光降る街の隅で
Dancing with the Evil King


リーナスは、何が起きたのか理解に苦しんだ。
ただ、気が付いたら、自分の体が氷の檻に捕らわれていた。それだけである。
しばらく、呆然と立ちすくんでいたが、序所に怒りが込み上げてくる。

「何するのよ!止めなさいよ!」

かっと頭に血が上り、無駄だとは分かっていても、わめかずにはいられない。

「捕らわれの姫というシチュエーションも、お好きかと思いましてね」

ディファンは、のどの奥を鳴らして笑った。
こうやって、リーナスをからかうのは、ディファンの趣味であり、ストレス発散である。
よって、その事に関して、ラルフォンが口出しする必要はなく、またその権利もない。
頭の中で、一人納得して、ラルフォンはため息をついた。
どうでもいいから、足の術を解いて欲しい…と。
しかし、ディファンはリーナスをからかうことに夢中で、その事など気にもとめていない。
いや、仮に気にとめていたとしても、しばらく術を解く気はないのだろうか。

「鬼!悪魔!」

「そりゃあ、私も魔族ですからねぇ」

リーナスの言葉をさらりとディファンが受け流す。
リーナスの額に浮かぶ青筋が、数を増す。
爆発寸前…といった様子だ。

「私の知っている魔族たちは、皆いい人だわ!お邪魔虫以外はね」

そりゃそうだろう…と、ラルフォンは心の中で呟く。
何しろ、魔族たちは魔王に絶対服従。
その魔王が、人に対して友好的なのだから、当然他の魔族たちも魔王にならう。
そのおかげで、今現在は、魔族と人の間に争いは全く起こっていない。
それどころか、人と共存する魔族もいるくらいだ。
ディファンとて、人に対して敵対心を持っているわけではない。
逆に友好的だからこそ、リーナスをからかうのだ。

「なんか…あきてしまいましたし…。さて、ラルフ様、参りましょうか」

ディファンは、ラルフォンの足にかけていた術を解くと、リーナスに嫌な笑みを向けた。

「さ、行きましょう」

今度は、ラルフォンに向かって微笑を浮かべる。
半ば強引にディファンに連れられながら、ラルフォンはリーナスに目をやった。
そして、そのまま宙に視線を移す。

「ディファンの術なら、一時間程で解けるようになっているから。…まあ、自然に解けるのを待つまで もなく、術を破る事もできるだろうけど」

誰もいないその空間を見て、ラルフォンは微笑を浮かべて、声を上げた。
ふと、ディファンの足が止まる。
そして、後ろを振り返り、頭を押さえた。
リーナスも、二人と同じように宙に目をやってみるが、何も見えない。
少し考え込み、やがてリーナスは答えを見つけた。

「ローラ、いるの?」

「はい、いますよ、勇者様」

ふわりと花の香りを乗せて、ローラと呼ばれた魔族が姿を現す。
ウェーブのかかった、長い栗色の髪を風に靡かせ、ローラは優しく微笑んだ。

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