辻真先のミステリーの部屋−その1
ポテト&スーパーシリーズ
キャスト
- 牧 薩次 −ニックネーム「ポテト」。まるで掘りたてのジャガイモのような顔をしているから。見かけによらず、切れ者。スーパーとは中学時代からの親友で恋人に発展し、婚約者へ。
- 可能キリコ−ニックネーム「スーパー」。両親がスーパーマーケットを経営している(物語のスタート時点では、廃業している)から、ではなく、文武両道、何でもこなす、スーパーマンから由来している。
- 可能 克郎−キリコの兄。三流夕刊紙「夕刊サン」の記者。情報源になる人脈が多く、辻作品にもっともたくさん出演している。
- 那珂 一兵−人気漫画家。辻ワールドの名脇役の一人。白雪姫の殺人で他界したときは「まじかよ」と思ったほど。なじみのキャラクターの死亡はこれが初めてでは? 絶筆は結婚衣装を着たスーパーとポテトの絵だった。
- 新谷 知久−文英社編集者。新宿ゴールデン街のスナック「蟻巣」におなじみのメンバーとともにたむろする常連脇役の一人。
その他の主要なキャストは順に増やしていきます。
辻作品は、多くの場合、同一世界で展開されており、登場人物もシリーズにとらわれず、あちこちでリンクしています。主役クラスが脇役になったり、その逆があったり、常に名脇役であったりします。これは、手塚治にならったものだと、本人の告白を読んだことがあります。手塚作品では、キャラクターを俳優という位置づけで、いろいろな作品に違った役どころで出演(例えば三ツ目が通るの主人公が、プライムローズでは悪役で出演しますし、アセチレンランプなどは名脇役として有名です)しますが、小説ではそれができないため、同一世界で登場人物がリンクするという姿をとったわけだそうです。このことは辻ワールドを語る際に欠かせないポイントであり、わざわざ「ワールド」という言葉を使った理由でもあります。
ソノラマ前期3部作
- 仮題・中学殺人事件
- 読者が犯人、という大胆な設定。
- 作中作を織り込み、それぞれの作品が、全体にリンクする複雑で明快な構成。
- 青春・恋愛を絡めた、ソノラマ読者にふさわしい設定。
- 密室・鉄道など、ミステリーファンが喜ぶ内容を盛り込んだ。
- アリバイを証明する証言が実はアリバイを崩していた、とか、「時刻表」のレイアウトそのものが、犯人に致命的なものであったなど、従来の枠を越えた、趣向を凝らしたトリックだった。
- 語り口は軽妙で、いわゆるユーモアミステリーの先駆者だった。しかしそれはユーモアというよりも、ギャグに近いものがあり、何度も思いっきり笑わせてくれる。
このように、ミステリーデビュー作(と思う)であるためか、意欲に飛んだ、サービス満点の一冊である。
- 盗作・高校殺人事件
- 改訂・受験殺人事件
上の三作品がソノラマ前期三作品であり、もちろん、仮題、盗作、改訂のそれぞれのタイトルには意味づけがされている。
ソノラマ文庫の装丁変更時にすべて復刻されたが、現在はどうも手に入らないらしい。ただし、「合本・青春殺人事件」(東京創原社)に、収録されている。ただし、特殊な犯人像と、独特の読後感を与えるためには、それぞれが一冊でなくては、趣向が半減する。この本には、この3作の他に短編「一件落着」も収録。
ところで、辻作品には「○○殺人事件」というタイトルのものは、原則としてスーパー&ポテトのシリーズである。だから、一件落着は例外といえよう。
ソノラマ後期3部作
- SFドラマ殺人事件
- SLブーム殺人事件
- TVアニメ殺人事件
タイトルの趣向がアルファベット+カタカナになった。辻さん自身ドラマの演出を手がけたことがあり、鉄道ファンであり、アニメ脚本家であるから、それらを生かした、内輪の事情まで上手に織り込んだ作品になっている。
そののち、徳間から宇宙戦艦富嶽殺人事件が発行。
この作品には、ダイヤトリックが使われ、しかも航空機の延着という日常茶飯事をミステリーでは全く考慮していないと言う点を付き、自らそれをクリアしている。また、読者が犯人で探偵で被害者という、どうしようもない設定に挑む。この作品はマンガ化されたが、マンガの方はもう一つであった。
この後、架空列車三部作(講談社)が、登場する。
- 寝台超特急ひかり殺人事件
- 急行エトロフ殺人事件
- 幻の流氷特急殺人事件
これらの他に、スーパー&ポテトシリーズは、東海道36(スリーシックス)殺人事件(後に東海道本線殺人事件と改題・知らずに両方買ってしまったやんか)・電気紙芝居殺人事件・沖縄県営鉄道殺人事件・殺人小説大募集!!・殺されてみませんか・ガラスの仮面殺人事件・白雪姫の殺人(これは別のシリーズとも解釈できるが)・ユートピア計画殺人事件・究極の鉄道殺人事件などがあり、本来のスーパー&ポテトものと、短編をまとめ、全体構成をスーパー&ポテトがカバーして、一つの作品に仕上げたものがある。
また犬墓島[−迷犬ルパン・スペシャル]は、発表当時あった辻さんの主なシリーズの主人公クラスが、ずらりと総出演する豪華版(迷犬ルパンシリーズでとりあげます)であり、また、このシリーズについて完璧をきしたい人は、コバルトから出ているユーカリさんシリーズの短編集に掲載されている「特急燕驀進す」もチェックせなばならない。
次の作品がまだ未入手、未読である。どんな話なのかな?
「殺人事件」殺人事件
ようやく手に入れて読むことができたシリーズ最終作がこれ。
入手前からタイトルで予想していたのは、中学以来のこの二人が、結婚をして、そしてシリーズが終了する、というもの。
で、それはやはり、予想通り。あまりネタバレするとよくないが、作中作や作中劇があり、少し複雑。初期の作品の形式を踏襲しているともいえるが、切れが少し悪く理解しずらい。僕の頭が安っぽいせいかもしれない。ファンとしては、若干物足りないような....
それはともかく、シリーズそのものの完結宣言らしきものを、作品中に読み取ることはできなかった。なんとなく、もしかしたら、今後も、活躍するかもしれない。そんな気もする。
ところが後書きがショッキング。ミステリーから離れて行きます宣言が。
実際にすでにゲーム作りに取り組んでいるとか。
大人向けのミステリーを書き続けるより、いつまでもジュブナイルを相手にした仕事を続けてほしい、そんな気もします。
投稿にて、次のご指摘を受けました。
残念ながら、下記の事実について、とらおは全く知りませんでした。どうもありがとうございます。なんとかさがして読んでみたいと思います。MANAさんはどうもこの先、強おい味方になってくれそうです。
「臼杵2時間52分の危機」(だったと思う)というポテトスーパーものの、短編があるのは知ってますか?
ホームページ上に記述がないので、気になりました。初出は「コットン」という雑誌だそうです。収録されているのはやはり「日本縦断殺人」飛天文庫という見慣れない文庫です。西村京太郎さん他の作家の作品を集めた鉄道ミステリー短編集に収録されています。
この他に長編の「湾岸鉄道殺人事件」もあります。勁文社から94年に新書版のノベルスで出ています。
MANAさんより。伝言板にも書き込みしてくれてます。リンクページからもリンクもしてますので、MANAさんのところにもおたずねください。
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