芳香族化合物の中で、一番しょっちゅう出題されるのが、このサリチル酸ではないでしょうか。
カルボキシル基とフェノール性水酸基を両方持っているので、かなりややこしい反応をし、またサリチル酸から重要なお薬が合成できるなど、実用的な面もあるためです。
ややこしいですが、酸の強さが、
< H2CO3 <
< H2SO4
ですよね。という事は、十分強い塩基であるNaOHを加えれば、強い酸であるカルボキシル基もとても弱い酸のフェノール性水酸基も、どちらも反応できます。
しかし、弱塩基であるNaHCO3を加えると、事情はややこしくなります。
この場合、カルボキシル基は酸が強いので、相手がNaHCO3でも反応します。
しかし、フェノール性水酸基は酸が弱いので、弱いNaHCO3とは反応できません。
言い方を変えますと、万が一弱いフェノール性水酸基と弱いNaHCO3が中和反応をしたと仮定しますと、
ですよね。これだと中和によって酸が−OHからH2CO3に強くなっている。 中和して酸が強くなるなんておかしいでしょ?
だから、フェノール性水酸基はNaHCO3とは反応できません。
「アスピリン」の名前で商品化されている、有名なお薬です。解熱鎮痛剤ですね。
名前の「アセチル」は「酢酸」を意味しますので、アセチルサルチル酸はサルチル酸と酢酸が反応した事を意味しています。
サリチル酸の水酸基に、酢酸がエステル結合したものです。
これもお薬として重要な物質です。
名前の「メチル」は「メチルアルコール」を表しています。
メチルアルコールがサリチル酸のカルボキシル基にエステル結合したものがこれです。