旧支配者


・アイホート「迷路の神」(旧支配者)
 青白いぶよぶよとした楕円形の胴体に、骨張った無数の脚が生えている外見を持つ。
 地下のトンネル網に住んでおり、迷い込んできた犠牲者を追いつめて契約を迫る。
 契約を受け入れると、犠牲者は体内にアイホートの雛を植え付けられる。
 雛を植え付けられた犠牲者は恐ろしい悪夢にさいなまれるようになり、
 最終的には狂気の映像に絶えられなくなって犠牲者の脳は破壊され、
 成長した雛が犠牲者の皮膚を食い破ってどこかに逃げていく。
 結局のところ、アイホートの契約を受け入れようと受け入れまいと、
 犠牲者を待っているのは破滅だけなのである。
 アイホートの雛は小さな蛆虫のようで、簡単に殺すことが出来るが、
 組織的にこれを破壊するような行為を行えば、間違いなくアイホートの怒りを買うことになるだろう。
 雛は犠牲者の腹を食い破った後は、親が来るまで隠れており、
 アイホートと接触すると小型のアイホートに変身して親に仕えるようになる。
 この神が何処から来たのか、どのような目的を持っているのかは定かではない。
(キャンベル「嵐前」)                                                  


・アトラック=ナチャ(旧支配者)
 巨大で恐ろしい黒い毛に覆われた蜘蛛のような姿をした神性。
 人間に似たような頭部を持ち、そこには毛に囲まれた真紅の目がついている。
 リン・カーターによれば、ほぼ人間と同じ大きさであるらしい。
 ツァトゥグァ洞窟の底深くの深淵に、見事な蜘蛛の巣を張り続けているが、その目的は不明である。
 一説には、アトラック=ナチャによって深淵の谷間に橋が架けられた時、世界が終わるとも言われている。
 全ての蜘蛛の支配者とも言われているが、その説は迷信らしい。
 アトラック=ナチャを信仰する教団はないが、旧き呪文による召喚は可能である。
 ただし、アトラック=ナチャは自分の作業を中断することを極端に嫌うため、
 召喚の際にはそれなりのリスクを覚悟する必要がある。
 アトラック=ナチャが何処で生まれたのか、何故深淵に橋を架けようとするのかは定かではない。
(スミス「七つの呪い」)                                                 


・イグ「蛇たちの父」(旧支配者)
 半人半蛇の蛇の神。
 明瞭な描写をされた事はないが、蛇に似た頭、或いは通常の頭を持った、
 鱗のある逞しい男の姿をしていると考えられる。
 かつては古代ムー大陸及び地底王国クン・ヤンで崇拝されていたが、
 現在ではアメリカ中西部の平原でインディアンを中心に崇拝されている。
 イグは常に蛇の一軍を率いており、
 顕現の前兆としてガラガラ蛇やパフアダー、コブラの群れが絨毯のように現れる。
 イグは邪悪な存在ではなく、自分や蛇に対して礼節を忘れぬ者に対しては好意的である。
 しかし、秋には飢えて気が短くなるため、インディアン達は毎年イグの怒りを静める儀式を行っている。
 イグの子供を殺した者には、毒蛇の大群に襲われたり、蛇の姿に変化させられたりするといった、
 恐ろしい呪いがかけられることになる。
 また、イグは人間の女性と交わって、恐ろしい姿の子供をもうける事もある。
 ヴードゥー教の魔術師達によって崇拝されており、ケツァルカトルやククルカンとも関連があると思われる。
 イグの礼拝者達は蛇の毒に対する免疫を持ち、蛇と会話する能力を授かる。
(ラヴクラフト&ビショップ「イグの呪い」)                                        


・イゴーロナク(旧支配者)
 煉瓦の壁の向こう側にある広大な廃虚の地下に住む、邪悪な神。
 頭の無い太った人間のような姿をしている。
 両手に濡れた赤い口が付いており、全身が白熱して光り輝いている。
 悪が行われている時に彼の名が語られると姿を現わすとも言われる。
 地上で活動する際には悪人と精神的に接触し、その肉体に乗り移る。
 乗っ取られた人間はイゴーロナクの化身となり、真の姿と自在に変化できるようになる。
 固定した教団は持っていないが、礼拝されれば威厳を持って応える。
 少しでも邪悪な素質を持つ者がいれば、自分の司祭にするために捕らえて放さなくなる。
 しかし、イゴーロナク自身の悪の概念は、底の浅いものだと言われている。
 イゴーロナクについてはグラーキの黙示録に記されており、それには
 「ぼろをまとった目の無い闇の怪物がイゴーロナクに仕えている」とある。
(キャンベル「冷たき刻印」)                                               


・イタクァ「風に乗りて歩むもの」「ウェンディゴ」(旧支配者)
 主に北極圏で目撃される怪物。
 ウェンディゴとも呼ばれる。
 正体は不明だが、人間の前に現れる時、星空を背景にそそり立つ人形の黒雲のように見え、
 目に相当する部分には二つの星がぎらぎらと輝いている。
 実体はしかし存在するらしく、雪の上に巨大な水掻きのある足跡を残す。
 彼を目撃した者には例外なく死が訪れる。
 彼はゴミを漁り、通り掛かりの人間を捕まえ、
 禁断の土地土地を連れまわり、最後には地上に投げ捨てる。
 連れて行かれた者は失踪後何週間か何ヶ月かしてから発見されるが、
 ものすごい高さから落下したように半分土に埋まった状態で、
 激しい苦痛の表情を浮かべたまま凍り付いて死んでいるという。
 生きていたとしても、イタクァと共にいた間に体が寒さに順応してしまっており、長くは持ちこたえられない。
 イタクァは小型の生き物を、小型のイタクァに変化させる能力を持つという。
 人間がイタクァに変化させられた場合、
 足の形が完全に崩壊して極寒の温度にも平気で耐えられるようになり、
 常に人肉を食べたいという欲望にさいなまれて発狂する事になる。
 ウェンディゴとは、アルゴンキン族インディアンの言葉で、元々イタクァにされた人間を指すものであった。
 小規模な教団によって信仰されているが、極北の地では非常に恐れられている。
 シベリアやアラスカの辺境地方では、ウェンディゴに生け贄を捧げる習慣のある部族もある。
 しかし、組織的な信仰は行われていないようだ。
(ダーレス「風に乗りて歩むもの」)                                            


・ヴォルバドス「燃え上がるもの」(旧支配者)
 源初のムー大陸で最初の人類に崇拝された神々の一柱。
 銀色の靄ごしに浮かぶ、小さな炎がきらめく「貌」として人の目に映る。
 その貌は未知の幾何学によって構成された図形のようで、まったく人間とかけ離れている。
 しかしその黒々とした目は神秘的な知性をたたえており、見る者に安心感を与える。
 「外なる闇」または「灰色の深淵ベル=ヤルナク」と呼ばれる場所にいると言われている。
 かつて地球が異次元からの残虐な生物の侵略を受けた時、最も華々しく戦い、適を撃退したと言う。
 人類に対して友好的な神であり、召喚法さえ知っていれば、助けてもらう事が可能かもしれない。
(カットナー「触手」)                                                  


・大いなるもの(カラカル、ロボン、ナス=ホーサス、タマッシュ、ゾ=カラー)(旧支配者)
 ドリームランドを支配している超自然の生き物。
 人間に限りなく似ており、切れ長の細い目、耳たぶの大きい長い耳、薄い鼻、尖った顎を持つ。
 イースター島の彫像にも似ていると言われる。
 地上を歩くように自由に空中を歩き、別な次元に入っていく事が出来る。
 よく人間の居住区を訪れ、人間と交配する事もある。
 「外なる神々」の賛助を受けているというが、
 どのような契約の下にそのような行為が行われているのかは定かではない。
 大きなパワーを持ってはいるが、ゆるやかなやり方を好む傾向がある。
 代表なものとしては、
 炎に取り囲まれたカラカル、
 肌が黒く、金髪で瞳孔の無い銀色の瞳をしたナス=ホーサス、
 銀色の肌に金色の服をまとった幻影の達人タマッシュ、
 誕生と死を司るゾ=カラー、
 ロボン等が挙げられる。
 しかし、中には狂暴な外見と性格をしたハガーグ=リョニスのような存在もある。
(ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて」)                                         


・ガタノソア(旧支配者)
 ユゴス星の生物が崇拝し、彼らと共に地球に到来した邪神。
 触腕と長い鼻、蛸の目を持ち、胴体は鱗と皺に覆われた無定型である。
 一目ガタノソアの姿を見た者は即座に体が硬直し、生きたままミイラ化する。
 しかし脳は生きたままであり、
 犠牲者は動かない肉体の中で意識を保ったまま永遠に生き続けなければならなくなる。
 この呪いを防ぐことができるのは、シュブ=ニグラスの呪文を書き込んだ神秘的な巻き物だけである。
 かつてこの神はムー大陸のナー王国にあった、ヤディス=ゴーの山頂の砦に住んでいた。
 現在はその砦ごと海中に没しており、そこを出ることができなくなっている。
 ごく希に地殻の隆起によってその住処が地表に現れることもあるが、
 今の所それは一時的なものである。
 ニュージーランドとチリの間に、海図に載っていないような小島を発見したならば、用心が必要である。
 よくロイガーとの関連が取りざたされるが、ロイガー族の主ではないかと考えられている。
 かつてはムー大陸で厭々ながらに崇拝されており、
 その後アトランティス、レンで崇拝され、
 エジプト、カルデア、ペルシア、中国、メキシコ、ペルーにまでその名声は広まった。
 現在では人間による礼拝はなされていないようである。
(ラヴクラフト&ヘーゼル「永劫より」他)                                         


・クァチル・ウタウス「塵の中を歩くもの」(旧支配者)
 子供ぐらいの大きさの、人間型のミイラのような姿をしている。
 体中皺だらけで、1度も呼吸したことが無い中絶胎児のようである。
 手の先には骨のような鉤爪がついており、腕は常に真っ直ぐ前に伸ばされている。
 時間と死と崩壊の神。
 上空からの灰色の光の柱から姿を現わし、触れた相手に老化と死を与える。
 犠牲者の体は最終的には塵の山となってしまい、クァチル・ウタウスはそこに足跡だけを残していく。
 不死を求める者には、その能力を与えると言われているがさだかではない。
 「カルナマゴスの誓約」と呼ばれる極めて珍しい書物にのみ、存在が示唆されている。
(スミス「塵を踏むもの」)                                                


・クトゥグア「生きている炎」(旧支配者)
 巨大な燃える塊のように見え、絶え間なく形を変えている。
 高温のプラズマ生命体と考えられている。
 地球から27光年離れたフォーマルハウト星或いはその地殻に生息しているが、
 地球上に召喚することも可能である。
 「炎の精」に奉仕されているが、人間の教団は存在しない。
 強いテレパシー能力を持っているが、人間には関心が無いらしく、
 彼からコンタクトを取ってくることはまず有り得ない。
 ニャルラトテップと敵対しているらしく、彼の住処であるンガイの森を焼き払ったこともある。
 ただし、クトゥグアを地上に召喚した場合、高熱による無差別な大破壊が付近一帯を襲うことになる。
 クトゥグアの召還は、フォマルハウトが地平線上にあるときに呪文を三度唱えることによって可能である。
(ダーレス「闇に棲むもの」)                                               


・クトゥルフ「ルルイエの主」(旧支配者)
 全体的に類人的な外見をしているが、頭部は蛸または烏賊に似ており、前足と後ろ足には鉤爪があり、
 背中からは細長い翼が生え、全身は鱗に覆われてゴムのようにぶよぶよしている。
 しかし実際はクトゥルフの体は一定ではなく、自由に歪ませたり変えたりすることができる。
 新しい手足を伸ばしたり、古い手足を引っ込めたり、翼を極限までに大きくしたり、胴体を縮めたり、
 手足或いは触手の一本を長く伸ばして、何メートルもの先をまさぐったりすることもできる。
 大体は最初に述べたような姿をしており、どんなに変形しても、クトゥルフのカリカチュアであることは判る。
 クトゥルフとその眷族は遥かな昔に地球に飛来し、「古のもの」と地球の覇権をかけて争った。
 現在の太平洋付近に隆起した大陸にルルイエを初めとする石造都市を建造し、
 ムー大陸などで長い間崇拝されていた。
 やがて星々の位置の変化によってクトゥルフはルルイエの館で死の眠りにつき、
 続いて起こった地殻変動によってルルイエも海底深くに沈んでいった。
 現在では水棲種族である「ディープワン」によって奉仕されており、
 ルルイエの館で夢を見ながら目覚めの時を待っている。
 クトゥルフは強いテレパシー能力を持っており、眠ったままその夢を人間に送り込んでくる。
 その為に狂気に陥る者もあり、地球上で最も知られている「旧支配者」信仰に至った理由にもなっている。
 クトゥルフ信仰は先史時代から無数に存在し、主に海辺に住む生き物に礼拝されている。
 ルルイエは数百年に一度、地殻変動によって一時的に海面に姿を現わすことがあり、この時期、
 クトゥルフの眠りは浅くなり、感受性の強い人間に影響を与えて、世界中で狂気じみた事件を起こさせる。
 いつの日か、星の位置が再びめぐった時、ルルイエは完全に地上に姿を現わし、
 クトゥルフとその眷族は地球を再び支配するという。
 ルルイエが波の上に姿を現わした時、教団の者によってその扉が開けられると、
 クトゥルフは長い眠りから目を覚まし、傍若無人に地上を浮かれ歩くという。
(ラヴクラフト「クトゥルフの呼び声」他)                                         


・グラーキ(旧支配者)
 無数の尖った刺を持つ楕円形の体をしており、
 楕円の尖っていない方の端に、厚い唇のついた丸い口がある。
 口の上から三本の細い茎が伸びており、その先端には黄色い目がついている。
 体の下に白い三角形の物体が沢山ついており、恐らく移動の為に使われる脚のようなものと思われる。
 ニューギニア海岸沖のニューブリテン島にある湖の底に棲んでいる。
 催眠術的な夢を送る「夢引き」によって犠牲者をおびき出し、自らの奴隷に仕立て上げようとしている。
 現在グラーキの力はかなり弱っており、新入者からの力を借りて「夢引き」を行っている。
 「夢引き」によっておびき出された犠牲者は、グラーキの体に生えている刺によって突き刺される。
 刺は抜け落ちて犠牲者の体に入り、毒液を分泌する。
 死に至った犠牲者はグラーキの従者と化してしまう。
 もし死に至らずに毒液だけを受けた場合、
 アンデッドの怪物にはなるが、グラーキの支配からは逃れられる。
 極希なことだが、刺によって死に至らず、毒液も受けなかった場合、
 犠牲者は正常な状態でいることができる。
 通常、グラーキは刺を刺す時に、グラーキの従者によって犠牲者をしっかりと押さえつけておく。
(キャンベル「湖の住人」)                                                


・シアエガ(旧支配者)
 外見は長い触手に取り囲まれた、大きな緑色の一つ目である。
 西ドイツの片田舎にある小さな村の地下に生息している。
 村人は生け贄を捧げることによってシアエガを信仰しているが、
 シアエガは何ら関心を持っておらず、ただ解放の時を待っている。
 一度シアエガが解放されると、彼は付近のものを手当たり次第に触手で探り出し、
 行き当たりばったりに人間を拾い上げると、押しつぶしたり握り潰したりする。
 出自や詳細の判らない存在の一つ。
(バーティン「我が名は暗黒」)                                              


・シュド・メル(旧支配者)
 クトーニアンの中で最も卓越した、巨大な個体。
 最も邪悪な個体でり、クトーニアン達の長であると考えられている。
 アフリカの古代都市ガールン近辺に棲んでいるらしい。
 人間がシュド・メルを信仰していることはまず無いが、過去ドルイド僧が崇拝していたという噂がある。
 ガールンの都市を建設した種族も、シュド・メルを崇拝していたようだ。
 単体でマグニチュード3.5程度の地震を起こすことが可能であり、
 力を合わせることによってより強力な破壊を生じさせることが出来る。
(ラムレイ「地底に棲むもの」)                                              


・ゾス=オムモグ(旧支配者)
 ルルイエの館に棲む邪悪な旧支配者。
 円錐系の体をしており、先端にトカゲのような頭がついている。
 頭からは太い触手が無数に固まって生えており、
 首の付け根からはヒトデの腕のような太い偽足が4本突き出している。
 世界中にある自分の姿を刻んだ像の一つから姿を現すことができ、
 目に入った人間をすべて襲って殺そうとする。
 人間に崇拝されていることはないが、
 ディープワンの中には、この生き物を礼拝しているものがいるかもしれない。
(カーター「ゾス=オムモグ」)                                              


・チャウグナー・フォーン(旧支配者)
 チョー・チョー人の一部族に礼拝されている旧支配者。
 小柄の人間ほどの大きさであり、地球創世と同じくらいの古さを持つ、生きた岩石で構成されている。
 象のような鼻、触手と水掻きのついた大きな耳、水晶のような半透明の牙、人間のような手を持つ。
 かつてはスペインのピレネー山中に彼の分身である兄弟と共に住んでおり、
 ミリ・ニグリーによって仕えられていた。
 しかしローマ人の進出を嫌い、現在ではアジア山脈にある洞窟に鎮座しており、
 昼も夜も亜人間の奴隷に守られている。
 大抵の場合は台座の上に座ったまま動かないが、夜になると手近にいるものをむさぼり喰いはじめる。
 自分の縄張りに入り込んでくる者があれば、昼夜を問わず台座からよろめき出て殺そうとする。
 鼻の先端にディスクのような器官があり、そこから犠牲者の血を吸い出す。
 開いた傷口に当てられると、その傷は絶対に治らなくなる。
 極希に人間を遊び相手にする場合があり、その場合まず彼は犠牲者に催眠術をかける。
 夜になって鼻を犠牲者の上に載せると、犠牲者の鼻と耳が成長して、
 チャウグナー・フォーンのカリカチュアのような姿に変形してしまう。
 そうやって肉体的に結合している状態では、
 チャウグナー・フォーンは犠牲者の意志を自由にコントロールできる。
 時間や次元を超越した存在であり、通常の方法では傷つけることが出来ない。
 チャウグナーの兄弟達は超次元で繋がっており、チャウグナーが破壊されれば彼らも消滅する。
 チャウグナーは破壊されても、いずれ自分の肉体を再構成して復活することが出来る。
 いつかチャウグナーが白人によって外の世界に連れ出されるとき、
 チャウグナーはこの世の全てを食らいつくし、
 世界は唯一の偉大なチャウグナーで満たされると予言されている。
(ロング「夜歩く石像」)                                                 


・ツァール「双子のひわいなるもの」(旧支配者)
 中国のツァン高原の地下にある、死滅した都市アラオザルに棲む2匹の怪物。
 盛り上がった肉塊に、無数の触手が生えており、「ホゥーホゥー」という吼え声を発している。
 ツァールは2つの体を持っているのか、触手で繋がっているのか、定かではない。
 ロイガーという名前が何故ツァールに従うのかは不明だが、
 独立種族の「ロイガー」とは別なものと考えられている。
 ツァン高原に住むチョー・チョー人によって礼拝されている。
(ダーレス「星から来たものの棲み家」)                                          


・ツァトゥグァ「おぞましきもの」(旧支配者)
 地球が誕生したばかりの頃、惑星サイクラノーシュ(土星)から飛来した旧支配者。
 ツァトゥグァの形態は環境によって変化するが、
 地球上では巨大な胴回りに、蝙蝠のような毛と耳を持つ、眠たげな黒い蟇蛙のような姿をしている。
 氷河期以前はハイパーボレアのヴーアミタドレス山の地下に棲んでいた。
 現在ではオクラホマ州の地下にある暗黒世界ンカイに棲んでいる。
 奇怪な形状にもかかわらずそれ程邪悪な存在ではなく、空腹な時以外ならば遭遇しても危険は少ない。
 地球上では「無形の落し子」と呼ばれる無定型の生き物に奉仕されている。
 ほとんどの場合ンカイを動くことはなく、生け贄を受け取ったり召喚に応える時以外は眠って過ごしている。
 ハイパーボレアにはツァトゥグァに捧げられた神殿が無数に存在していた。
(スミス「七つの呪い」他)                                                


・ニョグタ「ありえざるもの」(旧支配者)
 地球の地下に棲んでいるとされるマイナーな旧支配者。
 生きている暗黒を思わせる塊であり、そこから好きなように偽足や触手を伸ばしてくる。
 召喚によって、不浄の洞窟から呼び出すことが可能である。
 「ネクロノミコン」によれば、ニョグタの退去には、
 エジプト十字架、ヴァク=ヴィラ呪文、ティクーンの霊液が必要だという。
(カットナー「セイレムの怪異」)                                             


・ハスター「名状しがたきもの」(旧支配者)
 ヒヤデス星団のセラエノという星に棲む旧支配者。
 アルデバランの近く、「黒きハリ湖」に棲むとも言われる。
 謎めいた部分も多く、姿形については様々な異論がある。
 ハスターに乗り移られた死体は膨らんで鱗に覆われたようになり、
 手足は骨がなくなって流動体のようになったという。
 ハリ湖に巣くう怪物は蛸に似ており、見るに耐えない顔をしているという。
 上記の二つの事例が、ハスターの姿形のヒントになっていると言われている。
 黄色の印、カルコサ、宇宙空間を飛行する能力にも関連して語られる。
 ハスターはビヤーキーや、星間の飛行生物からかいがいしく奉仕されている。
 地球上での信仰はまあまあ一般的であり、チョー・チョー人もハスターを礼拝しているという。
 ハスター教団はおぞましいことで知られており、むしろハスターそのものよりも有名である。
 クトゥルフと敵対しているという説もあるが、定かではない。
(ダーレス「ハスターの帰還」他)                                             


・ボクルグ(旧支配者)
 ドリームランドのイブと姉妹都市ル=イブで異形の種族によって崇拝された青色の水蜥蜴神。
 金属製の鱗と淡黄色に輝く目を持ち、下顎には肉垂のかわりに触角がついている。
 背鰭に沿って針のような刺状の突起があり、脚には水掻きがついていて、尾は平たくなっている。
 旧支配者としては温和な性格であり、ドリームランドの連続体にしか興味を持っていない。
 自分や自分を礼拝する者に危害を加える者には、容赦の無い攻撃を加える。
 かつてドリームランドで一番高い文明の中心であったサルナスを、一晩で破壊してしまったことがある。
 ボクルグの反応は非常に鈍く、爬虫類らしく遅いペースで行動する。
 激しい怒りを、相手がとっくに死んでいるというのに、その子孫に向けてぶつけることもあるという。
(ラヴクラフト「サルナスをみまった災厄」他)                                       


・ラーン=テゴス「無限にして無敵なるもの」(旧支配者)
 人間の倍以上の球状の胴体を持ち、カニの鋏のような6本の曲がりくねった脚を持つ。
 頭部には三角に位置する3個の魚眼と、両生類のようなエラがある。
 全身に黒くて細いヘビのような触手が密生してあり、特に鼻の下に集中している。
 鼻は長さ1フィートにも及び、この器官でエサを捕獲し、全身の触手で獲物の血液を吸収する。
 悲鳴を上げながら走り回る筋肉質の亜人間を食料にしていたという。
 ユゴス星から飛来したと考えられているが、真実は定かでない。
 ヌトカ河上流の石造都市の廃虚の地下3階にある、象牙の玉座に鎮座していた。
 太古の昔に北極圏で「ノフ=ケー」によって信仰されていたが、
 何らかの理由によって氷漬けになり、現代まで眠り続けている。
 この「旧支配者」はアラスカの遺跡で発見された後に、
 ロンドンのロジャーズ博物館に運び込まれ、蝋人形として展示されている。
 伝承ではラーン=テゴスが死ぬようなことがあれば、旧支配者は復活できないとされている。
(ラヴクラフト&ヘーゼル「博物館の恐怖」)