●テロップ
制 作
ウルトラ大博物館
脚 本
富久清孝 / 岬 浩一
音 楽
KUWA / 麻香紫織
美 術
PON / show / JUN
へどら1978
みなちゃんのダーリン
監 督
あなたの熱き鼓動
●オープニング・タイトル
宇宙空間と体内を思わせる空間を掛けたイメージの背景か
ら無数の光としずく(の様なもの)が手前へものすごい勢い
で飛んでくる・・・
その奥から「ウルトラマン」の輝くロゴが画面中央へ飛び
出す・・・
そのロゴが左上へ凝縮するように移動し、カラーが定着。
そこへ閃光と共に「ジオ」のロゴが現れ、地球が浮かんで
カラーも定着・・・
F.O……
●上空(C.Iで)
大気を切り裂いて飛行しているトーラス。
その直下……
風圧で後方に伸びているワイヤーの先にレグルス改。
●レグルス改・コックピット内
吊っているワイヤーの軋む音が響いている。
トミィが気ぜわしくマシンの調整なんかをしている。
スピーカーからドモンたちの会話が聞こえている。
ドモンの声「(無線音声)虫だ。虫が怪獣に異常成長しや
がる。俺たちの戦ってきたバケモンたちゃあ、ほ
とんどが虫だ」
ルカの声「そこまでは解ってるのね」
ドモンの声「解っちゃいねぇ。事実だというだけで、その
因果関係はつかめてねぇ」
●トーラス・機内
操縦桿を握っているハガネ。
レーダーを監視しているナミ。
ドモンが後部座席で……リクライニングさせてくつろいで
いる。
隣にルカ。その隣にショウ。
ル カ 「ここで教えてもいいけれど、それを調べていた
ナカタとかいう科学者……骨折り損てことになる
わね」
ドモン 「いいじゃねぇか。本当に折れるわけじゃねぇ」
ル カ 「(ドモンを見て思わず失笑)ではまず……知っ
てるかしら?地球の動物は進化論的に、二つの系
統に分けられてるってこと」
ドモン・ナミ・ハガネの三人、一気に「?」な顔に。
ショウ 「先口動物と、後口動物……」
なんじゃそら?という顔のドモン。
顔を見合わせるナミとハガネ。
ル カ 「(ショウに)ご名答。じゃ皆さんにご説明を」
ショウ 「え?あぁ、えっと、卵細胞が、生物として成長
して、消化器官が作られていく時に、先に口が出
来るのが先口動物。最後に口が出来るのが後口動
物。先口動物で最も進化したのが、昆虫をはじめ
とする甲殻類。後口動物の方は確か……ほ乳類?」
ル カ 「よく出来ました。でも不思議だと思わない?一
つの星に二つの生物系統が存在するなんて」
ドモン 「あっちゃいけねぇ事なのか?考えた事もねぇ」
ナ ミ 「(グルッと振り返り)その前に知らなかったじ
ゃないですか」
ドモン 「前見て運転しろ!点数無えんだろぅが」
ナ ミ 「(ぶつぶつ)ここでそれ持ち出すかな(前を見
る)」
ショウ 「もしかして、言いたい事って」
ル カ 「先口動物。つまり昆虫はね、地球の生物じゃな
かったのよ。元は」
●U−SWAT作戦室
各参謀たちのどよめき!
ドモンの声「(スピーカーから)あれか……宇宙から来た
って説か」
ルカの声「(スピーカーから)説じゃないわ。事実よ」
一同、更にどよめく。
●トーラス・機内
ル カ 「あなたたちがキュヴィエと名付けた怪獣ね。あ
れと同じ種族が隕石で地球に運ばれて、環境に適
応して進化したのが今の甲殻類や昆虫よ」
ショウ 「どうして虫が怪獣に……」
ル カ 「キュヴィエは地球上でどうなった?思い出して」
●第26話・回想
ベルンフォア人“ゆな”が手に持った、破れたカプセル。
ゆ な 「キュヴィエを収納していたフィールドだ。奴の
本来の大きさに合わせてある」
巨大怪獣化したキュヴィエをカットイン。
ゆ な 「この星には、生物を巨大化させる原因でもある
のか?」
●トーラス・機内
ショウ 「巨大化した……」
ル カ 「(頷いて)宇宙生物であるキュヴィエは、グラ
リテ波に反応したのよ」
ショウ 「グラリテ波!ゆなとやまも、その言葉を使って
た!」
ル カ 「今朝方見せたでしょ、グラリテ星系」
●回想・宇宙空間
太陽系に迫る暗黒の太陽とグラリテ本星。
ルカの声「グラリテ星系が近付くという事は、当然、あの
暗黒の太陽光線の干渉も受けるわよね。そのグラ
リテ太陽の光にしか含まれない特殊放射線がグラ
リテ波」
●U−SWAT作戦室
固唾を呑んで黙って聴いている参謀たち……
ドモンの声「(無線音声)怪獣の出始めと、グラリテ星人
の出没は、確かほとんど同時期だったな。そう言
うことか!!」
●トーラス・機内
ル カ 「あなたたち地球人は何も感じないでしょうけれ
ど、キュヴィエに限らず、甲殻類の中には、今で
もグラリテ波に反応する遺伝子を忠実に受け継い
でる種類がいるのよ」
ショウ 「グラリテの太陽が近付けば近付くほど、地球の
甲殻類たちは……」
ル カ 「今までは遠かったし、この惑星そのものにもガ
ード機能が充実してたから、そんなに大量発生し
ないで済んでたのよね」
ショウ 「ガード機能?」
●前回の回想
フィルタ値が安定しないで焦るルカが空を見上げる。
何層もの分厚い雲が高速で流れており、切れ切れに空が見
える。
ルカの声「大気圏。空気の層よ。グラリテ波に限らず、宇
宙にはいろんな宇宙線が飛び交ってるわ。この分
厚い空気層によって地上まで届いていないものも
案外多いのよ。でもね、この空気層、昔ほど濃密
でなくなってきてるでしょう。時々隙間が生じる
みたいね。ちょうど、って言うか、運悪くそうい
う場所に元宇宙生物なんかが居合わせたりすると」
突然現れて攻撃を仕掛けてくるメガンティス!!
その飛翔に煽られる二機のジェミニ!!
●トーラス・機内(現在)
ル カ 「おわかり?」
ドモン 「なるほど……でだ。本物のルカはどうした?無
事なんだろうな?」
●U−SWAT作戦室
前に出て心配げにスクリーンを見上げるシオリ……
ルカの声「ここに居るじゃない」
●レグルス改・コックピット
手を止めてモニターを見つめているトミィ……
ドモンの声「俺が聞いてるのはルカの姿をしたお前じゃね
ぇ。ルカの言葉でしゃべる正真正銘のルカだ」
●トーラス・機内
ル カ 「どう言ったらいいかしらね(ショウを見る)」
ショウ 「(ギクッと)ど、どう言ったらって……」
ル カ 「(ため息)嘘はつかないから、言葉のとおり信
じて欲しいんだけど」
ドモン 「内容によるね」
ル カ 「ここにいるのは紛れもなくルカという女性よ。
その子の体を私が借りてるだけ。私がお役御免に
なったら彼女の意識が復帰するわ。別に怪我もさ
せてないし、健康状態も良好よ」
●レグルス改・コックピット
あ〜あ〜あ〜と首を縦に振って納得のトミィ、思わずホッ
と安心顔になって……
トミィ 「(つぶやく)ショウとジオの関係と同じってコ
トネ……オーライオーライ」
●トーラス・機内
妙な沈黙……全員がパネルのスピーカーを睨んでいる。
ナ ミ 「トミィ?(視線はショウへ)今なんて言った?」
トミィの声「What?……(大きく息を呑む音)!!」
ハガネとドモンの視線もショウに……
強張った顔のショウ……
ドモン 「(ショウを見つめながら声はトミィへ)ショウ
とジオが何だって?」
●レグルス改・コックピット
大慌てのトミィ!!
トミィ 「ワタ(誤魔化そうと)ワッタ〜シ、ニッホーン
のコットォバ、よっく」
●トーラス・機内
トミィの声「(無線音声)ワッカリ〜ま(ヘ〜ン)」
ドモン 「(かぶせて)お前、口走ったな、さっき」
●レグルス改・コックピット
トミィ 「(脂汗をしたたらせて)そらー、そらー、そ、
空耳!ソラミミとちゃいまっか〜(泣きそう)」
シオリの声「トミィ?」
ギクッと固まってしまうトミィ。
●U−SWAT作戦室
スクリーンの前でマイクを握っているシオリ。
シオリ 「(今までにないくらい落ち着いていて優しく)
教えて。大事な事だモン。みんながひとつになら
なきゃイケナイ大切な時だモン……」
●トーラス・機内
顔をうつむかせているショウに視線が集中している……
シオリの声「そうでショ、トミィ?……ショウ君、聞いて
いい?そこにいるルカの話と、トミィの言葉がホ
ントだとしてネ……(首を振って)うぅん、そん
な事は私はどーでもイイ!」
えっ?となるドモンたち……
シオリの映っているモニターを見つめるショウ。
シオリの声「大切なのはそんな事じゃない……ショウ君は
ジオと一緒でもずっとずーっとショウ君だったヨ
ネ……だったらルカちゃんも……今は誰かと一緒
でも、ルカちゃんはルカちゃんなんだヨネ?そこ
にいるのが本当のルカちゃんなんだヨネ?ルカち
ゃん、大丈夫なんだヨネ!」
ショウを見つめるドモン……
モニターのシオリを見ているショウ……
●U−SWAT作戦室
真剣にスクリーンを見つめているシオリ。
シオリ 「お願いショウ君……教えて」
スクリーンの向こう……
トーラスのコックピットの奥の方からシオリを見ているシ
ョウの顔が見える。
●トーラス・機内
シオリの声「(スクリーンより)お願い……」
操縦のため(自動操縦だが)正面に向き直るハガネ……
ナミも、気を使ってか、正面の窓外を見る……
ルカを見るドモン……
ショウを見るルカ……
長い沈黙……
スクリーンを見るショウ。その顔に笑みが浮く。
ショウ 「そうだよ……僕と同じ……ルカちゃんは大丈夫」
●U−SWAT作戦室
シオリ笑顔に。眼に涙……
●サブ・タイトル
第41話
立ち上がる地球
●空
上空を飛び交う怪獣たち、ヴェッサンやドフラや……
まるで原始時代の熱帯雨林の空と見まごうような情景。
カメラがパンダウンすると、都会に押し合う群集の姿。
●TOKYOシティ(モンタージュ)
陸海空各自衛隊や超科技庁派遣の怪獣攻撃隊らが、港湾部
や繁華街、住宅地、そして海上・上空と、戦闘配置を進め
てゆく。
●繁華街
群衆が押し合いへしあいしながら地下街へ……
警察官が要所に配置され、市民を避難させている。
メガホンの響き「押し合わないで下さい!地下街およびシ
ェルターの収容人員にはじゅうぶんな余裕があり
ます!慌てず、着実な避難をお願いします!」
轟音!!
避難民らが見上げる……
トーラスが飛来。
●トーラス・コックピット
ショウとルカは居ない。
ドモン 「(窓外を見下ろして)おいっ?!もうこんなに」
景観に気を取られ、ブリンガと正面衝突しそうになり、急
旋回するハガネ!
いつも以上の衝撃が機体を上下に揺する!
ナ ミ 「ちょっと!下に凄いの吊ってるんだから!もっ
と優しく」
ハガネ 「チーフ!このままでは……」
ドモン 「よし代われ(ハガネとチェンジして操縦席に)
さてと……二人とも、ジェミニで待機だ」
ハガネ 「了解」
後部へ急ぐナミとハガネ……
操縦桿を握りなおすドモン……
ナ ミ 「(後部ハッチのところで立ち止まり)チーフ」
ドモン 「(振り向かず)ん?」
ナミに当たりそうになって止まるハガネ。ナミを見る。
ナ ミ 「(背を向けたまま)地球上の全部の虫が怪獣化
する可能性もあるんですよね」
ドモン 「ジオのかみさんの言葉が正しけりゃな」
ナ ミ 「(しばらく無言)……(うなずき)了解(後部
へ)」
ドモン 「なあ!!」
自動ハッチが開いたところで振り返る二人……
ドモン 「うまく言えねぇが……守ろうぜ」
黙っている二人。
ドモン 「(旋回飛行で地上を見つつ)何を、とか、誰を、
とかじゃなくてよ……」
●地上・港湾部・トーラスからの移動主観
港周辺に怪獣たちが闊歩しているのが見える。
かなりの数。
ドモンの声「(オフ)地球を守ろう!そうすりゃ、すべて
が守れる」
●トーラス・コックピット
黙ってるハガネとナミ。
ドモンの後姿に……
敬礼!!
出て行くナミ。そしてハガネ。
ハッチ閉じる。
ルカの声「(無線音声)チーフ。ルカです」
ドモン 「お?(嬉々と)そのしゃべりは間違いなくルカ
だなっ!正気に戻ったか?」
●トーラス内・格納スペース
四駆式装甲車両アリエスが固定されている。
その車体につかまっているルカとショウ。
ル カ 「降ろしてくれと、ディアナが」
ドモンの声「(無線音声)何ぃっ?!ここでかっ?!」
ル カ 「はぁ」
胸を見つめるルカ。
ディアナの宿るカラータイマー型のペンダントが光る。
ル カ 「怪獣を抹消すると言ってます」
●トーラス・コックピット
ドモン 「抹消?」
ルカの声「(無線音声)アルテロンの持つギガディウム・
エネルギーを使えば、グラリテ波の影響を相殺し
て」
●トーラス内・格納スペース
ル カ 「怪獣を元の姿に戻す事が出来るそうなんです」
ショウ 「そうか!それで……」
●第27話・回想
ギガディウム・エネルギーを暴発させるジオ。
光に包まれて消えていく二匹の甲虫怪獣。
元のカブトムシに戻ったハリーとハーキュリーを、ヒロユ
キ少年が見つける。
U−SWAT作戦室に持ち込まれる飼育容器。
中にはハリーとハーキュリー。
驚嘆のタイガ博士。そしてU−SWAT隊員の面々。
もちろん、その中にはショウもいる。
(注:ここは第27話には描かれていません)
●トーラス・コックピット
ルカの声「(無線音声)出来るだけ怪獣が集まっていると
ころで動きたい様です。彼女の活動時間は、今日
のコンディションだと、地上では24分58秒で」
ドモン 「ルカよ」
●トーラス内・格納スペース
ル カ 「はい」
ドモンの声「(無線音声)俺は嬉しいぜ。またその異常に
細かい分析を聞けてよ」
ショウ、思わず失笑。
ル カ 「え?(やや理不尽な思いで)あ、いえ、彼女の
思考がダイレクトに伝わってくるんです。今のは
正直、どちらが計算したかって、自分でもよく解
らなくって」
ナミの声「(無線音声)ルカよ、絶対」
ハガネの声「(無線音声)俺もルカに一票」
ルカ、ショウを見る……と、笑顔でうなずかれる。
ル カ 「(コホンと咳払い)それは、ともかく、あの、
私、彼女を抑えられそうにありません……放って
おくと、トーラスに穴開けてでも出て行きそうな
感じです」
●トーラス・コックピット
ドモン 「ふぅぅ(額を押さえて独り言)どうにかなっち
まいそうだぜ(頭を振って)ディアナとやらと話
せるか?!」
●トーラス内・格納スペース
ル カ 「なにか用?(既に目つきがディアナのそれに変
わっている)」
見事な変わり身に唖然のショウ。
ドモンの声「(無線音声)あんたのその、なんつーかなぁ
……そういうところなぁ」
ル カ 「どういうところ?」
ドモンの声「(無線音声)どこもだっ!俺ぁ個人的にはぜ
んっぜん気にくわネェがな……今は非常時だ。共
に、戦ってくれるか?」
ル カ 「(ため息)当然でしょ。私はそのために来たん
だから」
●トーラス・コックピット
ドモン 「よし。協力ついでに約束してくんねぇか?とり
あえず現場ではルカを返して欲しい。かなり高級
な容れモノなんだぜ、そいつぁ」
ルカの声「(無線音声)高級?」
ドモン 「あぁ!絶対的高級品だね。無形文化財って言う
か、国宝級って言うか……ルカが居なきゃ、俺た
ちゃ今こうして生きちゃいねぇ……そういう局面
が今までずいぶんあったんだよ」
●ジェミニ・カストル・コックピット
ドモンの声「(無線音声)恥じ臭ぇ言い方だがな、俺たち
にとっちゃ、『ルカ』じゃねぇんだ、『ルカ様』
なんだよ」
フッと笑みをこぼすハガネ。
●ジェミニ・ポルックス・コックピット
ドモンの声「(無線音声)それほど俺たちにとっちゃ大切
な大切な“お姫様”なんだ……」
うんうんと頷いているナミ。
●トーラス内・格納スペース
ドモンの声「(無線音声)だからな、ルカを返して欲しい
ん(だよ)」
ル カ 「(かぶせて)善処する、と言ってます」
きょとんとしているルカ。
●トーラス・コックピット
ドモン 「(両手で顔を隠して)いきなり替わりやがって」
●トーラス内・格納スペース
ル カ 「(感動に目を潤ませて)チーフ……そんなふう
に言ってくれて……私、嬉しいです!」
●二機のジェミニ・コックピット(二分割画面)
ルカの声「(無線音声)頑張りますね!!」
返事が来ない……しばらく待つと……
ドモンの声「(無線音声)ぅん、頼むょ」
プッ!と吹くハガネとナミ。
●トーラス・コックピット
スピーカーから癪に障るほどの大爆笑!
ドモン 「(イライラと)トミイッ!!」
トミィの声「(無線音声)ハイッ?!」
ドモン 「ルカのアリエスを降ろすからな!お前、レグル
スで一緒に行け!!」
トミィの声「(無線音声)リョーカイ!!ショウ!ルカちゃ
んはボクがゼッタイ守るネ!」
ショウの声「(無線音声)待って下さい!」
ドモン 「おぁ?!」
ショウの声「(無線音声)見て下さい、怪獣たちを」
●TOKYOシティ
上空を舞うヴェッサンら飛行怪獣たち。
地上で這い回るブリンガ、クアンドら。
しかし……
彼らは一切破壊活動を行っていない。
確かに、移動する度に建造物にぶつかって壊してはいるも
のの、ほとんどの怪獣たちが、ぼんやりと上空を見つめて
いるだけである。
●トーラス内・格納スペース
ショウ 「(窓外を見下ろしながら)現時点では、彼らを
放置しておいても大した危険はないものと思われ
ます。避難活動が怪獣の大量発生で滞っている今、
下手に攻撃して怒らせでもしたら……」
すぐ隣にルカが来て、一緒に地上を見る。
●トーラス・コックピット
ドモン 「しかしだな、今にもグラリテがやってくるって
時だぞ。少しでも敵を減らしておくべきじゃない
か」
オダギリの声「(無線音声)あーオダギリだ。すまんが割
り込ませてくれ」
●ポーラスター・全景
いつものバンクシーンではない。
防御ドームを閉じつつあるポーラスター。
周辺の森にはドヴォルザーが徘徊し、司令塔近くにはイリ
ダイズが翼を煌めかせて飛行している!
オダギリ(オフ)「いま怪獣を攻撃することはあまりにも
リスクが高い」
●U−SWAT・作戦室
オダギリ「何しろ多勢に無勢だ。最低でも都民の避難が完
了するまでは攻撃を控えるべきと思う」
モニタに映っているドモンの表情。
ドモン 「(無線音声)しかし参謀、グラリテがやって来
た時に怪獣が残ってる方がリスクは」
オダギリ「隊長……まずは少しでも国民に被害が及ばない
方法を選択すべきだ。避難が完了した上でグラリ
テと怪獣が都市を破壊しても、人命に及ぼす被害
は最小限になる。君たち現場のメンバーの苦労は
2倍、いや、それ以上にはなろうがな……どうだ」
モニタのドモン、渋い表情のまま……
窓外の青空を見る……
が、突然破顔一笑。
●トーラス・コックピット
ドモン 「了解です、参謀。その通りです。みんな、攻撃
は中止だ。レグルスとアリエスを地上に降ろし、
トーラスも着陸して地上待機する。その間、怪獣
の監視を続行。決して、こちらから攻撃するな。
いいな?」
●トーラス内・格納スペース
ショウ 「隊長!(笑顔でルカを見る)」
ディアナの顔に戻っているルカがシラケた表情でため息。
ショウの笑顔も褪める。
●トーラス・コックピット
ドモン 「参謀……今まで、ありがとうございました。参
謀はいつも、そうして私の暴走を抑えてくれてた
んですねぇ。私は、いや、我々が安心して戦って
これたのは、参謀のおかげです」
●U−SWAT作戦室
ドモン 「(無線音声)心から、御礼申し上げます!」
スクリーン内のドモン、敬礼!
オダギリ、背を向けてしまう。
オダギリ「礼は後でいくらでも聞くさ。全てが終わったら
一杯やろう……だから絶対戻ってこいよ。いつか
みたいなのは無しだぞ!」
ドモン 「(いつかの事を思い出して失笑、礼の手を下げ
て)了解!」
●夕陽に染まったTOKYOシティ
上空をトーラスが過ぎ去る……
落ちてくるレグルス改!
ドッシャアアアアアアアアーーーーーン!!
公園のど真ん中に石畳を跳ね散らかして着地!
グイィーンと機械音を立てて腰を曲げる……
握っていたアリエスをそっと下ろす。
●公園
アリエスから出てくるルカ。
ぼんやりとペンダントが光を放っている。
ル カ 「(ディアナ調)じっとしてるなんて、バカみた
い」
●地下街
避難所となった地下にひしめく人々。
大勢の中に、ある親娘の姿。
母親の顔……第8話に登場したヤナイ・マナである。
10代と思わしき娘と肩を寄せている。
マナは、疲れているのか眠っている。
少 女 「(キョロキョロとしていて小声で)ママ?」
マ ナ 「(目を開き)ん?」
少女は、成長したアイ。
体が小刻みに震えている。
ア イ 「アイ、行かなくちゃ」
マ ナ 「?」
ア イ 「アイも闘わなくちゃ。みんなが呼んでる」
マ ナ 「呼んでるって……」
ハッとしてアイの腕を見るマナ。
両膝を抱えて座っているアイ。
震えるその腕に、獣のような毛がうっすらと生え始めてい
る!
ぎゅっと膝を抱きしめる手……その指先の爪がゆっくりと
鍵爪の形に変わっていく。
マ ナ 「アイちゃん?!(上着で体を隠して)どうして」
狼狽のマナ。
ア イ 「アイ、大きくなる。敵と闘う。闘おうってみん
なが呼んでる」
●第8話・回想
科学者、ナツキ・アイのクローンとして生まれたアイ。
生まれた途端、怪獣の様に巨大化してしまう。
●地下街
マ ナ 「違う!アイちゃんは人間なの!こんな(巨大化
を抑えようと強く抱きしめて)こんな!」
ア イ 「この星を守るの……みんなそう言ってる」
マ ナ 「言ってる?」
ア イ 「うん。アイたちの星を守るの。そのためには闘
わないと」
マ ナ 「待って!闘わなくったっていいの!いい?良く
聞いて……ヒトは、ヒトの中で生き延びて、ヒト
のためになる生き方をするの。ヒトとして生きて
いく事が大切なの!ヒト以上の事をする必要なん
て無いのよ!」
女 性 「その通りっ!!」
いきなり割り込んできた女性に、のけ反って驚くマナ!
女性は、教員をしているドモン隊長の妹、ヒトミ。
ヒトミ 「あっ!(照れ笑い)ごめんなさい!お話、途中
からですけど、聞こえちゃって……(アイに)大
きくなったら怪獣と闘うって?そんなの、女の子
のする事じゃないわ」
●トーラス・コックピット
ナ ミ 「ぶぇくしょーいっ!!」
ナミの派手なくしゃみにドモンたちが焦る!!
●地下街
子供たちを連れて避難してきたらしいヒトミ。
眠れない教え子たちが、わらわらと寄ってくる。
ヒトミ 「もっと楽しい夢を持とうよ。ね?」
きょとん、と聞いているアイ。
呆気にとられているマナ。
マスミ 「(女の子)私、先生になるんだよ。ヒトミ先生
みたいな。休みのたんびに私たちと遊んで、それ
でお金がもらえるんだよ!」
ヒトミ 「(コケて)ちょっと!何をあなたは(苦笑)」
ヒロキ 「オレはずぇったい野球選手になるんだ!プロに
なって、スーパー・ワールド・シリーズでホーム
ラン打つんだ!」
カ ズ 「ムリムリ。バッティングセンターでも空振りば
っかじゃん!」
ヒロキ 「んだとぉ」
つかみかかろうとするヒロキを取り押さえるヒトミ。
ヒトミ 「で?(カズも引き寄せて)あなたは打てたの?」
カ ズ 「え?あは!あはははははははは!!」
その後ろでヒロキが『いやぜんぜん』という風に手を振る。
ヒトミ 「プロになるなら二人とももっと練習しなきゃね」
「いひひひひひひひ!!」と仲良く笑うヒロキとカズ。
ヒトミ 「(アイに)ね!あなたも、もっと楽しい夢、持
とうよ!あなたはいくつ?いま何年生?」
アイ、満面の笑顔に。
マナ、愛の腕を見る。
いつの間にかキレイに。
ア イ 「えっと〜、私、わたし……(マナを見上げる)」
マ ナ 「(笑顔)今年で3歳になります」
ヒトミ 「3歳ですかぁ!まぁ大きく育って……さんさい?
(考えだす)」
ニコッと笑顔を交わすマナとアイ。
頭をひねっているヒトミをよそに、マスミたちと無邪気に
遊びだすアイ……
●夜のTOKYOシティ
満月が不気味に揺らぐ。
怪獣たちの動かない影……
夜行性のブリンガがこそこそ動く以外、どこにも動きは無
し。
レグルス改のシルエット。
手前に、着地しているトーラス。
静寂が続く……
●TOKYOシティ・夜明け
空が黒から濃紺へ、ぼんやりと明るくなり始める。
地鳴り!!そして振動!
●レグルス改・コックピット
眠りこけていたトミィ、シートからずり落ちる!
トミィ 「ワッツ・ハプン?!」
●TOKYOタワー
土が盛り上がり、顔を出したのは、ディケイダー!
黒い眼をボウッと青く輝かせるとタワーを見上げる。
●トーラス・コックピット(地上)
ディケイダーの足音とシンクロしてトーラスが揺れる。
ナ ミ 「(眠い目をこすって)何よぉ、よりによってと
んでもないのが」
ドモン 「あー登るな……ありゃ登る……あ〜あ」
●TOKYOタワー
登り始めるディケイダー……
ナミ(オフ)「羽化する気かしら」
ドモン(オフ)「そりゃそうだろ」
ナミ(オフ)「あのー、あれも放っとくんですか」
●トーラス・コックピット(地上)
ハガネ 「手を出すなって命令だろ」
ナ ミ 「あの大きさだと、相当うるさいですよ」
ドモン 「誰かのクシャミよりはまだ」
ハガネ 「アイツは鼻水飛ばさないしね」
ナ ミ 「飛ばしてないでしょっ!!」
ショウ 「来ましたっ!グラリテですっ!!」