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   〜暗殺者の憂鬱〜

 腕利きのアサッシン・ヴェガは……その表情からは一切の事をうかがえなかったが……途方に暮れていた。西部諸国が平和になってきたのである。勿論、平和な国々に暗殺者など要らない。ヴェガは養女の養育に命をかけている。だからこそ、もともとそこまで情勢が不安定ではないという条件で『ヤツ』に移民先として紹介されてきたのだが、それはそれで困る。同業者達は既に動乱の激しい東部に移っていっている。だが、娘の為にはよくない。しかし、商売はあがったりである。商売あがったりはヤバイ。困る。娘が育てられないからだ。ヴェガは……何も喋らなかったが……非常に悩んでいた。
 そこに『ヤツ』が再び現れた。とある冒険者たちの一行に雇われるという仕事を持って来て。ヴェガは一も二も無く引き受けた。……後になって死ぬほど後悔したが。
 そしてそれでもやはり、ヴェガが何を考えているのか端からはうかがい知る事はできなかった……。







〜若当主の悲劇〜    

 ジェラルドは絶体絶命の危機に瀕していた。ただでさえ沢山居た筈の兄弟達が皆“消え”てしまい自分しか残っていない為耄碌した父親の面倒に悩まされており、しかもその後を継ぐ事になっていて苦悩の日々を送っていたというのに、とどめがこれである。自宅に訳の分からぬ奴らが乗り込んで来たのだ。言っている事が支離滅裂で今一理解不能だが、要するに自分を倒しに来たらしい。ジェラルドは自問した。何故だ。どうしてだ。何故私が!!普通ならこんな意味不明の輩どもはさっさと追い返すが、一番困っているのは奴等が異常に強い人間達である事だった。恐い。ヤバイ。母上ーッ!!
「この人殺しめーッ(泣)!!」という彼の悲鳴は

『お前は人間じゃないッ!!』

という神速のツッコミに妨害された所為で、『私は半分は人間なんだァァ』というその先を続ける事ができなかったのだった……。







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