- ４月某日 着校式
- 昨日福岡県は久留米市に到着。寝酒も程々に済ませて久方ぶりに朝早くから起き出し、今日からの職場へと向かう。新生活の始まりだが、一般の「新生活」とはどうも趣が違う・・・。それもそのはず、就職先が陸上自衛隊幹部候補生学校ではねぇ。最近話題になる事の多い、日本最大最強の親方日の丸。朝から夕方までみっちり授業と訓練がある上、消灯時間はテレホタイムの前。延灯は可能なものの、わざわざチャットのために延灯するのもなんだし、第一日が暮れたらそんな元気はある訳ない。まあここの生活に体が慣れたら、携帯買ってサイバーワールドに復帰しようか・・・。
- ４月某日
- とりあえずまだ正規に職に就いた訳ではないので、今のうちはお客様状態。この間に団体生活の要領や教場の配置などを覚えろ、と言う事らしい。
- 教官：「ここのモットーは一つ、『剛健』の一字だ。分かりやすく言えば、『気合と根性』だな。」
- それはちがうのでわ？とは思ったものの、空挺徽章とレンジャー徽章が胸に光る防大出の教官に逆らうのは非常に危険を伴うので、とりあえず聞かなかった事にしておこう。
- ここ数日で身体検査や素養試験などを受ける。この身体検査で異常が発見されると入校できない事もあるので、検査は非常に厳格かつ真剣・・・だと思っていたんだけどね。医官の皆さんのやる気無い事。台湾の保健所で受けた身体検査の方がまだ精密だったような気が・・・。
- 素養試験は知能審査、心理テストと
敵性語英語。やはり同盟軍の言葉は必要なのね。意思が疎通できなくて空爆されるような事にはなりたくないが、疎通していても誤爆の恐れが・・・（ヲ）。しかしこの結果が将来の職種選択にどのように反映されるのかしらん。それはともかくクレペリン検査で指がつりそう。- 他にもこの数日の間にベッドメイクのやり方とか靴の磨き方、アイロンのかけ方などを叩き込まれる。将来この技で食っていけるかもしれない。これこそ「退職後のアフターケアも万全！」という、新隊員獲得用殺し文句の内情らしい（大嘘）。
- ４月某日 宣誓式及び入校式
- この宣誓が済めば晴れて給料が・・・じゃなくて、正式に職に就いた事になる。宣誓式の後、少し休んで入校式。親父が群馬から駆けつけてくれたが、顔を合わせてまず何を言うかと思ったら：
親父：やっぱり本場の薩摩白波は美味いな。 - さすが我が父君。某同期の父親がきらびやかな軍服姿でいる前だというのに、相変わらずかましてくれる。血は水よりも濃い、という諺の意味を痛感しましたわ。
- ４月某日
- この週末が初の外出。ようやく塀の外、シャバの空気が吸える、と皆様感涙にむせびつつ、とりあえずは教官御推薦の飲み屋へ。ほとんど店を（物理的に）潰しかねないほど騒いでからの帰還となる。これが所謂リバウンドらしい
- 次の日は近所の神社（高良大社：筑後一の宮）参拝・・・って、５キロ離れた山の上が「近所」なんだろうか。しかしこの５.６キロの山道は秋走らねばならないマラソンコース。その昔東京オリンピックでアベベと競り合った円谷幸吉はこのコースを１８分で走ったらしいが、そういうのと一緒にされるのはすごく困る。それはともかく、その後で山の向こう側にある王子若宮神社へ降り、今度は山を巡るように歩いてまわる。少し腹も減ったし、蕎麦でもたぐって一杯やろうか・・・と思って蕎麦屋を探したが、何故か久留米には蕎麦屋が無い。うどん屋で蕎麦は出してくれるが、何となく趣が違うのでパス。結局蕎麦屋で一杯、と言うのは久留米に住んでいる限り無期延期になりそう。
- ４月某日
- この学校では８９式小銃が演錬の中心。もちろん小銃は使ったら必ず手入れ。普通は上から油を塗る程度でＯＫだが、今回は一応分解組み立てを習う。特にこれと行った道具を使わずに分解できるようになったのは６４式と比べて進歩した点だそうな。（６４式はまずドライバーなどの鉄の尖った棒でピンを押さないと分解できない。８９式にも同じ構造の部分はあるが、銃自体の部品を使えるようになっている）部品も大分少なくなっているので、整備保守が比較的容易らしいが・・・それは今後実際に経験していく事。まあ過大な期待は持たないようにしておかないと。
- ところで、我が社（ウチでは本当にこういう言い方をする）では自分の使う小銃は個人の持ち物・・・ではないけれど、個人で責任と愛着を持って使用及び整備・保守する事になっている。そのために、
銃には彼女の名前をつける - ことが奨励されているとか（半分嘘）。それを真に受けて本当に彼女の名前をつける奴やら、「ヒ■スエ」とか「○ードリー」とか・・・。「マ○ルダさん」や「ア○ナミ」とかがいないのは「世代の差」と言う奴か（マテ）。私は「ミハル」とつけたが、表向きには「ライデン」にしておこう（謎）。
- ４月某日 空挺・航空適性検査
- 今日は一日潰して空挺隊員候補と航空要員（パイロット、管制官）候補の適性検査。空挺検査はまず全員通るらしいが、航空はどうだろうか？と言っても航空にもパイロット適性と管制官適性があり、パイロットの方がきついらしい。しかし空挺検査でアシスタントの軍曹に、
- 「ヨシ、空挺で決まり！」
- とか言われたあたしはどうするべきでしょうか？一応パイロットに希望を出してはおいたが・・・。やっぱり習志野で「人間業とは思えない訓練」に全力を尽くすべきなのか？
- ４月某日 校友会
- 校友会とはつまり「クラブ活動」。この学校には体育会系中心にいくつかのクラブがあり、学生・職員合同でそれぞれの活動に勤しんでいる・・・とは言っても忙しいのでひと月に１、２回程度。私が参加したのは、このＨＰの内容にふさわしく「詩吟部」。漢詩は好きだが「詩吟」という形を習った事はなかったので、ここで習っておけば今後のＨＰ経営上にも有利かな？と思って参加。今日が最初の練習である。
- 講師は九州地区では有名だという、放光殿流放光吟詩会の坂本光州先生。ＰＸ写真部のおっちゃんだとばかり思っていたら、実は（その筋では）名前が知れたひとだったのね。しかし部員は予想通りごく僅かのみ・・・。まあいいか。その方が集中できるし。練習台は石川丈山の「富士山」。「白扇さかしまにかかる東海の天」の一句で特に有名で、どんな場合に吟じてもまあおかしくないという汎用型の詩だという。しかし「詩吟」って、和製漢詩しか詠まないのだろうか？もう少しレベルアップしたら聞いてみよう。
- ４月某日 開校記念日
- 開校記念日とは言うものの、楽しむのは校外の皆さん、我々は裏方、ということで、実際するのはパレードと「自衛隊体操」。パレードは着剣した８９式小銃を担って新型迷彩に新型ヘルメット、サスペンダーに新型弾帯とマニアな方々には嬉し涙が出るような装備。しかし米軍の装備と似ているなあ・・・でも迷彩はこっちの方がかっこいいぞ（偏見）。
- 自衛隊体操とはラジオ体操を少しハードにしたような体操。これが実は腰に来る。自衛官に腰痛と水虫は付き物らしいが・・・。もちろん一般の部隊ではそんなに腰痛になるほど気合いを入れて体操する事はないのだが、今回はお客様に見せるということで指導にどうしても熱が入り筋肉痛患者続出。しかしこれを乗り切ればゴールデンウィーク（我が社ではリフレッシュウィークと言う）だ、と思えば・・・とりあえず連休中には湿布が手放せそうに無いな。
結局「抜刀隊」のリズムに乗った観閲行進も、みんな揃っての自衛隊体操も無事すんで、ようやくゆっくりできるようになった。航空自衛隊高良台分屯地から応援に来たペトリオットがやけに人気がある・・・と思ったら、婦人自衛官が説明に来ていた。隣の第４高射特科大隊から来た８１式短ＳＡＭや近ＳＡＭの周りが寂しいというのに・・・。しかも群がっているのは自分の同級生ばっかり。いくら男所帯とはいえ、ここまで露骨に群がるか？他の出し物としては、富○通主催のインターネット体験コーナーやプリクラコーナー。プリクラでは三自衛隊共通のマスコット「ピクルス君」がその気抜けする勇姿をさらしている。９０式戦車とかとのプリクラにしたほうが絶対受けると思うのだが・・・。それはそうと、Ｎ○Ｃではなく○士通が入っているのは、やはり３月のスキャンダルが尾を引いているのだろうか。まあ余計な事は考えず、打ち上げの焼肉会でビールを楽しもう。でもこの肉は明らかにマトン・・・安いんだろうな、やっぱり。
- ４月某日
- 開校記念日も無事済み、また日常が始まる・・・とは言うものの、あと数日で連休突入なので、みんな心はそちらへ飛んでいる。しかし飛びそうな心を繋ぎ止め、もうちょっと辛抱しながら６２式機関銃とカール・グスタフ無反動砲、それにパンツァーファウスト３（ＬＡＭ）の取り扱い説明を受ける。こういう重要な装備の説明を、こういう時機にやって良いものだろうか。かく言う自分も習ったはずの事を、全てさっぱり覚えていないし・・・（自爆）。
- ４月某日 代休
- 前の土日が開校記念日で潰れたため、その代休をゴールデンウィークと合わせて一気に８連休！うーん、親方日の丸してて良かった（こういう態度が問題）。この連休を利用してまずは里帰りだ。こっちに来る時は飛行機だったので今回は新幹線で帰ることにした・・・が、実は飛行機の方が早くて安いのね。選択失敗、今度からは飛んで帰る事にしよう。
- ともあれ早いぞ５００系のぞみ。ブルーの車体を光らせて、時速３００キロで東京までＧＯ！・・・しかし日本ってやっぱり長い。昼頃博多駅を出て、東京到着が５時頃。まあこの区間を５時間で走れるようになったのだから、技術の進歩に感謝すべきか。しかしこの５時間は長かった。しかも気合入れて制服で帰ったものだから、車内ではめったな事は出来ない。酒は呑んでも良いのだろうが、酔って何しでかすか分からないから今回はパス。独りでいて５時間以上素面、と言うのは自分にとっては実は珍しい事だったりする（自爆）。
- 東京で上越新幹線に乗り換え・・・る金はないのでローカル線で高崎へ。帰りの車内で中学生の集団がこっちをちらちら見ながら：
「何か恐そう」 - 等と言ったのが妙に気になったが、制服の自衛官ってそんなに恐そうかな？自分自身の顔の造りその他は置いといて・・・（汗）。
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- ４月某日 着校式