早起きしてフランクフルト空港へ。離陸1時間前に到着し万全のはずが、ものすごい長蛇の列。不測の事態。ワールドカップ、エールフランスのスト、ドイツ超特急の事故などが重なっているのを忘れていた。 職員の手助けで自動チェックインマシンにトライするもうまくいかず、短めのビジネスクラスの列に並ぶ。こういう日に限って職員の要領は悪い。前の数人に頼んで先に手続きさせてもらうも、「もう20分を切ったので、スーツケースはチェックインできません。次の便は12:30ですね。」という結果に。最悪。こんなことならもっと寝ていられたのに。
とりあえずゆっくり朝食。葉書を数枚書き、新聞を読む。それから、帰りに欠航などに出くわしてはたまらないのでエールフランスの帰国便を変更する。カウンターの職員も「仕方が無い」という感じで、ルフトハンザに変更してくれる。国と会社のイメージを悪くした上に、苦情や仕事が増えるばかりで、スト中に働いている真面目な人達は本当に可哀相。自己中心的文化の国では、まじめに働くのが馬鹿馬鹿しくなりそうである。 機内では、地元の少年サッカーチームの団体に囲まれ、うるさくて眠れず。今日はどうも冴えない。
ボローニャ空港で両替。ドイツマルクと米ドルを替えてもらうと、いきなり手数料の二重請求。講議したらすぐ撤回。こういうせこい奴を見ると、イタリアに来た実感が湧く。 バスで鉄道駅へ出る。道路の運転マナーはひどい。ドイツとは雲泥の差である。さすが、自分勝手な国。 モデナへは電車で30分弱。ここからバスに乗るのだが、窓口で教えてもらった番号のバスは目的地に行かない。おいおい、嘘を教えるな。運転手さんの身ぶり手ぶりで、別の番号のバスに乗って、さらに途中で乗り換えることが必要とわかる。言葉が通じないのは厳しい。 サッスオロ駅は典型的なローカル線の終着駅。タクシーはいるが運転手がおらず、きょろきょろしていると、目の前のカフェから「タクシー?」とおっさんが登場。運転している時間より、地元の人達としゃべっている時間の方が遥かに長そうである。
ホテルは何と4星!去年のワークショップとは段違い。部屋でテレビをつけると、すぐにブラジルの先取点が見れてラッキー。 フロントの人が、ワークショップ会場までは歩いて5分と言うので歩き出す。が、一向に見えてこない。排気ガスと南欧の暑さの中、つまらない住宅地を歩くこと30分で、ようやく到着。おいおい、勘弁してくれ。遠いとわかっていたら、歩かなかったぞ。
ワークショップでは懐かしい顔ぶれが一杯。特に、イタリア人とは1年ぶりの再会である。しばらく挨拶&世間話に花を咲かす。でも、教授にはいきなり色塗りを手伝わされた。傍観者のつもりで来たのに… 作業の仕方も、まちの課題も、去年とは随分違いそうで、明日からの観察が楽しみである。 ホテルでの夕食はイタリアの4星にしては落第点。でも、戸外でワインをしこたま飲んでいると、イタリアに来た幸せを感じる。そして、イタリア人と一緒にノルウェーvsモロッコ戦を見て騒ぐのも楽しい。明日は、イタリアの緒戦である。作業どころではなさそうだ。
98年6月11日:街頭テレビ
学生達が作業に忙しいのをしり目に、マイペースで過ごさせてもらう。まずはランドリーに行き、それから街の中心部を歩く。 サッスオロは産業の街。観光客の求める「イタリアらしさ」はあまりない。あまり見るものも無いし、雨もぱらついているので早めに切り上げる。
ランチは近所のバールでサンドイッチ。なんて美味しいのだろう!ドイツの軽食は少し嫌になっていたので、すごく嬉しい。こんな小都市の平凡なバールでも美味しい食事を出すイタリアは偉い。 食べながらイタリア人と雑談。話題は今日のイタリア戦に終始するが、女の子はちょっとあきれ顔。アメリカ人は横の席で作業の進め方を話しており、日本人は作業部屋で軽食をとりつつ作業継続中。こういう忙しい時でも息抜きを取るゆとりが欲しい。
視察のまとめをしているとB教授につかまり、図面描きを手伝うはめに。お邪魔虫なだけに断われず、色鉛筆の人となる。久しぶりの手作業は結構楽しいが、本当は昼寝がしたい。 そうこうしていると5時半。イタリアvsチリのキックオフを過ぎた。大慌てでテレビのあるバールへ向かう途中で、突然あちこちから歓声が上がる。しまった、先取点を見逃した。 バールにはおっさんから子供まで、皆がテレビにかぶりつきである。女性は殆どいない。白熱した好試合だが、それよりも周りの人々を見ている方が面白い。イタリアのチャンスには思わず立ち上がり、監督の選手交代には罵声を浴びせ、ピンチには息を飲む。リアルな臨場感。チリが逆転した時など、しーんとお通夜状態。でも、日本のような「ああ、やっぱり」というため息は出ない。そうしてバッジオがPKを決めて同点とすると、「まあ、こんなもんだ」という安堵の笑顔。一喜一憂するのが人間らしくてよろしい。
夕食では日米伊混成テーブルに入り、ワインでほろ酔い。私は御機嫌だが、学生は食後に作業に戻って行った。どうやら徹夜らしく、ちょっと申し訳ない。 教授達とコーヒーを飲みながらカメルーンvsオーストリアを観戦。戦略が単純で、昼の好試合と比べてつまらない。カメルーンの身体能力にばかり目が行く。日本もアルゼンチン相手で無ければ、このレベルの試合はできるかもしれない。少し楽観的になって来た。ちなみに、私が応援しているのは、日本とオランダ、ユーゴスラビアである。でも、優勝はドイツなような気がするが、まあ1次リーグをじっくり楽しんでから考えよう。
98年6月12日:プレゼンテーション
学生達は最後の踏ん張りで忙しい。手持ち無沙汰の私は、人手が必要なところを回ってお手伝い。でも、あまり役立っていないようなので、イタリア人の講師Fとランチへ(学生はランチは後回しである)。 Fはミラノに会社を起こしたそうで、忙しいけれど自分で全て決められる充実感を満喫中である。羨ましい。夏には渡日するらしので、(私が東京に居れば)再会を約束。
午後は休息。サッカーを観ていたが、眠くてしょうが無いので昼寝。 6時からは市長へのプレゼンテーション。徹夜でボロボロだった学生達も、シャワーを浴び身だしなみを整えて登場。皆の案を見て回るが、昨年と似たような日米伊の差異が見て取れる。面白いが、ややマンネリの感も否めない。そろそろワークショップの見直しが必要か?また、日本の人達と一緒に働くのも面白いかなあ、と改めて思う。 夜は打ち上げ的ディナー。イタリア人の中でも最も陽気な2人がオペラを歌い、やんやの喝采。住所交換、写真撮影と名残りを惜しむ学生達を見て、やっぱりフルに参加した方が充実感は大きいと思う。次回、こういった機会があれば、始めから終わりまで来よう。 皆が疲れているので、夜は意外と早く解散。去年ほどの盛上りはなかった。
98年6月13日:ヨーロッパ最終日
プレゼンテーションも終わり、皆ワークショップ最後の朝を気侭に過ごしている。私は遅く起床後、スタッフと来年の話など楽しみつつゆっくり朝食。ワークショップは毎回イタリアだから、たまにはアメリカや日本でやるのも良さそう。ただし、日本は経済的に苦しいか? 作業をした学校の教室を掃除後、イタリア人達とバールでコーヒー。まったりと時間を過ごすには、イタリアはやはり最高である。
Rの車でモデナ駅まで送ってもらう。人の良い彼女、送迎を大勢に頼まれて、断われずに定員オーバー。憎めない。 駅でお別れした後、一人電車でボローニャへ。ホテルにチェックイン後、テレビでナイジェリア対スペイン戦を満喫。ものすごくレベルが高い。ナイジェリアは4年前と比べてはるかに洗練されている。開幕前の絶不調が嘘のよう。意外と勝ち進みそう。
快晴の空の下、遅いランチを取りにマッジョーレ広場へ。ボローニャは新旧の調和が素晴らしくイタリアでも最も住んでみたい街なのだが、どうも気分が晴れない。去年のワークショップ後、ニコニコと故郷の街を案内してくれたBが、もうこの世にいないと思うと切なすぎる。たった1年の間に、ここは私にとって悲しい街になってしまった。 Bを偲びつつ去年行ったカフェへ。パニーニの美味しさは変わらない。その後に食べたジェラートの味もやはり素晴らしい。でも、悲しい。
ホテルに戻り、韓国対メキシコ戦を見る。つまらない。このレベルの相手に勝てない日本の明日の試合が心配である。 夕食はホテルのお姉さんが推薦してくれたレストランへ。イタリア人しかおらず、味に期待が高まる。案の定、美味しい赤ワイン、みずみずしいサラダ、アルデンテのパスタを満喫。食事が美味しいとはかくも幸せなことか!サッスオロのホテルは4星のくせに食事は全然美味しくなかったから、ようやくイタリアらしさに辿り着いた感じ。明日、食文化の無い国アメリカに帰るのが悲しい。 飲み残したワインをホテルに持ち帰り、オランダ対ベルギーの因縁対決を見る。一日で3試合、満腹である。
明朝ヨーロッパを離れるので、「ヨーロッパ便り」の連載も今日で終わり。この1ヶ月は私にとって格別の期間だったが、ポートランドの現実に戻ると振り返ることもいろいろ出て来るのだろう。今夜は余韻を楽しみ、明日は機内で日本の健闘を祈ろう!
「完」
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