朝8時半にT急ホテルのロビーで社長と落ち合う約束だが、念のため8時にスタンバイ。とりあえず館内電話をかけて確認してみる。・・・いない。ふと気がついて、ホテルの名前を確認してみた。「T急イン」。まずい、梅田には扇町通りの「T急イン」と茶屋町新御堂筋沿いの「T急ホテル」の二つがあったのだ。大急ぎで新御堂筋を北上、何とか約束の時間に間に合う。余裕を持ったスケジュールで良かった。
「おはようございます。」
「おはよう。今日行く取引先に連絡して交通手段を聞き出しておかないとね。(公衆電話に向かう)」
「社長、今まで御存じなかったんですか?」
「(無視)・・・もしもし、台湾のCです。今通訳と代わりますので・・・ほい。」
「(あわあわ)あ、通訳のQと申します。これからお伺いいたしますが、大阪駅からはどの電車に乗れば宜しいのでしょうか?」
「大阪駅からなら新快速で1時間くらい。『ノス』って駅の北側で待ってるから。」
「はい、分かりました。それで、何線に乗れば・・・。」
「(ガチャ)ツー・ツー・ツー」
いきなり切りよった。とりあえずJR大阪駅に向かい、料金表を見て「野洲」を探し出す。あった。更に改札口の駅員さんに何番ホームか聞いて、ようやく路線が判明。手間を取らせおって〜。
新快速に乗ってしまえば楽なもの。社長の話し振りからすれば乗り換えも無さそうだし、ここは体を休めよう・・・と考えたのが甘かった。ふと気がつくと、電車は何やら民家もまばらな山沿いを走りぬけている。席を立って路線図を見に行くと・・・いかん、遥か以前に乗り換えがあった。本来東海道本線に入って琵琶湖の東岸に出なければならない所を、この新快速は湖西線接続で琵琶湖の西岸まっしぐら。確かにこの電車に乗り込んだ所から「この列車は近江今津行きです」と何度もアナウンスがあったが、東夷の悲しさ「野洲」が琵琶湖のどちらにあるかも明かではないためほうっておいたのが運の尽き。こういう時身内に「鉄な人」がいればなあ。
すったもんだの末、約1時間遅れで野洲駅に着く。あちらの社長怒ってるだろうなあ、早いとこ連絡入れないと、と思いながら公衆電話を探すと、何と先方の社長が駅前で待っていてくれた。
「遅かったね。」
「申し訳ありません。新快速が湖西線接続だとは思っていなかったもので。」
「そうか。いや実は何時まで経っても連絡が無いから、何かあったかな、と思ってこうして駅まで来てみたんだが・・・。」
・・・そういう場合はいつ連絡があっても良い状態で「動かざる事山の如し」がセオリーなのでは?電話の事もそうだが、やけにせっかちなお人やなあ。こちらにケータイの番号教えてくれているならともかく、あんまり動き回られると本当に何かあった時に連絡のとりようが無い。と思いはしたものの顔には出さずに工場へ向かう。
商談はかなりシビアだったので略。茶も出なかったし。「未払い代金振り込みの、期限を切っただけでも上出来」とこちらの社長が言うくらいきっついお話だったといえば、分かってくれる方も多いかと思う。「いくら売っても利益にならない」と言うより「利益にならないものしか売れない」状態は、もうしばらく続きそうだ。
とりあえず琵琶湖の見える某食堂で昼食を済ませ、今日の予定は終了。さーて空いた時間は日本橋にでも行こうかな、と大阪へ帰る電車の中で胸算用していると、社長に何やらリクエストがあるらしい。
「どこか御予定でも?」
「うん、お土産買っていかなきゃならないんだ。まずはポータブルCDプレイヤーと・・・」
「(それなら日本橋だな)それと?」
「子供に玩具を買っていかなきゃならないから、ディズニーの直売店に行かないと。」
俺は知らんぞ、そんなとこ。仕方ないのでT急ホテルまで戻り、フロントで聞いてみる。
「すぐそこの『エスト1番街』だと思います」
うむ、さすが「T急ホテル」。良い仕事をしている。しかしよくこんな高いホテルに泊まる気になったなあ・・・ってどうせ会社の金か。
「いや、ツテを使って『添乗員』の身分で泊まってるんだ。だから宿泊料は半額以下(しかも会社の金)。そうそう、これあげるから明日からはあそこで朝食を食べると良い。」
「朝食券・・・良いんですか?」
「うん、どうせ私は朝飯食べないし、第一ただで付いてきた奴だし。」
金と言うのはこうして貯めるものなのね。とりあえずフロントで言われた『エスト一番街』内のディズニー直売店でお土産を買い込む・・・ここまで買うか?山のような土産物を抱えては次に行けないのでいったんホテルに戻り、更に日本橋に向かった時には既に7時前。店が閉まり出す寸前でようやく買い物を済ませ、帰る頃にはもうへとへと。ハシゴする気力も無かったので、夕べ呑んだホテル前の屋台で呑むのが精一杯だった。(だったら一升近くも呑むなよ、俺)
他のレポートを読む
伊賀・船場編へ
目次へ戻る