『一体、なに考えてやってんだぁ!!出直して来いっ〜!』
日曜日の朝である。いつもめったなことでは大声を出したり、興奮することのない(?)うちのダーリンが、すごい剣幕である...。あきれて、冷たい視線を浴びせる私...。...おっと、これ、うちの夫婦喧嘩の1コマではないので、ご安心を。
実はうちのダーリンは、大のアメフト(アメリカンフットボール)ファン。待ちに待ったそのアメフトシーズンが、ついにやってきたのである。アメリカというと、野球とかバスケットボールのイメージが強かったのだが、この「アメフト」こそが、アメリカで最も人気のあるスポーツなのだそうだ。(うちのダーリン談)毎年1月にある、スーパーボール(アメフトのチャンピオンシップゲーム)は最高潮に盛り上がるんだとか...。
ここサンディエゴには、「Chargers(チャージャーズ)」というプロアメフトチームと、「Padres(パードレーズ)」というプロ野球チームがある。そして、当然のことながらスタジアムもある。が、なぜかスタジアムは1つしかなく、プロアメフトチームとプロ野球チームがシェアして使っている。今現在、野球のシーズンもまだ終わっていないから、同じ日にそれぞれの試合が行われると、フィールドの変更や観客席の移動など、スタジアム内は大変なことになるらしい。そして、この街の多くの人が、「Chargers」か「Padres」どちらかのチームのファンで、どちらかのチームのTシャツを持っている。このTシャツを着て、みな試合観戦に出かけるのである。
さて。そういったわけで、うちのダーリンは小さい頃からアメフトや野球を身近に見て育ったが、本人は、野球には見向きもしない。前述のとおり、大のアメフトファンなのだ。地元っ子らしくサンディエゴのプロアメフトチーム、「Chargers」を応援している。「Chargers」は、なかなかよいチームらしい。2年前には非常に好成績をおさめて、スーパーボールにも出場。優勝まではできなかったが、地元は異様に盛り上がった。去年は、スーパーボールまで行けるような好成績は残せなかったが、それでもかなりいい線までいく。今年は、今までチームを引っぱってきたコーチが突然、解雇されたこともあり、ダーリンを含めたファンは心配していたのだが、プリシーズンを見る限りでは結構いい仕上がりになっているようだったので、期待していたところ、シーズンが開幕したとたん見るも無残な試合内容...。日本にいたころから、『アメリカに戻ったら、シーズン中はかかさず「Chargers」の試合は見るから!もし、シーズンチケットが手に入ったら、絶対、観戦に行くしね。』と、どれだけアメフトが好きか聞かされてはいたものの、テレビで試合観戦をするダーリンの姿は、私の想像以上であった。エキサイトしてスゴイ迫力。人さし指を突き立てて、髪の毛を振り乱し、時には立ち上がって、テレビに向かって叫ぶのである。
『そんなへなちょこパス、どこで習ったんだ!!もう、おまえはクビだぁ〜。』
『どこにボール投げてるんだ!いいかげんにしろ〜!こんな調子で、今シーズン行くつもりかぁ!』
『そうそう。それでいいんだよ!よぉ〜し、やればできるじゃないか。』
試合の進行に、まさに一喜一憂。まるで、チームの一員みたいに熱くなる。ま、これがファンというものか。うちのダーリンって、いわゆる典型的なアメリカ人だったのね。そばで見ている私は、ルールもよく把握していない新米者。ラグビーだったら分かるんだけど。だから、私が言えるのは、『ねぇ、ねぇ、落ち着きなよ。そんなに叫んでも、向こうには聞こえないんだからさぁ....。』とか、『まあ、まあ。君はコーチでも何でもないんだし...。』とか、『あのさ、そんなに首振ってると、ムチウチになっちゃうよぉ』ぐらい。そのうち、言うこともなくなって、冷たい視線を浴びせるだけになってくる...。あ〜あ、スタジアムに観戦に行った日には、一体誰が彼をとめるのかしら。こうして、2〜3時間がすぎてゆくのである。
やれやれ、これから一体どうなってゆくのやら。まだまだシーズンは始まったばかり。今シーズン、「Chargers」は、どんな成績をおさめてくれるのか?ダーリンの健康のためにも、ぜひ頑張ってちょうだいね。私もはやく一緒に楽しめるように、ルールやチームについて勉強しなくちゃね。
Chumpkinのアパートは、今後、スーパーボールまで、週末の度にちょっと賑やかになりそうである。