・アザトース「万物の王」「魔王」「沸騰する混沌の核」(異形の神々) |
「外なる神々」の総帥であり、この宇宙が始まったときから存在している。
通常の時空を超越した宇宙の中心部に座し、 単調なフルートの音色に合わせて絶え間なくその不定形の体をくねらせている。 冒涜的な言葉をわめき散らしながら大笑いしているとも言われている。 彼の周囲では「下級の異形の神たち」が、同様にフルートの音色に合わせて精神の無い踊りを続けている。 アザトースは盲目にして白痴の、「モンスター的な混沌の核」として表現されるようだ。 アザトースの意向は、ニャルラトテップによって直ちに満たされることになる。 この宇宙を創造したのはアザトースであるという説があるが、定かではない。 アザトースを信仰する宗教は地球上には存在しない。 この神は信仰に対して見返りを与えるどころか、喜びを示す事も無いからであろう。 何らかの不幸な事故によって呼び出された場合、 召喚者には間違いなく、最上の破壊と恐怖がもたらされるであろう。 よって、彼を信仰するような人間は、犯罪的狂人ぐらいのものである。 アザトースは召喚される事によって人間の前に姿を曝すと、 そういった狂人にしか理解できないような、宇宙に真理に対する特殊な洞察を与えるだろう。 もっとも、その人間は真の狂人と化してしまうだろうが・・・ |
(ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて」) |
・アブホース「不浄の源」「定かならざる宇宙の父にして母なるもの」(異形の神々) |
外宇宙から飛来したと考えられる「異形の神々」。
地底の空洞にわだかまる巨大な灰色の水溜まりのような姿をしている。 その中からは絶え間なく灰色の塊が形成され、それが這いずりながら親から離れていこうとする。 アブホースから延びている無数の触手は、そういった自らの落とし子をつかんで貪り食う。 そういった行為を絶え間なく続けている不愉快な感じの怪物である。 ハイパーボレア時代にはヴーアミタドレス山の地底の最深部に棲んでいた。 現在では北アメリカの地下にあるンカイの一部と化していると言われている。 アブホースは知性を持っており、テレパシーで会話が出来るが、 地上や人間に関しては疎く、興味も持っていないようである。 皮肉っぽい精神の持ち主だと言われるが、 遭遇して無事に戻ったものがほとんどいないために、詳細は不明である。 知られている限り人間の崇拝者はおらず、地下世界の一部の生物が礼拝していると考えられる。 自らの住処から動く事はまったくなく、召喚に応じる事はまず有り得ない。 |
(スミス「七つの呪い」) |
・イブ=スティトゥル「忍耐強きもの」(異形の神々) |
ドロドロにただれた身体を持った黒い巨人。
てらてらと輝く頭部の表面を、二つの目が別々に滑るように動きまわる。 大きなマントをまとっており、その中には無数の夜のゴーントがいる。 夜のゴーント達はイブ=スティトゥルの乳房に吸い付いたり、取り付いたりしている。 この怪物はドリームランドの「クレドの密林」の開けた場所でゆっくりと回転しながら、 すべての空間とすべての時間を見通している。 イブ=スティトゥルの血液は「ザ・ブラック」という名で知られており、召喚が可能である。 召喚されたザ・ブラックは薄っぺらい破片のような姿で現れる。 目標に対して張り付き、たくさんの破片が重なり、目標を窒息させる効果がある。 その後、ザ・ブラックは消えるが、目標の魂はイブ=スティトゥルの元に運ばれる。 |
(ラムレイ「オーク・ディーンの恐怖」) |
・ウボ=サスラ「自存する源」「始源であり終末」(異形の神々) |
冷たくじめじめした洞窟の中に住む「異形の神々」の一柱。
呼ばれたり邪魔されたりしない限り、そこを動くことは無い。 外見は泡立つ不定形の固まりで、何百もの偽足がそこから伸びている。 ウボ=サスラの偽足は絶え間なく形成されては振り回され、 エサに触れるとそれを掴んで自分の中に取り込んでいる。 また、ウボ=サスラからは絶え間なく「落し子」が生産されつづけており、 ウボ=サスラ本体はそれをエサとして再び自分の中に吸収している。 希に親の偽足から逃れたものは、 魂の無い親の気まぐれの代行者となるが、洞窟から出ることはないようだ。 ウボ=サスラに遭遇した場合に最も注意するべき点は、 彼に触れられた部分は完全に死んでしまうという点である。 ウボ=サスラは人類を含めた全ての生命の源と言われているが、 これは「古きものども」の作り出した「ショゴス」が、ウボ=サスラから作られたという事に由来する。 ウボ=サスラの住む洞窟の中には、数枚の石版があり、「旧き解答」と呼ばれている。 そこには「旧き神々」の秘密の知識が刻まれているというが、詳細は不明である。 彼を信仰する人間の教団は存在しないが、「ミ=ゴ」等が崇拝している可能性がある。 彼の住む洞窟の入り口は、南極大陸とドリームランドの「凍れる荒野」に確認されている。 遥かな未来には、全ての生命は再びウボ=サスラに帰するという。 |
(スミス「ウボ=サスラ」) |
・下級の異形の神たち(異形の神々) |
独自の名前を持つアザトースの周囲の神々とは別の、あまり重要でないマイナーな神々の一団。
アザトースのために踊りつづける神や、色々なところで礼拝されている神もいる。 お互いに全くは同じではなく、持っているパワーも違う。 しかし、大抵は主人であるアザトースと同様、精神の無い存在である。 彼らはモンスターめいた幼生を生み出し、その幼生は新たな新しい神となる。 これらの神はほんの小さな教団を持っているに過ぎない。 魔術を使う事は出来ても教える事が出来ないため、崇拝者達が特別な力を持っていると言う事も無いようだ。 |
(ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて」) |
・グルーン(下級の異形の神々) |
10フィート以上の身長をした、裸体のハンサムな男性の姿をした神性。
月桂樹の冠を抱き、海底の光り輝く神殿に棲んでいる。 神殿はかつてアトランティスが存在していたと考えられている、 北緯23.5度、西経33度付近の海底の高原にあると思われるが定かではない。 グルーンに触れられると衣服などを貫通して皮膚が爛れてしまい、 その部分は膿とかさぶたの塊のような状態にになってしまう。 本当の姿は別にあるらしく、巻き髭の垂れ下がったナマコのような姿だという。 「ゾス=オムモグ」を小型にしたような形態の従者を数体従えている。 |
(ラヴクラフト「海底の神殿」) |
・シュブ=ニグラス「千匹の仔を孕みし森の黒山羊」(異形の神々) |
ムー大陸の時代から崇拝されてきた邪悪な豊穣の女神。
姿を目撃された事は少ないが、泡立ち、ただれた巨大な雲状の塊であると言う。 雲の一部は時折融合して、黒い触手や、粘液を滴らせる口とか、黒い蹄の付いた短い足などを形成する。 出現した時に、「黒い仔山羊」を産み放つ事もある。 ヨグ=ソトースの妻と言われている。 次元の歪みを超えて姿を現わす事ができ、どのような防壁も無効化する。 他の外なる神や小型の生き物と接合して、黒い仔山羊以外の仔を生む事もある。 イギリスのゴーツウッドという村では、そういった子供が礼拝されていると言う。 シュブ=ニグラスは広範囲で礼拝されており、グループや教団を形成している。 ドルイド教、及びその他の教団との関係が考えられている。 |
(ラヴクラフト「闇にささやくもの」他) |
・外なる神々の幼生(異形の神々) |
外宇宙全般を漂っていると考えられている、不死身の生き物。
様々な異様な形態を取ることがあり、その種類は無限であると考えられている。 アザトースの周囲の下級の異形の神々から生み出された幼生は、 親から面倒を見てもらうわけではなく、勝手に宇宙の中にさまよい入っていく。 ほとんどの幼生は永久に宇宙空間をさまよっているが、希に変身を繰り返すものが現れる。 彼らは数千年の時をかけて「外なる神」としての強い力を得ると、 今度はアザトースの玉座に向かって永劫の時間のかかる旅を始める。 しかし、大部分の幼生は最初の姿のままであり、「外なる神々」に成長することはない。 |
(ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて」) |
・ダオロス「ヴェールを与えるもの」(異形の神々) |
灰色のいくつもの半球体と輝く金属とが長いプラスチックの棒で連結されたような、奇怪な形状の神。
遠近感の狂った棒の間からは輝く目が覗いている気配がするが、 実際にはただの空間が広がるばかりである。 この神を召喚した場合、注意深く魔術的な障壁に閉じ込めておかない限り、 ダオロスの体は無限に膨張を始める。 ダオロスの膨張に巻き込まれた者は、直ちに遠く悲惨な異次元に送られてしまう。 この神はユゴス星や異世界で礼拝されているが、地球上には教団は存在しない。 人間の目がダオロスの輪郭を辿ろうとしただけで、狂気に陥ってしまうためである。 人間の礼拝者は、したがってダオロスを召喚する場合には暗闇の中で召喚を行う。 ダオロスの司祭は過去と未来を見通す力を得、異次元へと旅する能力も獲得できる。 |
(キャンベル「ヴェールをはぎ取るもの」) |
・トゥールスチャ「緑色の火焔」(異形の神々) |
魔王アザトースの玉座の周囲を踊る、異形の神々の一柱。
燃え上がる緑色の火の玉のような形状をしている。 死と腐敗と衰退を栄養にして生きている。 礼拝している信者は多くないが、特に春分、夏至、秋分、冬至などの重要な星回りの時に、 地下の神殿で礼拝が行われる。 我々の世界に召喚された場合、ガス状の形態で地球の核まで浸透し、 そこから火柱となって地上に噴き出してくる。 |
(ラヴクラフト「祝祭」) |
・ニャルラトテップ「這い寄る混沌」(異形の神々) |
千種類もの異なった姿を持つ、外なる神々のメッセンジャー。
神々の中で本当の個性を持っているのは、彼だけだと言われている。 死や破壊をもたらす事よりも、人々を狂気に陥れることを好む。 ニャルラトテップは神の意志を体現する存在であり、神の意志そのものである。 彼は常に嘲笑っており、自分の主たちですら軽蔑している。 エジプトの魔術の神「トト」、魔女を操る「暗黒の男」などもニャルラトテップの化身であると言われている。 実体の無い存在となって人間に乗り移り、自由に操ることも出来る。 クトゥルフ神話の種族たちは全て彼のことを知っており、畏怖している。 彼は弱小な神々を保護することもあるが、様々なものを取り上げることもある。 外なる神々の礼拝者達に褒美を与えるのも、ニャルラトテップの仕事である。 しかし、大概の場合それは人類に一般的な混乱や恐怖を与えるためである。 ほとんどの外なる神々の礼拝者達は、ニャルラトテップに良く思われたいがために、礼拝を行っている。 ニャルラトテップはいつの日か、人類或いはこの惑星全体を破壊するだろうと予言されている。 |
(ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて」他) |
・ノーデンス「大いなる深淵の大帝」(旧き神々) |
白髪で、灰色の髭を生やした老人の姿をした神。
貝殻の形をした戦車に乗り、イルカやほら貝を吹く人魚を従えている。 夜のゴーントを召喚して使役することも出来る。 ノーデンスは時には人間に対してほとんど友好的である。 旧支配者やニャルラトテップから助けてくれることがある。 地球上に彼を信仰する教団は存在しないようだ。 ノーデンスが援護に現れた場合、もしノーデンス側が不利になると、 彼は気に入った人間一人をつれて撤退を開始する。 そしてどこか行き当たりばったりの場所にその人間を置いてきてしまう。 ある人間は銀河系の果てまで連れて行かれたと言われている。 |
(ラヴクラフト「霧の中の不思議の館」) |
・ハイドラ「一千の顔の月」(異形の神々) |
生物の生首を刈る異次元の存在。
ハイドラという名前はギリシャ神話からとられたものであり、実際には異なる呼称があるとも考えられる。 外見は広大な灰色の粘液の海に、無数の生首が生えている姿として知覚される。 その生首はほとんどが地球外の生命体のものだが、中には人間のものもある。 ハイドラは様々な知的生命体の首を集めて、そこから知識を吸収している。 犠牲者はハイドラによって生首のまま生かされており、激しい苦悶の表情を浮かべている。 ハイドラは自分の力で獲物を探す能力が無く、それは彼の信者達が行っている。 ハイドラの信者は特殊な麻薬の力によって、自らのアストラル体を分離することが出来る。 彼らはハイドラのいる異次元を経由して犠牲者のもとを訪れることによって、ハイドラを誘導する。 ハイドラは信者のアストラルの通過した軌跡を追って触手を伸ばし、犠牲者の首を刈り取るのである。 犠牲者はハイドラによって生かされているため、救出することも不可能ではない。 しかし、肉体の再生のためには、アザトースのいる混沌の中心に赴く必要がある。 |
(カットナー「ハイドラ」) |
・バースト「猫達の女神」(旧き神々) |
古代エジプト時代に崇拝された猫の女神。
その名にちなんだブバスティスという都市で崇拝されていた。 イシスの娘と伝えられ、その外見は猫の頭を持った女の姿であるという。 バーストは「旧き神々」の一員であると考えられ、地球上の猫とドリームランドの猫を支配している。 自ら人類に対してコンタクトを持ち掛けることはないが、猫に対して残酷な事を行えば、 手下を使って報復を行うことが考えられる。 バーストに対する信仰は穏やかなものが多く、家庭と戦いの神として親しまれていた。 しかし、ルードヴィヒ・プリンによると、 一部のバーストの司祭達は残酷な儀式を行うためにエジプトを追放され、イギリスに渡ったという。 彼らは人間と動物の肉を融合する魔術に長けており、 イギリスに移った後も血なまぐさい儀式を続け、無数のキメラを創造したと伝えられている。 |
(ブロック「猫神ブバスティス」) |
・ヒプノス「眠りの大帝」(旧き神々) |
若く引き締まった、ギリシア彫刻のような男性の姿をしており、
ふさふさとした波打つ巻き毛にヒナゲシの冠を載せている。 しかし、真の姿は最悪の悪夢のように歪んで恐ろしいものであるという。 眠りの神であり、現世とドリームランドの間に縛り付けられている。 もし彼のすぐ側を通り過ぎてしまったり、注意を引きつけてしまった場合、 その者はヒプノスによってもっとふさわしい形に変形させられてしまう。 どんな姿に変えられるかはヒプノスにまかされてしまい、 その後は永久的にヒプノスと共にそこに住み続けることになる。 |
(ラヴクラフト「ヒプノス」) |
・ヨグ=ソトース「すべてにしてひとつのもの」「門にして鍵」(異形の神々) |
次元裂け目の間に住む、時間と空間を超越した神。
姿を現わす時には、たくさんの玉虫色の球の集合体の姿をしている。 玉は絶え間なく形を変えたり、お互いに接近したり離れたりを繰り返している。 その大きさはまちまちで、驚くほど巨大になったり、人間と代わらないほどになったりする。 ヨグ=ソトースに触れると、火ぶくれ、組織の乾燥、骨の露出という結果を招く。 ネクロノミコンによれば、「過去・現在・未来はすべてヨグ=ソトースの中で一つである」とある。 ヨグ=ソトースは全ての時間と空間に隣接しており、どの時間、どの次元にも姿を現わすことが出来る。 我々の世界に姿を現わせるのは特定の時期に限られているが、 エサとなる生命体を貪り食うために顕現してくることがある。 また、様々な有機体の女性と交わることによって、多くの奇怪な混血児をもうけている。 妻であるシュブ=ニグラスとの間には、ナグとイェブという双子の子供をもうけているが、詳細は不明である。 ナグはクトゥルフの、イェブはツァトゥグァの先祖であると言われている。 ヨグ=ソトースは特に魔術師たちの神であり、彼らに次元を超える力や異次元を覗ける力を授けたりする。 土星が三分一対座を作る時を待ち、炎の五芒星を描き、第九の詩を三度唱え、 聖十字架頌栄日と万聖節前夜の儀式を繰り返すことによって召還できる。 |
(ラヴクラフト「ダニッチの怪」他) |