酩酊日乗
1月分(前半)
1月1日(金)癸丑
皆様明けましておめでとうございます。
元旦は台湾では
「開国記念日」
でお休み。
総督府
総統府の前で何かイベントがあるらしいが、
元旦
くらいは一日のんびりしたいので結局行かなかった。部屋で読書とHP用のファイル作成に勤しむ
元旦
。今年も良い歳でありますように。
1月2日(土)甲寅
今日は本来なら半ドンだが、元旦と日曜日に挟まれているので日本の「国民の祝日(5月4日)」式にお休み。せっかくの正月なのだから、と久しぶりに
光華商場
へ。CD屋増えたな……。市長が代わったせいか闇CG売りも増えたようだ。とにかく新しく入ったゲームCDを見てみる。「ぱ○チャ」はまだ先のようだが、「With Y○u」などこの秋までに出たものは大体揃ったようだ。新規入荷品やある程度売れているものはNT$250〜300、しかし処分品は何と
NT$100
(NT$1=4日本円)。食指が動くがとりあえずお預け。
それで気が大きくなったか、「たまには
豪遊
してやる」と
「養老乃滝」
へ。ついに
赤提灯
を
「豪遊」
とみなすまでに堕ちたか、俺。
貧乏性もここまで来るとつける薬が無い。しかも呑みに行く前に学食できっちり食事を済ませ、酒肴の必要を最低限に抑えてるし。
そうして2、3品のつまみでお銚子を重ね、趣の行くままに新年の詩歌をつづる。気がつくと夜9時半のオーダーストップ、余りにも早すぎる閉店時間だ
(店によってはもっと遅い)
。カウンターでお勘定。……
高い
。また前回と同じくらい使ってしまった。そんなに呑んだかなあ。せいぜいお銚子4本……もっともここの日本酒は日本より高いが
(日本円にして一合350円ほど。日本では250から300円くらいのはず)
。台湾で日本より価格が高い数少ない商品の一つだ。
呑み足りないので例の友人宅へ押しかけようと電話をかける。
「俺は休み明け試験だ!」
と怒鳴られたので大人しく学校のPCルーム(WSは24時間開放)へ
(酒瓶持って)
向かい、チャットに参加。夏に新宿で一緒に飲んだ
友人
が風邪をこじらせて入院したことを知る。お見舞いに行けないのが残念だが、くれぐれもお大事に。
1月5日(火)丁巳
寝過ごした……。8時からの授業なのに起きたら
9時半
。本来はその授業の後トレーニングがスケジュールに入っているのだが、
宿酔い
のためこれもパス。大学のPCルームでHPをアップデートした後、とりあえず師範大学国語中心に。
国語中心の友人:「やあ。頼むからピザ始末して。」
いきなり何かと思ったら何ぞの会議で頼んだピザが大量に余っていて、食べ手を探していたらしい。
そうと分かっていたら昼飯食べるんじゃなかった。
また共通の友人の誕生パーティーが今日だということもここで知る。
午後は台湾史の授業。この授業は今日が前期で最後らしい。その割には盛り上がらなかったな……。とはいえ「台湾史」が高校以下の学校で教えられるようになったのはごく最近のこと
(国民党による歴史教育は「中国」優先。「台湾」に帰属意識を持たせぬため)
で、授業に出ている学生のほとんどは大学の一般教養で習った程度。しかも歴史系以外からの学生も多い。こんなクラス構成でディスカッションしようってそれは無理ですよ、W先生
(
12月24日の日記
に登場)
。
誕生日パーティーは夜9時半から。本人のバイトの関係で遅くから始まったが、プレゼント買うの忘れた……。しかし、こんな時間でも商店街が開いているのが台湾の良いところ。花屋に飛び込んで花束を買い、なんとか間に合わせた。しかし祝ってもらう当の本人は、女の子だけに誕生日には複雑な心境らしい。ケーキの上の蝋燭が「?」の形なのはご愛敬。しかし今日はトレーニングしてないばかりか、一日で2、3日分のカロリーを取ってしまったような……。ちょっとたるみすぎたか。
1月6日(水)戊午 小寒
24節気も終わりから2番目、今日から後一ヶ月は一年で一番寒い時機のはずだが、ずいぶん穏やかな良い日だ。午前の授業を終えて午後はバイトだが、自転車での道中が暑いの何の。冬だというのに汗をかいてしまった。
バイト先
(中央研究院台湾史研究所図書室)
で修士課程2年の先輩とばったり会い、何故か
「日本軍歌」
の話題で盛り上がる。彼がどういう修論を書くのか知らないが、或いは当時の軍隊関係のものかもしれない。自分の祖父が
「生きた史料」
だそうな。
「戦争といってもどちらかが100%正しくてもう一方が100%悪いことなどある訳が無い。米中側にだって戦争開始の責任や戦争中の残虐行為があったじゃないか。日本側の行為を弁護することは出来ないとしても、米中側があたかも絶対の真理のように非難を振りかざすのは余りにも不公平じゃないか。」
とおっしゃることには同意するけれど、こういう事は「日本人」な私にとっては
(少なくとも公の場では)
口が裂けても言えないのですわ。いくらこちらが客観的な態度で述べたとしても、聞く方がどう取るか分かったものじゃない。
それはそうと、彼がこういう問題意識を持つばかりか積極的に討論できるのは、「日本」も「中国」も客観的に見ることの出来る、「中国」への帰属意識の弱い「台湾住民」だからか。戦前も戦後も台湾の統治者が大多数の住民にとって「必ずしも帰属意識を持つことの出来ない政府」だったことは、彼のような研究者が「国家」から自由な視点を持つ助けになったのかもしれない。
(そのような統治機構が全体から見て良かったか悪かったかは別の問題。しかし「大多数の住民が帰属意識を持てる政府」が客観的に見て良い政治を行うか否かも又議論の余地が有りそう。更にマイノリティーのことも考慮に入れると問題が複雑になりすぎるかもしれない。)
コピー取りの後で今度は日本語教師兼日本向けビジネス文書翻訳のバイト。本来なら次の日なのだが、何やら緊急の用事でこんな時間に呼び出されることになった。日本ではもう年が明けたが、旧暦の台湾ではこれから
師走のせわしいムード
に染まるようだ。特に日本で正月休みが明けたばかりとあって、日本へ送る文書が山積みになっている。これ全部翻訳するのか……。何とか終えて日払いを受ける。夕食を食べさせてもらえたのと、日銭が入ったことで善しとするべきのようだ。
1月9日(土)壬戌
今日は隔週の休み。大陸から寒波が来ているとかでやけに寒い。
大陸から台湾へはろくなものが来ないなあ、寒波とか拳銃とかお姉ちゃん達とか……。
体育館が空いていたのでウェイトトレーニングをしていると、日本に留学していたという人が話しかけてきた。もう大学は卒業して会社員をしているそうだが、なんでまた台湾大学の体育館に?これも大学が
「開放」
されていることの証拠か。「日本への留学生は日本社会に幻滅して帰ることが多い」などと聞いていたが、この彼はまったく逆で留学で日本への憧れがより強くなったらしい。もっとも彼の父親は日本教育を受け、しかも当時の教師と今でも連絡を取り合っているほど親日家だそうだから、日本への愛着を持ちやすい家庭環境だったようだ。他にも日本への留学経験がある人とはかなり知り合う機会が多いが、前述の意見に反して「日本政府」に対してはともかく「日本社会」に対する批判などはあまり聞かない。そういう意味では確かに台湾の所謂「本省人」は世界一「親日的」な人々かもしれない。
「国家」
と
「社会」
との区別をはっきりつけた上での事だが。それはそうと長く喋っている間に
体が冷えてしまった
。この辺で切り上げるか。
久しぶりにウィンドーショッピングでもしようか、と重慶南路付近の繁華街へ。腕時計が壊れていたので
道端で
新しいのを購入
(150元:日本円で約600円)
。こういう所で売っている腕時計は安物だが、ところがどうして結構丈夫で長持ちする。2年以上前に似たような所で買った腕時計
(確か120元)
は、バンドが切れたので使っていないが時計の部分はまだきっちり時を刻んでおり、コストパフォーマンスは
異常に
良い。本屋をぐるっと回って、城隍廟近くの「自助餐」で夕食をとる。
「自助餐」とはビュッフェ形式の食堂で、いろいろな料理の乗った大皿から好きなものを選んで自分の皿に取り分ける。この時自分で好きなだけ取れる店と従業員に一皿分取ってもらう店がある。価格の計算方法はさまざまで、料理の種類で計算する方法
(従業員が取り分ける店ではこれが多い)
、全体の重量で計算する方法、全体の重量+肉魚用特別料金
(ローストチキン、豚バラの唐揚げ、煮魚等)
で計算する方法
(この2種類は自分で取り分ける店に多い)
、固定料金食べ放題といったところが主な方法か。台湾ではこの形式の食堂が非常に普及しており、大学の学食などもたいていこれ。日本でいう定食の類は特定の場所
(台湾大学でいえば学生活動中心)
にしか見当たらない。
さてこの「自助餐」は固定料金食べ放題形式。ただし
素食
=精進料理だという事で、肉魚はおろかニンニクやニラ、葱の類を使った料理は一切置いていない。もっとも日本の精進料理とは違い、揚げ物や炒め物が多く味付けも濃いので、
「特別な料理」
という感じはあまりしない。このような精進料理店に食べ放題の店が少なくないのは、ひょっとしたら客として訪れるかもしれないお坊さん達への御布施の意味か?とりあえずトレーニングの後なので
豆腐類
を一生懸命食べておく。しかしこれがたたって、かなり早めの夕食だったにもかかわらず夜遅くまで
膨満感
が残ってしまった。
1月10日(日)癸亥
日曜日だというのに割合早くから目が覚めた。まだ胃が重い……。したがって朝食は果物だけ。フルーツ天国台湾でのこの季節の果物は、
ミカン類
、
ナツメ
(緑色のもの)
、
マンゴー
(小さいもの)
、
蓮霧
(lianwu:waxapple、釣り鐘型の赤い実で、水気が多くさっぱりした甘みがある。台湾人のみならず、台湾在住の日本人の間でも人気が高い。)
、
スイカ
、
メロン
、それに季節をあまり問わない
バナナ
、
パパイヤ
、
グァヴァ
が美味しい。冷蔵庫が無い寮生活では、比較的保存が利く
ミカン
、
ナツメ
、
バナナ
が買い溜めにちょうどいい。
スイカ
や
パパイヤ
は一人では食べきれないし。
朝食、昼食ともに本を読みながら果物で済ませ、午後は国家図書館台湾分館へ。最後のレポートの資料
(日本時代の史料)
探しだが、
資料そっちのけ
で当時の生活に関する文献を読みふけってしまった。不覚。図書館が閉まってから、「南門市場
(中正紀念堂から程近い伝統的市場)
」を覗いてみる。地下の生鮮食料品売り場では
山羊さんの頭
がお出迎え。他にも上からぶら下がった
豚さんの顔
や
整列した豚足
、一階に上がって
原形を留めたままの塩漬け豚腿
等を眺めて食欲を強烈に高めた後、勇んで食事に。
夕食は学食で。やはり「自助餐」で米飯取り放題だが、前日の失敗に懲りて地瓜粥
(サツマイモ入り粥:日本で言えば
「大根飯」
に相当するが、マイナスのイメージは少ない)
をすする。しかし今度は夜が更けてから空腹感が……。
「腹も身の内」
とはいえどうもご機嫌が取りにくい。
南門市場で
自家製ドブロク
を売っていたので一瓶購入、試飲してみる。なかなかいける。
自家製ドブロク
は山地の方で原住民が作っているものしか呑んだ事が無かったが、これは味もそれほど変わらず、しかも値段は半分以下。なかなか良い買い物をした。また買ってこよう。
(注:台湾では酒は専売です)
ところでこのドブロクという酒、若いうちは甘酸っぱくて呑みやすいのだが、味も口当たりも濃厚なので一度にはあまり飲めない。食後のデザートワインなどには良いかもしれない。なおもう少し発酵を進めた強いものもあるが、こちらはまた次の機会に譲ろう。
1月14日(木)丙寅
午前中のバイトをやっつけ、午後からは日本語教師、という名目で日本語文書作成兼翻訳。社長
(資本金:不明、社員数:社長を含めて1人)
がどうもトラブっているようで、微妙な表現を要するFAX文書の作成に苦心する。
この会社は自前の工場を持たず、日本から注文を請け負って中国の工場に発注している。言ってみれば
商業倫理観念の薄い中国企業
との直接投資や取引で負うリスクを恐れる日本企業にとってのクッションで、台湾にはこの手のクッション企業がかなり多い。しかしこの不景気で、日本のバイヤーからは買いたたかれるわ中国のメーカーにはパテント盗まれるわ
(しかも日本の注文主はむしろ台湾企業側を疑ってかかるし)
で大変らしい。
今回はラベルの表記上の問題。日本の注文主からの指示に基づいて「(某薬品名)使用」とうたったラベルを台湾で作成し、中国の工場に送った際に工場側から「確かにこの薬品は使っているけど、薬品名を表記するのはマズい」と指摘され、現在注文主と
責任の押し付け合い中
。元々ユーザーからの希望でラベルに表記する事になったらしいが、その薬品を製造しているメーカーはどこにも名称使用を許可していない。5分もリサーチすればわかる事だが、ラベルのデザイン決定日時がちょうど
日本の正月休み
にぶつかりリサーチしようにも出来ない。結局注文主の社長が
(会社は閉まっているので自宅から)
適当に
答えてしまい、台湾側でも全くリサーチ無しで印刷してしまったのが間違いの元。法律や知的所有権に関して一番知識があったのは、通説に反して中国人だったというお噺。
今回は仕方なくもう一度刷り直す事になったが、もう香港経由の貨物船では間に合わない
(中国〜台湾間の直接航路はまだ禁じられている)
。
「社長、どうします?」
「漁船に積んで持っていってもらう」
「そ、それはリスクが……」
「大丈夫、その辺で売っている漢方薬と一緒だ」
ラベルを改めて印刷した代金と
漁師のおぢさんに渡す代金
は注文主、工場と自分のところで3等分して負担させると息巻いているが、果たしてどうなる事やら。内容の微妙なFAX文書を書かされるのは、まだしばらく続きそうだ。
1月15日(金)丁卯
日本では成人の日でお休みだが、台湾では関係なし。という訳で朝からバイトだが……バイト先でリュックを開けて愕然。夕べ同じリュックに酒の瓶を入れていたのだが、蓋をしっかり閉めていなかったのか少しこぼれてしまい、中に入っていたバイト用のノートや図書館から借りた本、友人への手紙まですっかり湿ってしまった上、何と言ってもアルコールだから手紙を封じた糊が溶けて、封が開いてしまっている。自分の部屋じゃないから好きに広げて乾す訳にもいかないし、とりあえずバイトの道具だけ出して空気に当て、リュックの口を開けて放置しておく。酒臭い……。しかもこぼしたのがよりによって
焼酎
だから、匂いもまた格別。これが
ブランデー
か何かだったら胸を張って周りにアピールするのだが……
(それは違う)
。
台湾の学問の最高権威
である
中央研究院
にこんな
焼酎臭い一角
があって良いのだろうか?
仕方なくその酒臭い環境で仕事。周りの人や手紙を受け取った友人はこの匂いを嗅いで、さぞや
「ったく酒ばっか呑んで……」
と思った事だろう。
まさにその通りではあるけれど。
(核爆)
帰ってから学校の図書館でレポート作成。下書きは出来ているので後は清書するだけ。書き上げて、さて帰ろうかと思ったら図書館全体がいきなり
停電
した。非常灯の明かりの下外に出ると、広大な台湾大学のうち図書館付近の建物の明かりが全部消えている。配電ユニットに問題が発生したらしい。
M$製か?
(待テ)
幸いな事に今住んでいる寮はまた別のユニットだったので停電は免れたようだ。しかし大人しく帰らずにPCルーム(24時間開放)へ向かうあたしゃ一体何ざんしょね。
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