不調です。雨がちな天気のせいもあるが、仕事にいま一つ乗り切れないのが一番辛い。仕事を始めて3ヵ月、ようやく新しい環境に慣れたと思った頃が一番いけない。留学の時もそうだったし、就職当時もそうだった。今回も無理せずに、自然に不調が通りすぎるのを待つとしよう…現実逃避もまた良し。
そんな時こそ、人から元気をもらうべく、仕事以外は頑張ってみる。まずは、ブラジルで働く親友Yから「今ロスにいるんだけど、明日ポートランドへ日帰りするから空港まで来て!」という連絡が入る。傍若無人ぶりが嬉しく、のこのこ出迎えて街を案内。カッ飛んでいる彼女のバイタリティーは見ていて気持ちが良い。これまでいろいろな街で会ってきたけど、何だか日本以外で会うことの方が自然になってきた。
ポートランドにも日本人はいる。普段は殆ど出会うことはないけれど、11月中旬は連続した出会いがあった。まずは同じアパートに住む英語学校の女性2名との世間話し。2人ともポートランドの居心地の良さと退屈さを同時に感じているようで、妙に共感してしまう。また、スーパーのレジで前後してお話しした女性は、2年間の専門コースに通い始めたばかりで、一生懸命頑張っている様子がひしひしと伝わってきた。2年前の自分の見ているような気持ちになる。こういうささやかな「共感」が不調の心にはジンと来る。
そんなある日、敬愛するボスJが1月で退職することが部内ミーティングで電撃発表されて大ショック!アメリカといえども人との絆は大事にしたい。そもそも私がポートランドに来ることを決意したのは、彼と出会ったためでもある。これは、仕事へ臨む姿勢を再考せねばなるまい。
そんな悶々とした中、メトロを同時に訪問した2組の日本人グループからはいろいろ考えさせられた。一方はロスを拠点に世界中を飛び回って好きな仕事をバリバリこなしているK氏。こういう方は話題も豊富なので、オレゴンで異国文化に飢えていた自分には非常に刺激的。でも、自分も旅行は大好きだけれど、こういうタフな生活は体が受けつけない。どこかに生活の拠点を置きつつ、ゆっくりと世界を回りたい。もう一方は、A県の小さい町からの視察団。町長を始め皆さん自腹を切ってまちづくりを見学に来たと聞きびっくり。上司との打ち合わせでも、連発される質問にまちづくりへの熱意が溢れていた。あまりに感動したため、勢いで仕事を切り上げて食事におつきあい。酒席でのお話しからは、東京では味わえない小さい町ならではの「人間らしさ」を満喫。やっぱり、日本は良い国だなあ。大きくも小さくもないポートランドは、どちらも中途半端という印象か。やっぱり、東京を拠点にしながら、小さい町を含めてあちこちを見て回りたい。
日本W杯出場決定の当日、草サッカーチームのリーグ戦打ち上げパーティーでは、日本人ファミリーに囲まれてのんびり。そこで知り合ったNさんが実はテニス狂だったため、それからしばしばナイターテニスに出かける。めちゃめちゃ上手な日本人にも出会い、さらには勢いでテニスクラブにも入会。これでますますゴルフ開始は遠のいたが、やっぱりテニスは楽しい。スキーにも今年こそは行かねばならない。うーん、体を動かすと気持ちも元気になってくる。
次の土曜日、同僚で国際派のR夫妻のパーティーへ。客層は40代を中心としたオール・アメリカン。この年代の人々の落ち着いた会話は心に優しい。セントルイス、ネブラスカ、オレゴンの田舎町から出てきた人など、ヨーロッパやアジアの話しになると好奇心で目をキラキラ輝かせている。R夫妻のアフリカ生活の話しなど本当に面白い。これだよ、ポートランドに欠けていたのは!
晴れてきた気分を快晴にすべく、Thanksgivingの休日はバークレーへ。アジア人、黒人、白人がぐちゃぐちゃと混ざり合い、外国語や変な発音の英語が飛び交い、毛皮不買運動のデモが繰り広げられるのを見て、まるで第二の故郷に帰ってきたような安心を覚える。以前の家に泊めてもらい、ルームメイト達と七面鳥を平らげ、クラスメート達とカフェで話し込み、馴染みの日本人のおじさん達(失礼)とテニスをする。探していた何かが見つかった気分。
さあ師走。リフレッシュを完了させ、前向きに職場復帰。街にはクリスマス・ツリーもライトアップされ、歩いていてうきうきして来る。「さあ、もう1ヵ月頑張ろう」と思ったところで、上司が「日米まちづくり比較のランチトークをして欲しい」とのこと。同僚の大半にとって日本とは未知の国。普段の雑談から出て来た言葉は、ゲイシャ、金融危機、物価が高い、混んでる電車、サラリーマン、トヨタのカンバン方式、シャル・ウイ・ダンス、茶道、カミカゼ、ハイテク…ああ、バラバラだ〜。しょうがない、第三の故郷ポートランドのために、愛する母国をご紹介しましょうか!