仕事が始まって2週間が経ち、環境にも少しずつ慣れてきた。最初の内はグロッキーで夕食直後にバタンとソファで寝てしまった。やっぱり気が張っているので、本人が思った以上に疲れているみたい。勤務パターンは8〜5時で昼休み1時間が一般的なフレックス制。皆、早く来て早く帰るパターンなので、朝8時に行くと人が多いのにびっくり。でも、6時になるとシーンとしている。デザイン事務所ではいつも遅出遅帰りだったので、職種の違いを実感する。通勤はバスでdoor to doorで20分!座れるし、橋を渡る景色は楽しい。毎朝、バスの中に語学学校と思えるキャピキャピの日本人女性軍団がいるが、違う人種のように思える。
日本人で、研修生扱いのただ働きで、建築士の資格があって、バークレー卒で、というわけで、皆が興味を持っていてくれるのはわかる。チームは20人程のうち男女半々で、黒人1人を除けばすべて白人。私より若いのもインターンを入れて5人ほどはいそう。私が見かけより歳をくっていることはわかってきたみたい。寿司やらサイクリングやらそれなりにお誘いの声もかかりつつある。
自分の作業や提案も、ここまでは結構評価されているようで少し肩の力が抜けたか。今の担当プロジェクトは2つで、1つは「都市圏総合計画への市民団体からの意見に基づく見直し」。ここでは市民参加プロセスの根の深さを感じて、公務員かくあるべし、みたいなやりがいを感じる。こちらが下書きした資料は全て市民へ公開され、それに対する意見がこれまた細かにかつ半ばプロ的に返ってくるので、それを取り入れられる部分は取り入れて計画を修正し、そうでないものは何故そうでないかを丁寧に説明して却下するという作業。理論ばかりでなく、相手の深層心理を考えながらのやりとりはなかなか心地よい緊張感があるし、意外とこういうやりとりは自分に向いているのかも、などと感じる。また、議会にも一般市民が自由に参加でき証言を行えるのも、なかなか面白い。議長はそれに対して、「善処します」みたいな曖昧なことは絶対言わず、発言者に説明をした後、我々スタッフに対して具体的な作業を指示する。こういう政治の仕組が機能しているところもあるんだ、と妙に感動してしまう。特に、お父さんが10歳くらいの娘2人を連れてきていて、その子供達が神妙な感じで会議に見入っている姿は、なかなか微笑ましいものだった。
もう1つのプロジェクトは、「既に開発された都市地域の再開発ポテンシャルの定量的評価」で、こちらはデータとにらめっこしながら、今後どれだけの建物が既存市街地に建てられるかを科学的にはじき出す作業。「非科学的であろうものを科学的に解析する」という全くアメリカ的なやり方は、あてずっぽで行うよりは説得力がある気がするし、市民の予算をまちづくりに投資する行政の義務でもある気がする。こちらの作業は、市民相手の人間臭さに疲れた時に、ほどよい気分転換になっている。もともと理数は嫌いでないし、バークレーで学んだことがかなり直接役だっていると思う。
明日から自転車通勤を始めます。