サンディエゴは、ご存じのとおりカリフォルニア州の最南端にある大きな街で、メキシコと国境を接している。だから、特別な場所に行かなくても、日常の生活の中でだけでも、メキシコ系の人々を見かけるのは日常茶飯事だ。彼等の多く、特に子供や若者は英語とスペイン語の両方を話すことができる(家族とはスペイン語を、学校や職場では英語を話す)が、年配の人々の中にはアメリカに長く住みながらも英語は全く話せない、という人も少なくない。また、この辺りのフリーウェイでよく見かけるのが、「フリーウェイを走って横切る人間に注意!」(国境からの不法入国者が、フリーウェイを走って横切るかもしれないから注意しろ)という道路標識だ。駆け抜ける人間の絵が描かれた標識である。国境を接している街には必ずあるものなのかもしれないが、目にするたび、そういう街に自分が住んでいるんだなと思う。そういえば、以前、2年間オレゴン州に住んでいたときは、自然に恵まれた場所らしく「鹿に注意!」「熊に注意!」という道路標識をよく見かけたっけ...。
さて。ここに引っ越してきて、最初の週末のこと。私達は、ダーリンの両親と一緒にお買い物に出かけた。ドライブもかねて...ということで、行き先はメキシコ国境に近いSan Ysidroにある、大きなアウトレットのショッピングセンター。私達のアパートから、車で30分ほど行ったところだ。そして、大きいというだけあって、値段も他に比べてかなり安いらしいのだ。
フリーウェイを気持ちがいいくらいのスピードでかけぬけて、しばしのドライブ。ちょっと眠くなり始める私...。・・・上り坂のフリーウェイを登りきって、下り坂にさしかかったところで、ダーリンが後ろに座っていた私に言った、『前を見てごらん。』
身を乗り出して前を見ると、メキシコとの国境を挟んで広がる360度(イヤ、180度?)パノラマの景色。景色の真ん中を横に走る白い線が、地平線の彼方へ延びている。あれが国境かぁ〜。手前がアメリカで、向こう側がメキシコ。サンディエゴから国境を越えてメキシコに2度行ったことがあり、たくさんの物売りの子供たちに取り囲まれたり、知らないメキシコ人のおやじに日本語で『マリコさん。マリコさん。』(ちなみに、私はマリコさんではない...)と呼び止められたりした私だが、こうして山の上から国境を眺めるのは初体験。海に囲まれた日本にいては、そう簡単に見ることができるものでもないから、ちょっぴり感激である。『うわぁ、すごいねぇ〜!』と、ため息まじりの私。国境はまるで、むかし世界史の教科書で見た中国の「万里の長城」みたいに見えた...。
もう、この『国境の街』にやってきて1ヵ月半。新しい生活にも少しずつ慣れ始めた今日この頃である。