借金の返済は後回し
最近、会社の近くに、日本レストランが出来た。ロッテルダムでは画期的な事です。なにしろ、これだけ大きな街でありながら、いままで一軒しかなかったのですから。
値段もちょっと高いので、毎日行けるようなものではありません。
でも、それまでは、ちゃんとした和食にありつけるのは、せいぜい月に1回程度だった私も、週に2回くらい行ってます。 とんかつ定食などを食しながら、店にある、日本の雑誌なんかを読むのが、ささやかな楽しみであります。
お陰で、最近の、日本の政治経済の情報にも、関心が高まってきました。今日読んだ雑誌の記事で、日本の金融機関危機救済のために、10兆円(だったかな?)のファンドを政府が用意してあげましょう、という話があった。
ちょっと聞くと、なかなかいい話なんだが、まてよ?そんな金どっから出るんだ。
預金者の救済が第一、そのために政府は緊急措置をとる、という口実だった。
気になったので、今日、インターネットで関連情報を少し漁り、自民党のHPから、「緊急金融システム安定化対策本部」という、長い名前の資料を読んだ。
早い話、赤字国債をどんどん出して、問題解決を先送りにするだけの話だ。(と、私は思う)
赤字国債って何?という人もいるでしょう。要するに、政府は国民から、集めた税金の範囲内で予算をたてるのが、本筋。でも、足りないこともある。そこで、国が国債という名前の借金の証書をばらまいて、投資家からお金を借りる。
この国債には、前向きに道路整備するとか、ダムを作るとかの目的で発行する、建設国債という、まともな借金と、単純にお金が足りないから発行してその場をしのぐ、赤字国債の二通りがあります。
個人の家計で喩えるなら、住宅ローンは建設国債。
遊ぶ金が欲しいから、サラ金で来月の給料日まで、つなぎに借りるのが、赤字国債。
ところが、日本政府は、来月の給料日どころか、返せる見込みもないのに、10年、20年の借金を赤字国債という手段により、自転車操業を始めてしまったのです。
大蔵省主計局のデータを、インターネットで拾ってみた。
平成9年度の日本の、GDP見通しは、515兆円。
一方で、国債、地方債等の、債務残高合計は、476兆円です。
これは、如何に恐ろしい数字でありましょうか?
国中で、一年に生産するすべてのものの、価値に追いつくような借金を抱えているのです。
20年先に、政府が借金を返せないとなったら、何が起るか?簡単です。また借り続けます。金利もつくから、雪だるま式に増えます。最後には、バブルがはじけるのと同じで、国家が破綻します。
20年というのは、世代が交代する期間です。親が今日遊ぶかねがほしくて、借金をして、子供に将来返済させよう、というのが、今日の日本政府の財政です。
それをなんとか、金利くらいは払えるように、消費税を引き上げしてみたり、年金の支払いを止めたりする事は、目に見えています。
消費税の引き上げにあたり、国民に対して、
「これこれの為に、これだけ使うから税金上げます」というわかりやすい説明があっただろうか?
こどもがお小遣いをねだる時だって、嘘でもなんとか理由を説明するぞ。
先の、「金融システム安定,,,」から引用すると、
【わが国の金融機関に大しては、経営陣の出処進退が不明確、役職員の給与が高水準、福利厚生が過大、過剰不採算の店舗を温存、、 (中略)自らに対する批判を謙虚に受け止め、責任ある経営体制を整備し、徹底したリストラを行う、、、、】
10兆円の金をつぎ込む前に、はっきり落とし前つけるべきは、バブルのつけをいまだに、処理していない銀行証券の幹部は、総辞職すべし。
肩書きの偉い人ほど、発言に危機感が感じられない。
都市銀行は4つもあれば、充分でしょう。預金者の保護は万全を期し、潰れる銀行はどんどん、つぶすか合併統廃合して減らさないとだめです。
あの英国だって、大商業銀行は4つ。ドイツも4つ。フランス3つ。オランダ3つ。
地銀だって、県下に二つで結構。
役人だって、どんどんリストラをやれ。橋本内閣の行政改革は腰砕けにおわってしまった。本当にがっかりした。
国債で借金をつくる前に、役所はまじめに民間企業なみの努力を、血を出す覚悟でやらないと、いくら金があっても足りない。
会計検査院なんてものは、どっちみち機能していないことが、よぉくわかった。
民間の監査法人に、是非中央官庁の監査をやってもらいたいもんだ。
通産省の役人が産業を指導する時代は、もう終わり。
民間に見習ってみたらどうだろうか。主要ポストは、ヘッドハンターを使ってでも、民間で実績を上げた有能な経営者を採用して、キャリアの制度をぶっこわさないと、だめです。
大蔵の銀行監督局の、ぼんくら役人は、バブル以来、一体世の中の為になる仕事を、どれだけしたのだろうか?銀行の抱える不良債権の実態をどれだけ、把握しているのか?
本当に監督する立場にあるのなら、もっと早く銀行業界の健全化に取り組まなかったのか?
このまま、政府が何も手を打たず、金融システムがずるずると、国際社会での信用力を失うと、経済の失速はまだまだ続き、どん底まで落ちるのは、間違いない。
団塊の世代と言われる、現在日本の経済の中核をなす人たちが、現役を引退して年金受給者になるころ、次ぎの世代は、先代がつくった、借金の山のツケを払うはめになる。金融活動が活発化しなければ、生保だって運用実績があがらず、生命保険すらちゃんと支払われるかどうかも、わからない。
もう、どこからも金は出ない。増税にも限度がある。日本政府が債務不履行に陥るんじゃないかと、私は今から危惧している。
もう、経済大国という呼び方は、過去のものになっているかもしれない。
G7とよばれる、先進国会議がある、米英獨仏伊加日の7カ国だ。
私の記憶に間違いがなければ、当初70年代の石油危機の時に、当時のGDP規模でのベスト7の大国が集まって、国際的な経済協調を確認したのが起りだ。
それから20年あまりたち、この順位も相当入れ替わっているはず(残念ながら資料がないので断言できないが、イタリアがいまでもベスト7に入っているとは思えない)。
あと15年もして、GDPランキングでメンバーの再編成をしたら、日本の代わりに中国が加盟しているのは、間違いないと思う。
©1998
copyright Hiroyuki Asakura