奉仕種族


・忌まわしき狩人(上級の奉仕種族)
 体長約12メートル程の、コウモリのような翼を持つ、巨大な黒い蛇か芋虫に似た生き物。
 翼が1枚のものと、2枚のものの2種類が存在する。
 体の形は常に変化してねじれたりくねったりしている。
 彼らは我々の住む次元と隣接した次元との間に存在している。
 素早く動き回り、大きな喉声を発して会話する。
 非常に高い知性を持っており、人間の言葉を話す事も出来るようだ。
 強い光に弱く、太陽光から逃れる習性がある。
 日中ではせいぜい2,3時間しか耐えられない。
 ニャルラトテップによく仕え、猟犬として活躍する事が多い。
 独自に召喚する事も可能だが、彼らは常に血と生命を求めている。
 「幻夢郷カダスを求めて」においては、「狩りをする無定形の妖鬼」としか記されていない。
(ダーレス「暗黒の儀式」)                                                


・カラカルの手下(下級の奉仕種族)
 「大いなるもの」の一員「カラカル」に仕える奉仕種族。
 本体は小さな雲状の物体であり、周囲を赤い閃光が通っている。
 蜘蛛の足状の赤と黒の稲妻を絶えず放出している。
 目に見える感覚器官や頭は存在せず、空中を浮遊して移動する。
 少し触れただけで、稲妻に直撃されたのと同じ程度の電撃を受ける。
 ドリームランドの暗黒の次元に生息しているが、魔術の召喚によって容易に呼び出すことが出来る。
 カラカルの手下のコロニーには、彼らの主のカラカルを礼拝する祭壇が必ず存在する。
(???)                                                        


・クトゥルフの落し子(上級の奉仕種族)
 数千万年前に飛来した大いなる「クトゥルフ」の眷族と考えられる。
 ゼラチンめいた緑色をしており、大きな蛸に似た怪物と、
 ドラゴンのような翼と鉤爪を持った、顔が髭で覆われている太った怪物の2種類がいると言われている。
 平均身長は15〜20メートルだが、体の各部位の大きさを自由に変える事が出来る。
 元々はルルイエに生息していたが、その沈没と共に大部分は封印されている。
 しかし、一部のクトゥルフの落し子は、ディープワンによって、深い海溝の底で養われている。
 水中で自由に活動できるために水棲生物と考えられがちだが、本来陸棲の生物である。
 彼らには活動期と冬眠期があるらしく、現在は冬眠期であるらしい。
 活動期の頃には、地球の派遣をめぐって「古のもの」と激しい抗争を繰り広げた。
 睡眠中には精神的な活動だけが行われ、テレパシーによる命令を出している。
 関連のある生き物として、アルデバランやハリ湖に巣くっている生き物が挙げられる。
(ラヴクラフト「クトゥルフの呼び声」)                                          


・グラーキの従者(下級の奉仕種族)
 「グラーキ」のトゲによって作られたアンデッドモンスター。
 元は人間だったため、従者になって間も無いうちは何とか人間に見えるが、時間が経つと腐敗してくる。
 ほとんどがグラーキの一部となっており、グラーキの記憶の全てを受け継いでいる。
 ギクシャクした動きをしており、グラーキの命令に従って行動するが、ある程度は独自の意志を持つようだ。
 60年以上この半死の状態でいた者は、強い日の光に曝されると、「緑の崩壊」を起こす。
(キャンベル「湖の住人」)                                                


・黒い仔山羊(上級の奉仕種族)
 3〜6メートルの、のたうつ巨大な塊であり、ロープのような黒い触肢で形作られている。
 塊の表面にはシワの寄ったいくつもの大きな口がついており、緑色の涎を垂らしている。
 樹幹のような足には蹄があり、棺桶を開いた時のような臭いを発している。
 黒い仔山羊は「シュブ=ニグラス」の千匹の仔に当たる生き物である。
 シュブ=ニグラスと密接な関係があり、彼女が礼拝されている地域でのみ目撃される。
 母親に代わって生け贄を受け取ったり、礼拝されたり、礼拝者でない者を食ったりしている。
 滅多に人前に姿を現わす事はなく、彼らに遭遇する事は希である。
(ブロック「廃屋で見つかった手記」)                                           


・シャンタク鳥(下級の奉仕種族)
 象よりも大きな体を持ち、馬のような頭部を持ち、
 羽毛ではなく鱗に覆われた体を持つ、コウモリのような生き物。
 洞窟を好み、翼は常に霜や硝石にまみれている。
 不快で胸の悪くなるような生き物として描写される。
 ドリームランドに生息し、「異形の神々」に仕えるものの乗馬や番兵として使われている。
 「夜のゴーント」を極端に恐れており、姿を見ただけで逃げ出す。
 宇宙空間を飛行する事も可能で、乗り手が油断していると「アザトース」の玉座に一直線に運んでしまう。
 インクアノクの宮殿の大円蓋には、
 あらゆるシャンタク鳥の始祖が宿り、好奇心を抱く者に奇怪な夢を送り付ける。
(ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて」)                                         


・シュグラン(下級の奉仕種族)
 像の鼻を持った人間のような姿をした、マレーシア奥地に伝わる異形の怪物。
 皮膚は黒くぬめぬめとしており、背中には小さな翼がついている。
 シュグは「象の鼻」、オランは「人」を意味する。
 長い鼻を犠牲者の口に当て、内臓を吸い出す。
 チョー=チョー人によって飼い慣らされており、暗殺の為に用いられるようだ。
(クライン「角笛をもつ影」)                                               


・ショゴス(下級の奉仕種族)
 「古のもの」によって創造された、黒くネバネバした巨大な多細胞の原形質。
 不定形であり、いかなる器官も自由に作り出すことができる。
 「テケリ・リ」という独特の鳴き声をあげる。
 水陸両棲の、無愛想で不機嫌な召し使い。
 もともと知性は低かったが、次第に主人である「古のもの」を模倣するようになり、反抗して滅ぼした。
 現在では「ディープワン」及びその他の「旧支配者」の奴隷として使われているらしい。
 体の器官を自由に形成できる為、主人の望むかたちで意志の疎通がはかれる。
 南極大陸にある「古のもの」の都市の廃虚には、野性化したショゴスが巣くっている。
 非常にタフであり、寒さや火にも強い為、戦闘的なショゴスと遭遇した場合はかなり危険だと言える。
(ラヴクラフト「狂気の山脈にて」)                                            


・砂に潜むもの(下級の奉仕種族)
 痩せた体に、砂のようにざらざらとした皮膚を持ち、何処となくコアラのような顔をした亜人間。
 アメリカ南西部の砂漠地帯に棲む。
 洞窟の中に住んでいて、夜になると出てくる。
 様々な旧支配者に奉仕しており、奉仕する相手の近くに住んでいることもある。
(ラヴクラフト&ダーレス「破風の窓」他)                                         


・外なる神の従者(上級の奉仕種族)
 不定形で、蟇蛙、蛸や烏賊に似た外見を持つ生き物。
 転がったりズルズル滑ったりして移動する。
 絶え間なく常に外見を変化させている為、正確な描写は困難である。
 「外なる神々」に従う種族であり、普段はアザトースの玉座のある混沌の中心で、
 横笛のような楽器を吹いて、主人たちが踊る為の音楽を演奏している。
 主人が召喚されれば、共に地上に降臨する。
 単独で出現することもあるが、その場合は大体「外なる神々」を信仰する教団の儀式の、
 バックミュージックを奏でる為である。
(ダーレス「暗黒の儀式」他)                                               


・ダゴンとハイドラ(上級の奉仕種族)
 ディープワンがサイズ・年齢の面で大きく成長したもの。
 並外れて大きな体を持ち、下半身は脚が退化して魚のようになっている。
 年齢は何百万歳にもなると考えられている。
 クトゥルフの眷族とは異なり、活動的で自由に動き回ることができるが、目撃されることは少ない。
 深い海中に生息していると思われる。
 古代ペリシテ人には海の神として知られ、近代では「ダゴン秘密教団」に崇拝されている。
 このサイズのディープワンが、ダゴンとハイドラの二匹だけという保証は何処にも無い。
(ラヴクラフト「ダゴン」他)                                               


・チョー=チョー人(下級の奉仕種族)
 マレーシアやビルマの山岳地帯にあるスン高原に棲む少数民族。
 ミリ=ニグリーと人間との混血である。
 外見的に人間に似ているが、サイズがまちまちであり、服装も様々である。
 異様に小さな目がドーム状の無毛の頭部に深く落ち窪んでいる。
 スン高原に棲む者達は古代都市アラオザルを守護しており、そこには「ツァール」が存在している。
 色々な「旧支配者」を崇拝している部族があり、しばしば忌まわしい儀式を行う。
 文明の程度は低く、見かけはおとなしいが、心底から邪悪な種族である。
(ダーレス&スコラー「潜伏するもの」他)                                         


・ディープワン(下級の奉仕種族)
 蛙のような体と魚のような顔を持つ水陸両棲の生き物。
 全身は青みがかった緑色をしており、腹部だけが白っぽい。
 盛り上がった背中には鱗があり、吐き気をもよおすような魚臭い匂いを漂わせる。
 クトゥルフやダゴンに奉仕している。
 陸上ではぴょんぴょん跳ねるようにして歩き、けろけろという声で鳴く。
 しかし、身振りや手振りでコミュニケーションを取ることが多いようだ。
 主な活動拠点はイハ・ン・スレイやルルイエだが、世界各地の海辺で活動している。
 淡水の環境では活動できないようだ。
 時のない深い海の底で生活し、異様で尊大な生命を持ち、信じがたいほど冷酷である。
 人間と交配することが可能であり、混血児は生後まもなくは人間と変わらないが、
 二十歳を過ぎたあたりから魚のような特徴が表れ始め、
 最終的には種族の記憶に目覚めて完全なディープワンへと変貌を遂げてしまう。
 ディープワンには老化というものが無く、事故死か或いは殺されるまで何万年でも生き続ける。
(ラヴクラフト「インスマウスの影」他)                                          


・ネズミ怪物(下級の奉仕種族)
 遠目に見ると普通のネズミのようだが、頭部は邪悪な人間の顔である。
 足先も人間の手のようになっており、非常に強くて鋭い牙を持っている。
 死んだ信者を怪物に変え、死後も仕えさせようとして創造されたものと思われる。
 彼らは不老であり、自然死ということはない。
 現在ではほとんど見かけることはなくなった。
(ラヴクラフト「魔女屋敷で見た夢」)                                           


・ビヤーキー(下級の奉仕種族)
 大きな翼を持つグロテスクな生物。
 「ハスター」に奉仕しており、宇宙空間を高速で飛翔する能力を持つ。
 頭部、胸部、腹部という昆虫のような体をしており、胸部と腹部から二本ずつ脚が生えている。
 腹部は飛行の為の常磁性器官フーンが大部分を占めている。
 うるさい音を立てる活動的な怪物で、どんな時もキーキーと金切り声を上げている。
 獲物に忍び寄る時以外は、大体音を立てているようだ。
 脚はかなりしっかりした作りをしているが、ほとんど歩くということは無く、常時飛行している。
 地球上に拠点を持っていることはなく、空気の無い小惑星や彗星の核に棲んでいる。
 ヒヤデスが地平線上にある時に、魔法のかかった石の笛を吹き、
 「ハスター」に捧げる呪文を唱えることによって召喚できる。
 魔法で従属させることができれば、地球上の何処にでも運ばせることが可能であり、
 宇宙空間を飛行してセラエノに向かわせることもできる。
 ただしその場合、宇宙空間飛行に耐えられるような手段をこうじる必要性がある。
(ラヴクラフト「祝祭」他)                                                


・炎の精(下級の奉仕種族)
 知性を持つプラズマの集合体。
 「クトゥグア」に奉仕しており、恒星フォマルハウトに棲息している。
 一体一体は弱小だが、何千という数で襲来すれば大破壊をもたらす。
 地球に出現するのは召喚された時か、クトゥグアに付き従う時のみである。
(ダーレス「闇に潜むもの」)                                               


・ミリ=ニグリー(下級の奉仕種族)
 浅黒い肌を持つ背の低い人種。
 口がきけず、身振りや手振りで会話をする。
 チャウグナー・フォーンによって、蟇から創られたと伝えられる。
 ローマ時代にピレネー山中に生息していた。
 年に一度、付近の住人をさらってきて、邪悪な生け贄の儀式を行うという。
(ロング「夜歩く石像」)                                                 


・無形の落し子(下級の奉仕種族)
 変幻自在な、ネバネバとした黒い不定形の生き物。
 体の形を即座に色々と変えることができる。
 「ツァトゥグァ」に奉仕しており、ツァトゥグァの寺院や光の無い洞窟の中でよく見かけられる。
 クン・ヤンの更に地下にある暗黒世界ン・カイに棲息するという。
 人間と同じくらいの知性を有しているらしいが、詳細は不明である。
 通常の物理的な方法では、一切傷を負わせることができない。
(ラヴクラフト&ビショップ「俘囚の塚」)                                         


・夜のゴーント(下級の奉仕種族)
 ドリームランドに棲息する怪物で、人間に何処となく似ており、貌がなく、蝙蝠のような翼、
 二本の角、刺のついた長い尾、滑らかな鯨のような皮膚を持つ。
 「ノーデンス」に奉仕しており、集団で活動する。
 声を出す能力は無く、音を立てずに飛ぶことができる。
 夜行性だが、特に光に弱いということはないようだ。
 水を極端に嫌い、極力海の上を飛ばないようにしている。
 知性は低いが、ある種の言語を理解する能力はあるようだ。
 神の領域を荒らす侵入者を捕まえて連れ去り、想像できるうちの最も恐ろしい場所に置き去りにする。
 犠牲者が抵抗をすると、くすぐることによって攻撃を仕掛けてくる。
 相手が手強いと判断した場合には、上空で手を放して地面に叩き付ける。
 「グール」と盟約を結んでおり、グールの用いる合図を知っているならば、
 ゴーントを呼び出して遠くまで運ばさせることが可能である。
(ラヴクラフト「幻夢郷カダスを求めて」)