7月も末に近付いたある日、私は通りを挟んだお向いのショッピングセンターの中にある、とあるお店へと足を運んでいた。2〜3日前に、ダーリンのママから、そこのオーナーさんが「Help Wanted」だと言っていたことを聞いていたのだ。
実は、『アメリカに戻ったら、カレッジに入り直して、もう一度勉強しよう!』と考えていた私は、日本にいる時から、書類を整えたり、テストを受け直したりといろいろ準備を進めていた。グリーンカードもあるし、おそらくアメリカ人と同じ安い学費で通えるだろうと思っていたのだ。ところが、問い合わせてみたら、『グリーンカードを手にして1年経過してからでないと、アメリカ人と同じ学費で通うことはできない』とのこと。ガーン...。万が一、そう言われるかも...とは思っていたけれど、やはりショック。もちろん、外国人留学生として、学校に通うことはできるのだが、そうなると学費は何倍も高く払わなくてはならない...。うーん、それは、ちょいとバカらしい。 『よーしっ、せっかく合法的に働けるビザを持ってるんだから、働いてみるかなぁ。働きたくても、働けない人達もいるんだし。それに仕事から学ぶこともたくさんあるさっ。お小遣いも増えるしね。へへへっ!』と思い始めていたことも手伝って、急遽、予定変更!徒歩3分のお向いのショッピングセンターに向かう。そして、ドキドキしながらお店のドアを開けたのだった...。
「MAIL PLUS」。これが私が1日4時間働くお店の名前である。お店のオーナーさんは、ケイティー。アメリカにやってきたばかりの、英語だって100%じゃない私を雇ってくれた。推定年齢、55歳前後。サバサバした性格のドーンと構えたおばちゃんである。そしてもう一人、ケイティーの右腕となってお店の経営を支えているおばちゃんが、シェリー。推定年齢は、同じく55歳くらい。去年、2人目の孫が生まれたシェリーは、私にもおばあちゃんのように優しい。この2人の元気のいいおばちゃんに囲まれて、私は目下「見習い」の身なのである。1つ1つ、新しいことを教わる度にメモを取っていると、なんだか新入社員だったころのことを思い出してしまう..。
さて、で、ここは一体、何を扱っているお店かというと、基本的には切手と封筒、いろんなサイズのボックス、そして小包を扱うお店である。個人用メールボックスも店内にある。アメリカの郵便局は、小さな小包1つ送るにも長〜い行列に並んで何十分も待たなくてはならない。それで、この手の個人店が多くあるそうなのだが、ケイティーのお店では、その他にプレゼントになる手作りのクラフト(これがめちゃくちゃカワイイ!)やグリーティングカードも売ってるし、コピーやファックス、合鍵、レジメの作成サービスもおこなっている。また、署名社会のアメリカらしく「Notary」(署名を必要とする重要書類にサインをするとき、サインの主が間違いなくその本人であることを公的に証明する人のこと。資格をもったその人の目の前で書類にサインをしなければならない。)もやっている。それから、名刺、ゴム印のオーダーなどなど、もう数え上げたらきりがない!くらい、いろいろなサービスがあるのだ。つまりは、お店にやってきて、必要なものを全て整えたら、そのままそれを送ることができるというわけ。送付方法だって、郵便にUPSにFEDEXと3つの中から選べるシステムになっている。まぁ〜、なんて便利なのかしら〜。でも、いろんなことやってる分、仕事も覚えることがたくさんあるのよね〜。とほほ...。ちょっとたいへん...。
こんなお店だから、毎日いろんな人達がやってくる。コピーを取りにきて、そのままそれが何の書類だか、延々説明してゆくオジさま。ファックスを送りたいと書類をもってやってきて、それがこないだ起こした事故の保険の書類だと、ため息まじりに話す赤ちゃん連れの若いママ。英語が話せないため、ジェスチャーで私と会話するメキシコ人のオバちゃん。『先日生まれた初孫に送ってあげるのよ!』と、ベビー服やオモチャがたくさん入った大きな袋をかかえてやってくるおばあちゃん。離婚の書類を手にNotarizeして欲しいとやってくる疲れた様子の奥さん。小包を送りにママと一緒にやってくる5歳の美人双子姉妹。そして、切手1枚買ったくらいでも『サンキューね!』ってウィンクしてくれる、腕から肩にかけてでっかい入れ墨を入れた、一見コワそうなお兄ちゃん....などなど、ホントにいろんな人達との出会いがある、結構楽しい(?)職場なのである。
仕事を始めて1ヵ月半になる。まだまだ一人前に仕事をこなせない私だが、最近ではお客さんとの会話も楽しめるようになってきた。このお店、10月末のハロウィン以降、クリスマスに向けてが一番のカキイレ時らしい。とにかく忙しくなるとのこと。なんでも、家族や親戚に送るクリスマスプレゼントの入った小包を持った人達が、小さな店内を行列をつくって並び、受け取った荷物でカウンター裏は足の踏み場もなくなるんだって。きゃ〜、こんな私で大丈夫かしら...。でも、仕事はさておき、街がきらびやかになるクリスマスシーズンが待ち遠しい気もするのんきな私。サンディエゴでは、ホワイトクリスマスなんて望めそうにないけれど。そう言えば、クリスマスの日にエアコンのスイッチを入れたことがあるって誰か言ってたなぁ。それまで、ケイティー、シェリー、私をみっちり鍛え上げてくださいねっ...。
さっ、来週も仕事がんばるぞ!