カノンとでっぴーのカノン、の巻:序章


それは双児宮の奥深く・・・宮の住人達が作り出す幻想の迷路の中の異空間での出来事・・・




 時はおりしも聖バレンタインを讃える日の夜。双児宮のお茶の間では、この宮の居候・本職はシードラゴンの海将軍(現在失業中)、パートの双子座の黄金聖闘士代理、カノンがTVを見ていた。
 しかし、金曜日の夜なんて、大した番組なんてやっていない。しかもバレンタイン・デーともなると、恋人達はベイ・フロントの洒落たレストランで、キャンドル・ライトに照らされた互いの瞳を見つめつつ、ロマンティクなディナーの真っ最中だろう。

「ちぇ、つまんね〜」
ポテトチップをばりばり齧りながら、小一時間ほどもチャンネルをかちゃかちゃ変えていたカノンは、とうとうリモコンを放り出してしまった。
「ったく、マトモなもんはなんにもやってないのかよ」
忌々しげに立ち上がり、冷蔵庫の中を探る。
「ビール、ビール・・・けっ!切れてやがるぜ!!とことんツてないなぁ・・・」

 あ〜あ!と溜息ついて、ボリボリと頭をかき、まだ寝るには早いしなぁ、と、カノンは、下界にナンパに出かけなかったのを、しみじみ後悔した。しかし、独身男のむさくるしさ全開モードのカノンがふてくされている茶の間から、ちょっと歪んだ次元を隔てた隣の空間では、恋人達がロマンティックなひと時を楽しんでいたのである。



本編へと続く



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