光降る街の隅で
Dancing with the Evil King


人を愛することで傷付いて、自分から愛を捨てる事に慣れてしまったラルフォンには、ローラのその喜びがどうしてもわからない。
人を愛する喜びを、教えてくれる人はいなかったのだから。
ラルフォンの母親は、ラルフォンの父親…つまり前魔王を心から愛していた。
それは、母親と話をしていれば、よくわかる。
けれど、愛する人に先立たれてしまった悲しみは、彼のことを心から愛してしまったからこそ、深いものではないだろうか。
一度、その考えを母親に漏らしたことがある。
しかし、母親は、そんな考え方もあるのね…と言って笑っただけだった。
結局、自分の知りたい答えは、母親の笑顔に消されてしまい、曖昧な答えを手に入れただけで、それ以上、何も言えなくなってしまったのだ。

「ローラ。どうして教えてくれなかったの?お邪魔虫の事!」

ローラは、踊りを止めてリーナスの顔を見詰めた。
そのまま、ラルフォンに目線を向ける。
しかし、自分の世界に入り込んでいるラルフォンは、その視線に気付かなかった。

「経験上、言わないほうがいいと思いまして」

昔もそうだったから…言葉には出さない…いや、出せない呟きは心の中にしまって、ローラは優しい笑顔をリーナスに向けた。
昔は、ただ本当にからかっていただけ。けれど、きっとリーナスに対しては違うだろう。
少しでも、ラルフォンから離れて欲しいから、その為にならディファンは必要以上に意地悪になる。
結局、最後に傷付くのはラルフォンなのだ。それならば、なるべく早い時期に全てをおわらせてやりたい。
ローラにも、ディファンの気持ちはわかっている。
しかし、それが正しい事なのか、ローラにはわからなかった。

「そりゃあ、あれがローラの子供だったなんて、正直ショックだけど…。だけど、ローラもショックじゃなかった?私、ローラにはあれの悪口沢山言ったでしょ?」

「そうですねぇ…勇者様がディファスと会って、どういう反応を示すかは、大体予想がついていましたから。勇者様が魔王様にお会いしたと聞いてから、あの子と会うこともわかっていましたしね」

全てわかりきっていた悪口でしたから…付け足して笑ったローラの笑顔は、それまでの笑顔よりも暖かいものであった。
母親の暖かさと優しさが滲み出している笑み…というのだろうか。
自分に対して、母親が向ける笑顔と同じだ。
ラルフォンの母親はどうなのだろう。リーナスは、ふと思って、考え込むラルフォンの顔をしたから覗きこんだ。

「……なんだ?」

「ん?ラルフのお母さんってどんな人なのかなぁって思っただけ。だって、これでお邪魔虫のお母さんはわかったけど、ラルフのお母さんの話って聞いたことないんだもん。きっと、美しい人なんだろうねぇ」

「…確かに美人ではあるけど、お前の思っているような母親ではないと思うな」

ラルフォンは、軽く息をついた。

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