クリープの退職日記
〜私はこ〜やって会社を辞めました(笑)〜




〜第3章 衝撃編(笑)〜

1999年4月末日



もう、7年前位になるが高校の同窓会があった。
マルチ商法かなんかにハマって、散々クラスメートを勧誘した挙句、借金が出来て高飛びした奴や(^^;)、
入社一、二年目ですぐに転職した奴、すぐに結婚した奴などみんな様々な生活を送っていた。

その中で、某家電メーカのソフトウェア部門に就職し東京にいた奴が、俺に名刺を渡してきた。
しかし、その名刺に書かれていた肩書きは、○○ソフトウェアではなく、某自動車メーカのセールスだった。
「あれ?お前は、○○ソフトに就職した筈だろ?」
「ああぁ、入社して2年目に辞めて、こっち(地元)に帰ってきたんだ。今は、その名刺の通り車のセールス
 やってるんだ。でも全然客来ないんだよ。車買わなくても良いから、訪ねて来てくれよ。」
「俺は免許持ってないから、行ってもしょうがないじゃん。」
「いや、それでも良いんだよ。俺を訪ねて来てくれれば、上の連中は客が来たと思うだろ?
 車なんて高い買い物だからそうそう売れないのは、上の連中も分かってる。
 重要なのは、俺に客が来たって事なんだ。」
「ふ〜ん。でもさぁ、何で辞めたの?やっぱソフトの仕事キツかったからか?」
「う〜ん・・・・・・・・・・・・・・・。」
そいつは考え込んだ。
「まぁ、それもあるんだけどね。入社してから毎日毎日遅くまで働いてたんだ。帰るのはいつも夜遅くだった。
 ある日定時に仕事が終わって、帰ろうと思って外に出たんだ。そしたら夕焼けが見えたんだ。
 その時に、フッと思ったんだ。こんな生活してちゃ行けないと。時々は夕焼けが見える時間に帰らなきゃってね。」
「なんだ、そりゃ?」
「その時の夕焼けが、また綺麗でさぁ〜。一週間後には辞表を出したよ。」
7年前は、私は地元でエンジニアとして働いていた。夜遅くなる事もあるが、通常は19時頃に仕事が終わって、
飲みに行ったり、街をブラブラしたり出来た。
そのまま家に帰っても、20時過ぎ位だったし、不満も特に無かった。だから、彼の言葉を笑い飛ばした。
「夕焼けが綺麗だったから」そんな理由で会社を辞めるか?

・・・・・・・・・しかし、今の私はあの時の彼の言葉を笑えない。
多分、彼の気持ちが分かるからだ。



「会社辞めるつもりでいます!」。あの告白から、だらだらと時は流れ、既に4ヶ月が経過していた。


ある日、S係長・主任・U先輩と私の4人は珍しく仕事が早く終わる事が出来たので、
近くの居酒屋に飲みに行く事になった。

仕事の話や、差し障りの無い馬鹿話をしながら小一時間位たった頃、遠くから通勤している主任が
先に帰り、残ったのは、S係長・U先輩と私の3人。

フッと会話が途切れ、気まずい雰因気が流れ始めた・・・・・・・・・あの話題(退職)が出るかな?

S係長 「クリープ、いつ頃辞める気なんだ?」
で、出たか、やっぱりこの話が(-o−;)。
その時、一緒にいたU先輩がビックリした顔をして私を見た。
U先輩 「クリープ、辞めるのか?会社?」
今度は、その言葉を聞いたS係長がビックリして
S係長 「クリープ、お前辞めるって事、Uに話してなかったのか?
      お前とUは一緒の寮だし仲良いから、もう知ってるもんだと思ってた!」
そう言いながらも、「でも、誰にも言わずに黙ってるなんて、お前らしいなぁ」 とS係長は呟いた。



その頃、私は知り合いから、「会社辞めるなら、俺と一緒に(会社)やるか?」と誘われていた。
はっきり言って、会社を辞める事は考えていたが、次の仕事の事は漠然としか考えてなかった。

「お金も無いし、役に立つか判らないけど、それでも良ければ一緒にやりたい。」
そう答えると知り合いは、
「お金が無いのは判った。夏過ぎにそちら(東京)に帰るから、詳しい話はその時にしよう。」
そう約束をした。


S係長 「でもなぁ〜、おまえさんが辞めるとなると痛いよなぁ〜。これが、T(後輩)が辞めるっていう事なら
      引き止めはしないけどな(笑)。」
U先輩 「そうそう。Tなら明日辞めますって言われても、ハイハイって言っちゃうよなぁ(笑)。」
S係長 「Tの代わりはいくらでもいるし、誰でもすぐに代わりになれるんだよ(笑)。
      でも、おまえさんの代わりとなると、難しいんだ。だから、引き止めたいって気持ちはあるけど
      ここで、もし俺が引き止めて、おまえの将来性を潰してしまったとすると勿体無いしな。」

・・・・・・・・・言葉が無かった。

代わりの補充の人間が来ても、あの職場の業務に慣れるのには少し時間がかかるだろう。
それまでの間は、残った人達の仕事の負担が大変になるのは誰にも容易に想像出来る。

時間になったので、店を出てS係長とU先輩と一緒の電車に乗った。

あまりアルコールは強くないが、その日はあまり酔ってはいなかった。
S係長の言葉が強く印象に残った。
「おまえの将来性を潰してしまったとすると勿体無いしな。」

自分はそんなに優秀な人では無い・・・・・・・仕事もごく普通の事をやってるだけだ・・・・そんな考えがグルグルと頭を回った。
夕焼けの代わりに、月が綺麗な夜だった。



続く




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