リマ(続き)

高級マンションの並ぶ新市街

リマの旧市街は治安が悪化したため、企業や住宅の多くは新市街に移ってしまいました。現在でも殆どの行政機関は旧市街に残っていますが、経済や生活の中心は完全に新市街に置かれています。近代的マンションやオフィスが林立するミラフローレスは、人々も比較的裕福であり治安もよく、南米経済の歪んだ急成長を実感できます。ばらばらなデザインと密度の高さ、そして施工の粗さが南米的です。


切り土が剥き出しの崖

リマの海岸線には崖を削って造られたバイパス道路が走っています。海側を見ながら走ると気持ち良いのですが、山側を見ると崖が切り取られたまま剥き出しになっているのに驚きます。先進国では、植樹やブロック敷き詰め、またはコンクリート吹き付けなどの崖面保護が行なわれるのが普通ですが、設備投資が限られるリマでは行なわれていません。雨が殆ど降らないので土砂の流出は見かけほど多くはないと思われますが、それでも海風などによる崩壊は少しずつ進んでおり、道路面にはかなりの土砂が堆積している所もありました。安い人件費を利用して、溜まったら取り除く方が効率的なのでしょう。


歴史的建物の保全

旧市街には植民地時代の豪華な建物が数多く見られますが、保存状態は全体的にあまり良くありません。歴史的建物の保存には多くの費用がかかるため、資金の限られている国では手が回りにくいのが厳しい現実です。しかし、リマ旧市街のアルマス広場周辺では、1980年代中頃に政府主導で歴史的建物修復の取り組みがなされ、黄土色の外観や木彫りのバルコニーが美しく復活しました。これによって、市民の旧市街への愛着が強まったのです。なお、写真手前は市役所、奥の建物にはペルー版CIA本部などが入っています。


治安維持のための警察

リマ市内では至る所に警察の姿が見られます。中には観光ポリスという親しみやすい警官もいますが、殆どはピストルや小銃をもった少し恐い人々です。大統領官邸前は特別に警備が厳重なため、写真のように軍警も大勢います。旧市街も含めてリマ市内の治安は、(少なくとも観光地においては)噂ほど悪いとは感じませんでした。ここでは、警察の目が光っていることが安心につながりました。市民の人権を尊重する視点からは多少複雑な気分にさせられましたが、それでも治安の向上に役立っていることは確実です。安全はまちづくりの大前提ですが、アメリカとも異なる犯罪への取り組みを見て、日本のまちの安全に感謝せずにいられません。


郊外のスラム

リマの郊外には、農村部から大量に流入した人々がスラムを形成しています。そこには市や警察の手も届きにくく、貧困と犯罪の巣窟となっています。残念ながら、途上国の多くの都市では、スラムに対する効果的なまちづくりが行なわれていません。調査に入って行くことさえ困難な地区もあります。現代のまちづくりは最低限の経済条件と社会秩序を前提として行なわれていますが、今後これらのスラムの生活環境も改善されていくことを願います。今の私には処方箋を書く力はありません。


付録:オアシス集落

リマからナスカ方面に車で約4時間(飛行機で1時間)、イカ市近郊のラグーナ・デ・ウアカチーナというオアシス集落です。ペルーの海岸部には砂漠地帯が広がっていますが、その中にこの集落がぽっかりと浮かんでいます。建物と木々がオアシスの水を崇めるように囲い、その背後には砂の山がつながっています。ここには観光客は殆どおらず、地元民の憩の場となっているようでした。水は人間の生活に不可欠ですが、水の尊さをこれほど強く感じたのは初めてでした。
「終」


メールはこちらへ

世界まちづくり見聞録に戻る

このページはの提供です。
無料のページがもらえます。