地理情報システム分析の実演および個別対応

河川および氾濫原保全計画への住民参加(3)

住民の最大の関心は、自分の所有地およびコミュニティが本計画によってどういう影響を受けるかということです。そこで、計画全体の解説に続いて、地理情報システムによる所有地単位での詳細な分析を住民一人一人に実演します。住民は必要な情報を正確に知る権利があり、自治体には情報を開示する義務があります。この実演によって「総論賛成各論反対」という事態が生じる可能性もありますが、情報開示の問題は自治の根幹であって何事にも優先されねばなりません。
職員はパソコンをセットアップ

今回は3台のラップトップを持ち込み、地理情報システムを走らせて分析の実演を行ないます(操作に習熟していない職員は前日にトレーニングを受けていました)。なお、技術の紹介ではなく個人対応が目的であったために、日常的に使っているパソコン画面スクリーン投射機は用いませんでした。ディスカッションの最中に、職員はパソコンをセットアップしArcView3というソフトウェアを立ち上げます。


パソコンによる地理情報システム分析の実演

「私の家の周りを見たいわ」「住所を教えてください」「○×通りの○×番地よ」のやりとりの後、該当する所有地を選び画面表示します。「あなたの敷地は計画の適用範囲外ですが、100mほど離れたところに氾濫原がありますね」「そうそう、そこのAさんの家は一昨年の洪水で大変だったのよ。もうああいう被害はごめんだわ」「それが真に計画の目的です」「私のコミュニティも良くなりそうね」 こういう一連の作業を希望者全員にします。メトロのハイテクに驚く住民が多いのですが、それで終わっては困るので、内容に注目してもらうように気をつけて話します。


紙の地図も併用

カラーで大きくプリントアウトした地図も勿論用意されています。一人ずつしか対応できないパソコンでは、大人数をこなしきれないですし、万一停電などでパソコンが使えなくなった時に紙の地図があれば何とか対応できます。また、パソコン画面は目に優しくないので、紙を好む人も(住民や職員を問わず)大勢います。ハイテクとローテクは上手に組み合わせて使わねばなりません。


希望者には地図を無料で配布

パソコンで分析を見た多くの住民は地図を持ち帰りたがります。そこで、メトロは白黒印刷された地図とコピー機を用意し、希望者にはコピーを無料で配布します(希望者にはカラーの大判は後日有料で送付します)。オープンハウスは会場を出たら終わりではなく、その後のフォローも不可欠です。計画への理解を深めてもらうには、地図やパンフレットを自宅で読んでもらうことは大変有効です。なお、ここで言う「理解」とは文字どおりの意味であり、日本のように「理解=賛成」を必ずしも意味していませんので注意が必要です。


メトロ住民参加ワークショップ・キャラバン

後片付けはバンに荷物を詰め込んで完了です。こうしておけば次の会場の設営も簡単です。荷物の中には展示資料に混ざって、住民参加ワークショップの必需品であるコーヒーやジュースのポット、軽食を入れるクーラーボックス、「ようこそ!」と書いた受付の立て看板、文房具セットなどが見えています。メトロは(ある一定人数以上の)要望があれば、その団体へのプレゼンテーションおよびディスカッションを随時行ないます。キャラバンは何時でも何処でも住民のために出かけて行くのです。


今回のオープンハウスは、フレームワークプランを扱った前回のものとはかなり性格が異なりました。主な相違点は以下のとおりです。

住民参加の方法は、計画の内容(必然性、具体性、複雑さ、対象地域など)によって大きく異なってくることは明らかですが、計画作成への住民およびその他団体の参加は、できるだけ早くから継続的に行なうべきであるという点は普遍です。このことは、計画に対する広範囲な支持基盤を生み出して計画前進の原動力となると同時に、多角的な視点を組み合わせて内容を深化させるのにも役立ちます。そして、その前提になるのが徹底した情報開示です。これこそが、メトロのまちづくりの最大のポイントであると私は考えています。

「終」


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