腕利きのアサッシン・ヴェガは……その表情からは一切の事をうかがえなかったが……途方に暮れていた。西部諸国が平和になってきたのである。勿論、平和な国々に暗殺者など要らない。ヴェガは養女の養育に命をかけている。だからこそ、もともとそこまで情勢が不安定ではないという条件で『ヤツ』に移民先として紹介されてきたのだが、それはそれで困る。同業者達は既に動乱の激しい東部に移っていっている。だが、娘の為にはよくない。しかし、商売はあがったりである。商売あがったりはヤバイ。困る。娘が育てられないからだ。ヴェガは……何も喋らなかったが……非常に悩んでいた。
そこに『ヤツ』が再び現れた。とある冒険者たちの一行に雇われるという仕事を持って来て。ヴェガは一も二も無く引き受けた。……後になって死ぬほど後悔したが。
そしてそれでもやはり、ヴェガが何を考えているのか端からはうかがい知る事はできなかった……。
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