にしているのだ。
 地図を覗いてみるとどうも近くらしい。
 (ちょっと覗いてみるか・・・・)
 店を出て、地図通りに歩いてみるとその場所は確かに存在していた。
 「龍の穴」
 店名を確認し、ドアを開けて中に入る。

  そこは外の空気とは違っていた。
 外から想像していた広さではとても入りきれない男達がいた。
 男達は興奮した目である一点をみている。
 そこには2人の男がいた。
 1人は背が高く、ヒョロヒョロとした感じの痩せ男。
 もう1人は背はそれほど高くないがスポーツマンタイプ大柄の男だった。

 「1ラウンド無制限1本勝負」

 場内にアナウンスが響くと男達は声を張り上げる。
 その声に反応するように1人の男が動いた。

  2人の男はTYPERの対戦を行っているのだ。
 TYPERリーグはあくまでHR社公認の正式リーグである。
 しかし、正式リーグだけでは人々を熱狂させるには不十分である事を知っ
 ていたHR社は、もっと身近で気軽に参加できる草TYPERの存在を容
 認していた。
 草TYPERは誰でも参加できることから賭けの対象として、人々に急速
 に広回った。
 さらにHR社は草TYPERの中でTYPERとしての素質を持った者へ
 のTYPERリーグへの昇格を認めていた。

  大柄の男の連続攻撃が始まった。
 体から受ける印象からは想像できないほどの軽やかなタイピングをしてい
 る。
 そのタイピングに反応するようにLXからは黄色の光が発射される。
 しかし痩せ男は動かなかった。
 黄色の光は痩せ男の目前までいくと急に角度を変えるのだ。
 まるで痩せ男の体に何かの磁場があるかのように黄色の光が弾けていく。
 大柄の男はさらにタイピングの速度を速めると、今度はLXが赤い光を発
 射した。
 赤い光が痩せ男に襲いかかろうとした時、痩せ男が初めて動いた。
 痩せ男はLXに向かい猛烈な勢いでタイピングを始めると同時に低い声を
 発した。

 「あ〜〜」

 赤い光は声が発せられると同時に闇の中に消滅した。
 痩せ男は声をさらに高める。

 「い〜〜」

 その声に反応するかのように、大柄の男のLXが青く光だしたのだ。

 「や、やめてくれ・・・・・・、俺のLXを壊さないでくれ」

 大柄の男は急に戦意をなくしていた。
 力の差は誰からみても明らかだった。

 (これが噂に聞いていたボイス攻撃なのか。)
  太歩は初めて見たボイス流派の攻撃に感嘆した。
 TYPERは己の能力を増幅させるためにLXを改造するのが普通である。
 そしてTYPERソフトを使うことにより内に秘めた能力を引き出し、L
 Xで増幅させる。
 しかしボイス流派は違うのだ。
 LXが全てであり,TYPERソフトはあくまでLXのターボ機能なのだ。
 あのLXさえあれば誰でもそこそこの強さになるだろう。

 「やっぱり来たな」

  不意に声をかけられたので,太歩はびっくりした。
 さっき若竹でこの場所の地図をくれた店員がそこにいた。

 「あんたも参加するかい。
  今,勝った男ボイスマンはここのところ負け知らずだ。
  あいつに勝てばそれなりの金になるぜ。
  あんたもTYPERだろ、指でわかるよ」

 太歩は何も言わず、胸のポケットにあるLXを取り出した。
 太歩のLXはかなり旧式のLXだった。
 だが旧式にも係わらずきれいな外見をしており、流れ星のシールが貼って
 ある。

 「この外見は・・・、まさか・・・・・」

 驚いた店員に向かって太歩はニコリと微笑んだ。

  店内は大騒ぎになっていた。
 連勝街道を走っているボイス流派ボイスマンに誰もみたことのない少年が
 挑戦する話題で盛りあがっているのだ。

 「草TYPERでもみたこともない顔だぜ」
 「どうせボイスマンが勝つだろう」
 「あんなのでは勝負にならない」
 「ガキに賭ける奴はいないのか、ちぇ、賭けが成立しないぜ」

 誰もがボイスマンの勝利を疑わなかった。

  太歩は「気」を貯えていた。
 自分の「気」、この店内の「気」、男達の「気」、ボイスマンの「気」か
 ら少しづつ「気」を頂戴していた。
 「気」はどこにでも存在するのだが、生命力が強いものほど「気」がたく
 さんあるのだ。
 そのために「気」とは「生命力」と考えられていた時期があったが、今で
 は「影響力」と位置付けられている。
 周囲に与える「影響力」が強いがために、「生命力」が高められるという
 学説が現在の常識になっている。
 しかしそんなことは太歩には関係ないことである。
 太歩は生まれながら「気」を感じ取ることができ、訓練によって「気」を
 集めることもできるようになっていた。
 「気」は髪の毛から集められ、指先に少しづつ貯えていく。

 「準備はいいな。勝負は1ラウンド無制限1本勝負だ」

  レフリーが勝負の始まりの宣言をする。
 男達の歓声が起こる。
 全てがボイスマンに向けられた歓声である。
 ボイスマンは歓声に答えるかのように手を上げ余裕を見せているが、太歩
 はまだ「気」を集めていた。
 勝負が始まったのに動かない太歩にボイスマンはいらだっていた。
 とうとう我慢ができなくなり、先制攻撃を仕掛けた。

 「あ〜〜」

 ボイス流派の独特な声が店内中に響く。
 声はLXに内臓されたマイクロマイクで拾われ、内部の振音波増幅エンジ
 ンにより強力な振音波に生成・増幅後に、相手のLXに強制的に送り込み
 内部からLXを破壊する。
 これがボイス流派の闘い方で、普通ならば実にあっけなく終わるはずだっ
 た。
 しかし今回は違っていた。
 相手は何もしていないはずだが、ボイス攻撃が効かないのだ。
 声を上げてみる。

 「い〜〜」

 声を上げるという行為は攻撃力を高めていることを意味し、さらにタイピ
 ングの速度を速め、振音波増幅エンジンにターボ効果を効かせより強力な
 振音波を相手のLXに送り込む。
  だが攻撃は太歩にはまったく効いていないようだった。
  ボイスマンはあせり始め、自分の持てる最大限の攻撃力で攻撃した。
  
  「ボイス流派奥義、
   ひらがな五十音、
   あいうえお〜〜、かきくけこ〜〜、・・・」

  「EVA笑王拳」

  太歩は叫び、凄まじい勢いでタイピングを開始した。
  突然LXから閃光が起こり、ボイスマンのLXを突き射した。

  「まみむめも〜〜、
   こ・・・・・これはブッハハハハハハハァ」

 ボイスマンは画面を見て突然笑い出してしまった。
 LXの画面に次々と現れるEVA映像を見て笑っているのだ。
 EVAとはLXの映像再生ソフトであり、この当時全てのLXに標準添付
 されていた。
 EVAソフトが開発されてからLXで手軽に映像を楽しむことが可能とな
 り、教育・文化関係はいうに及ばずアニメ・アダルトまでありとあらゆる
 映像がLXで見られるようになっていた。
 太歩は自分のLXに蓄積されているEVAデータを送信していた。
 そのデータとは発売当時、あまりの過激な内容のため笑死者まで出たとい
 う幻のソフト「吉本ギャグ1000連発」であった。
 「EVA笑王拳」とは、この膨大なデータをTYPERの強制送信モード
 により対戦相手のLXにむりやり送信し、LXを容量オーバーで凍りつか
 せると共に対戦相手も笑い殺すという恐ろしい技であった。

 「ピッシーーーーーーー」

  ボイスマンのLXがとうとうEVAデータのを消化しきれなくなってき
 た。
 (まだ少しかデータを送信していないのにもう凍りつくとは・・・・
  容量が小さすぎる。
  笑い殺すにはまだまだデータを送信しなければならない。
  ちぃ〜、TYPERなら最強のスペックに大容量でなければ・・)

 「か〜ゆ〜〜い〜〜〜の〜〜〜〜、プッ」

 EVAデータを受信しきれずにボイスマンのLXはとうとう凍りついてし
 まい、笑いが足らないボイスマンは正気を取り戻していた。

 「きぃさま〜〜〜、よくも俺さまに恥をかけさせやがって!!!
  お前を禁断の技で始末してやる。」

 凍りついたLXを地面に叩きつけた。

 「いでよ、ゴッドボイス!!!!!」

 叫ぶやいなや、バラバラになったLXから内臓マイクロマイクが人間の大
 きさに巨大化していく。
 ボイスマンが巨大マイクに向かって大声を出すと、先程とは比べものにな
 らないほどの強い振音波が発射された。
  ヒューと太歩の耳のすぐ横を振音波が通り過ぎる。
 耳が痛い。
 とっさに蓄積した「気」を少量放出し、前面に「気」のバリアを張る。
 タイピングの速度を速め、「気」を一気に放出するために神経を集中する。

 「来れ、鬼神よ。我に力を貸給え!!!!」

  太歩のLXに変化が起こった。
  体に蓄積されている「気」のすべてをLXに入魂する。
  LXの内部が息づき、鼓動がドクドクと聞こえてくる。
  その鼓動の音が徐々に大きくなり、LXから「気」が放出され人の形に変
  化していく。
  さらに人の形から鬼の形に変化し、ボイスマンに襲いかかった。
  必死にゴッドボイスで反撃をするが、鬼神は霧のように拡散し振音波を包
  み込み吸収していた。
  振音波を吸収すればするほど鬼神は大きくなり、やがてゴッドボイス
  もろとも吸収してしまった。

 つづく・・・・
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1995年3月6日 1M友の会 超合金 (VYC01146)

       〜 NIFTY-Serve, FHPPC, Mes( 6), #07842   95/03/06 掲載 〜

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