計画エリアは現在は都心部の中では相対的に停滞していますが、交通の利便性やオフィス街へ至近な好立地等から、潜在的な開発ポテンシャルは大変高いと思われています。それゆえに、そのポテンシャルの定性・定量的把握を行った上で、そのポテンシャルを環境的、経済的、社会的、政治的にコントロールしながら引き出すための政策立案が主要な検討課題でした。計画地の大きさと検討課題の複雑さを考慮すると、個人レベルで全てを検討することは勿論不可能です。そこで、約20人の学生を幾つかのグループに分けてそれぞれ別個の問題を検討し、並行してグループ間の調整を行うというアプローチをとりながら、クラス全体として全エリアをカバーすることが意図されました。結果的には、このアプローチが多様な学生のバックグラウンドの相乗効果を引き出すことにもつながりました。
一学期を以下の三つのフェーズに分割して検討を進めたため、グループの編成も以下のように各フェーズ毎に見直されました。(太字は自分の所属したグループ)
内容は以下の5つに分けられます。
一学期を通じての研究では、「公共交通システムの地震対策」について、サンフランシスコ・ベイエリアを例にとって検討しました。本研究テーマの発端は、阪神大震災により影響であり、最終的には神戸エリアおよび日本全体への示唆を得ることを目標といたしました。当該エリアでは、ロマ・プリエタ大地震の教訓を生かし、総合的な地震対策が行われています。重点はエンジニアリングよりもソフト面に置かれており、組織編成と責任分担の明確化、緊急対応機関の整備、各交通機関の相互調整などの検討では日本の数段先を行っています。この点は、今後の日本の地域交通および防災計画において大変参考となりました。
そのサービス対象が一般住民全体であることと、システムが巨大で莫大なコストを必要とすることから、一般的にインフラストラクチャーは公共セクターの管轄とされています。それゆえに、その計画にはしばしば経済的視点が欠落しており、結果的にサービス水準が向上せず投資がむだになるという悪循環に陥りがちです。貴重な財源を効率的に使うために、近年では民間セクターへの管轄の移転や官民パートナーシップの導入などを行って経済性と社会性を両立させようという試みが世界中で進められています。日本においてもこの傾向は強まっていくと思われます。
内容は大きく以下の六つに分けられます。
講義と並行して行われた四つのケーススタディは、フィジカルなコンセプト・プランの作成から始まり、市場調査や各財源の比較検討を行い、様々なフィードバックを経て最終的に収支を最適化することが目的とされました。それゆえ、フィジカルなプランニングと収支とがどのように関連し合っているかを理解することが出来ました。
本科目では、膨大な量のデータを各方面から入手する作業と、コンピュータの表計算ソフト(Microsoft Excel)を駆使してモデルを構築する作業に長時間を費やし、モデルおよびケーススタディを通して理論を理解しました。不動産開発はその大部分を経験にもとづくノウハウに頼らざるを得ませんが、その制約の下でも客観的な分析及び計画を最大限追及する米国のアプローチは、大変説得力のあるものでした。
「アーバンデザインはそれ自体明確に定義できるものではなく、都市計画の中でフィジカルな空間に関連している分野を全てまとめてアーバンデザインと考える」というのが本セミナーの出発点です。こうして、言葉の定義に関する不毛な議論は注意深く避けた上で、各回のセミナーはテーマを絞って行われました。主なテーマを以下に列挙します。
一学期を通じての研究では、「都市開発プロジェクトにおけるアーバンデザインの役割」について、サンフランシスコ市都心部に位置するヤーバ・ブエナ・ガーデン再開発を例にとって検討しました。本研究の協同研究者は建築のバックグラウンドを持つ学生であったため、プランニングのバックグランドを持つ自分にとっては、プランナーとデザイナーの視点の違いを理解する良い機会となりました。
米国における都市計画の中では、フィジカルな計画が占める位置は他の計画を圧倒するほど大きなものでは決してありません。特に、政治、経済、社会的な枠組みが重要な初期段階においては、フィジカルな計画はともすれば反開発に回りやすい住民と開発推進派の間を調整する二次的な立場に留まっています。ここで重要な役割を果たすのは、フィジカルな計画に関する能力と政策実行権限を併せ持つ自治体であり、彼等を後方で支援するのがインハウスまたは外部のアーバンデザイナーです。ここで重要なのは、アーバンデザイナーは建築家やランドスケープ・アーキテクトのように直接のデザイン行為を行わない、ということです。また、彼等は法的な規制をかけてデザインをコントロールしたり、個別のデザインをレビューしたりはしても、最終的な意思決定権は持ちません。すなわち、デザイナーと呼ばれてはいても、現実にはデザインへの理解を武器としたコンサルタント的な役割を担っているということです。
日本の都市計画においては、アーバンデザイナーの役割は確立されているとは言えず、直接のデザインを行うデザイナーと住民とが切り離されている状況がしばしば見受けられます。しかし、都市計画において住民参加の傾向が強まり、デザインへの欲求も高まっている状況を鑑みれば、今後、そのニーズは増大していくことと思われます。
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このページは<都市計画作成演習>
サンフランシスコの都心部に位置するバスターミナル周辺エリア(約110ha)の地区計画を作成する演習コースであり、公的な視点からの都市計画(マスタープラン)作成過程の全体像を理解することに重点が置かれています。担当はP.ボッセルマン助教授であり、学外の様々な専門家が講義やジュリーに熱心に参加して下さりました。
このような総合的アプローチは、膨大な量の客観的データとそれに基づく説得力のある計画案が作成できるという長所がある反面、グループ間の調整にかなりの時間を費やさねばならないという問題も抱えています。個人作業が中心の建築デザイン演習とは本質的に異なります。しかし、この複雑な過程こそ米国のプランニングの本質であり、また、米国におけるプランニングの社会的存在意義を肯定していると思われます。
<インフラストラクチャー計画>
インフラストラクチャーのシステム、計画論、財源問題など様々な側面について広範囲に学ぶ科目で、米国以外の諸外国の事例も数多く研究されました。担当のD.ダワル教授はOECD等で活躍している都市経済の実務的専門家であり、本科目の焦点もエンジニアリングよりも計画や政策に置かれました。
<プロジェクト・フィージビリティ分析>
官、民、非営利セクターの協力に焦点を置きつつ、不動産開発プロジェクトの経済的側面を学ぶコースです。担当のJ.ランディス助教授は、社会経済動向の予測及びそれを反映した政策立案の分野で、今後のカリフォルニアの都市地域計画をリードする新進気鋭のプランナーです。彼の専門を反映して、市場分析調査や財政フィージビリティ分析などの理論分野において、特に深く突っ込んだ研究がなされました。
<都市計画の中のアーバンデザイン>
広義の都市計画の中でアーバンデザインがどのような役割を果たすべきかを考えるセミナーです。外部から招かれた担当講師のR.B.アンダーソン氏は、サンタ・ローザ市の都市計画課長を勤められたこともあり、とりわけ歴史的保存に造詣が深い方です。
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