98年1月25日

年の始めはスローペース。旅行帰りには丁度良いリハビリ期間。そして、年末で退職した人々の歓送会の二連発。 一発目は私を草サッカーチームに引きずり込んだSの日本帰国送別会。日本の会社に勤める彼が帰国決定を知ったのは、上司からの辞令ではなく、突然の運送会社からの電話で「帰国の日付は何時ですか?」と尋ねられた時である。上司は運送会社には事前連絡、知らぬは本人ばかりなり。日本企業社会、何とも不条理な世界である。サラリーマンの宿命か?いや、そうあるべきでは無いのだ。 二発目はメトロ局長を退職したS氏の職場歓送ランチ。自分も半分は一緒に移る身分なので、送る側に座ったのは少し居心地が悪かった。プレゼントやカードが送られたりして食事中は終始和やかな雰囲気。しかし、ランチ後に昨日までの茶坊主が掌を返したように陰口を言うのを聞いて悲しくなる。建て前と本音の使い分けではアメリカは日本に決して引けを取らない。いや、もっとエグイかもしれない。

新しい民間事務所での仕事もゆっくりスタート。皆がてきぱきと効率的に動くのが新鮮。やはり民間企業と役所では根本的に世界が違う。「効率vs対応性」とうまい言葉でそれを形容した恩師Jの言葉を思い出す。アメリカまちづくりの旗手、C氏はちょっと恐いくらいカリスマ溢れる人物である。打ち合わせに参加した他社の人々も一目置いているのが明瞭。後光が眩しい。それでも、始めは黙って成り行きを見守っていた私も、やがて耐えられなくなり発言。少人数の打ち合わせの方が、顔が見える分だけ話しを聞いて貰えるので、メトロの巨大な会議よりも意見を述べやすい。今後が楽しみだ。

大雪にマヒする東京のニュースを笑って見ていたら、ポートランドも1/10-11と週末は大雪に見舞われた(人々はストームと呼んでいたが、雪嵐という程の厳しさではなかった)。積雪は都心で約10cmほどで、道路も全て真っ白に。月曜日は路面電車は運休していたので、バスを乗り継いでほぼ定時に出勤。すると、オフィスにほとんど誰もいないではないか!ああ、来なけりゃ良かった… 自家用車しか交通手段を持たない人々は大変だろうけど、バスは結構きちんと動いているのに。 その日、全ての会議はキャンセルされ、出勤した職員はお茶を飲みながら「季節外れの大雪だね〜」などとノンキな世間話しに花を咲かす。結局、オフィスは3時に閉庁。翌日も路面が凍結して危ないという理由で、10時開庁3時閉庁。 結論。やっぱり、こういう日は休むのが正しい! 家族で暖炉を囲んで楽しく過ごすなど、人間らしい暮らしを楽しむべく神様が授けてくれたお休みなのである。でも、せこい奴らは後日になって「あの欠勤は不可抗力だから役所はその分の給料を払え」などと無茶な主張している。働かずに家でゆっくりしたんだから、潔く減給を我慢しなさい!

翌週、お昼の時間に同僚を集めて「東京」を紹介するプレゼンテーションを行なう。ハラキリやカミカゼは知っていても、現代の東京ライフは意外と知られていない。 日本の大雪のニュースをビデオで見せながら、「日本人は定時に出勤するために普段より早く家を出る」と言うと、一同揃って「オー、クレイジー!!」 全く同感。 スライドで満員の通勤電車、高層住宅団地、狭い路地と密集したうさぎ小屋、バブル期の地価のグラフなどを見せると、皆呆れ返ってばかり。メトロが推進している「公共交通」「高密度開発」「住宅価格抑制」などは、日本のそれとは次元が違うことがわかったみたい。まちづくり模範都市ポートランドに住んでいる幸せに皆あらためて感謝しているよう。確かにそう思うのも当然である。 しかし、あの世紀末的に混沌とした生活感の面白さは体験しないと理解しづらいだろう。価値感の違いと言ってしまえばそれまでだが、「混沌=駄目なもの/遅れている」と単純に捉えられると悲しくなってくる。確かに問題は多々あるけど、東京の長所にも気づいて欲しいものだ。まあ、とりあえず私個人に対する理解は少し深まったみたいで嬉しいけれど。

メトロの仕事も今月後半から突然忙しくなってきた。まずは土曜日、住民ワークショップに出かける。2度目になると慣れたもので、ゆとりをもって対応している自分にびっくり。おばあちゃんが目を細めて喜んでくれたりすると、まちづくりをやってて良かったと思う。人々との心の触れあい。 また、主担当としてやっている仕事(実行評価基準の作成)も突然佳境に。今週は久しぶりに一人で残業という事態になってしまった。同僚から「ボスが頼りないから太一が皆をまとめて引っぱるしかないよ、サポートするからさ」と突き上げをくらったので、今後の進め方について企画書をまとめてボスに提出するが、何とも煮え切らない反応にストレス倍増。ああ、中間管理職はいつもこういう苦労をしているんだなあ、などと感じてしまう。まあ、少しずつではあるが良い方向へ進み始めたから良しとせねば。ボスにも同僚にも以前よりは信頼を置かれているようだから、できる範囲で頑張ろう。

しかし、毎日雨ばかり(大雪よりましだが)で辛いものがある。夏が待ち遠しい。


メールはこちらへ

ポートランド後編に戻る

このページは
の提供です。 無料のページがもらえます。