台北耐乏生活
「H:よう!」
「屈(以下Q):やあ、久しぶり。元気そうだね。さて、積もる話は部屋で話そうか。バイクはどこに停めた?」
「H:無いよ。」
「Q:は?」
「H:警察に吊っていかれてねえ。まあいいや。大分古いからそろそろ捨てようと思ってた所だし、何と言っても自分の名義じゃないから罰金払う必要ないし。じゃ、行こうか。」
「Q:……どうやって?」
「H:もちろん歩いて。」
「H:そうそう、ここ放火されたんだ。」
「Q:誰に?」
「H:院生。何でも教授と意見が合わなくて、ポカリとやっちゃったらしいんだ。それで退学になって、その腹いせに火を……。」
「Q:腹いせも何も……。」
「H:それで、その放火した院生はYさん(共通の友人。政治大学の院生)の隣に住んでいたとか。どんなやつだったかYさんなら知ってるかもね。」
「Q:飯食いに行こうか。学食どこだっけ?」
「H:学食は夏休み中お休み。(朝食だけ販売)生協で弁当は売っているけど、味覚の充足と身体の健康のためには外へ食べに行った方がいいだろうね。」
「H:U海さん、なんでまたこんな所に?」
「U海(以下U):いや、洗濯物が溜まってね。ここの寮ならコインランドリーが一回10元(日本円にして約40円)だから。」
「H:でも師大(師範大学:市内中心部にある)の方に住んでるんでしょ?だったら師大の寮で洗濯しても。」
「U:うん。でも師大には行った事が無いから、勝手に入るのは気後れがして。こっちの寮ならよく使ったからね。」
「Q:あの、こちらのお坊様は?」
「U:いえ、出家はしてません。これでもクリスチャンです。」
「Q:では少林拳とか羅漢拳とかを。」
「U:いやそのー。まあ歩きながら話しましょう。」
「台湾でプロとしてやっていこうか、それともまだ学生のままでいるか、今思案している所です。」
「X:昨日はごめんね。ぼくの留守電ダイヤルにはポケベル機能が無くてさあ。やっぱり携帯買わなくちゃ。」
「H:PHSは?」
「X:周波数のせいか強さのせいか、直径100mの範囲にしか電波が届かない上、まだろくにアンテナも立っていない台湾のPHSなんか誰が買うよ。」
「Q:おまけにコンクリートジャングルだしねえ。」