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臭くて美味い食べ物列伝

草莽工房庵主敬白

緒言

美味い食べ物には何故臭いものが多いのか?
臭い食べ物は何故美味いのか?
不思議に思ったことはありませんか?
私は以前からその点が気にかかり、いろいろ愚考してきたのだが、つい旅行などでは積極的に臭いものを食べようとするため、どうも最近変人扱いされるようになってしまった。

(その経緯について詳しくは「臭いもの好き誕生の巻」参照)

ええい、そうなったら、逆に開き直って、臭くて美味い食べ物の専門家になってやるぞ!と考え、少しずつ研究をはじめている。まあ、駆け出しでありますが、よろしくお願いします。乞有力情報!!

1.発酵系


(1)魚類

スウェーデンのスールストレーミングから東南アジアの魚醤なれ鮨類、中国の鹹魚(シェンユイ)、日本のくさや、鮒鮨、塩辛・・・など

(魚類発酵系については詳しくは「魚醤と塩辛類について考える」参照)

(2)鳥獣類

中国の金華火腿(金華ハム)がにおうが非常に美味いものとして有名だが、熟成させるという意味では、ハムやソーセージをはじめ鳥獣肉の各種保存食品も含まれてしまう。また、中国のピータンや鹹蚤(シェンタン)、ベトナムのホビロンなどは卵類を発酵させたもの。

(3)乳類

酪農遊牧世界に広がるチーズ類が代表的でブルーチーズ、マンステールチーズなど多くの種類がある。
バター類も結構臭いものがある。ケニアの発酵乳などは発酵させて飲む乳類で、モンゴルの馬乳酒などは、それが酒に至ったものである。

(4)植物系

まず、豆が原料のものが多い。中国を中心とする腐乳・臭豆腐・味噌・醤油類、沖縄の「豆腐よう」などは大豆発酵グループと言えようか。それに、納豆(日本)・テンペ(インドネシア)・トゥアナオ(タイ)・キネマ(ネパール)・ダワダワ(アフリカ)など納豆菌専門グループとでも言えるものが世界中にある。
なれ鮨に使う米も発酵させて食べる穀物である。
もちろん、野菜を発酵させるという意味では、中国の臭芋、臭冬瓜をはじめとして、日本のすんきやネパールのグンドラック、朝鮮のキムチなどの世界中の各種の独特のクサイ漬物類を忘れてはならない。

(5)酒類など

発酵を突き詰めるとアルコール化してしまう。日本酒などは麹という穀物にカビをはやしたものを使うが、こうしたカビなどの糖化酵素を利用して発酵させるのである。これが酒であり、その酒臭さを嫌う人も多い。いうまでもなく世界中に無数の種類がある。 原料は植物性が多いが、膨大な種類があるため酒類として別に扱うほうが自然だろう。
その他、よくよく考えてみれば、アルコール類をさらに酢酸発酵させて作る醸造「酢」こそ究極の発酵食品といえるかもしれない。

2.非発酵系


ところが発酵という手段を経ずして既に臭くて美味いものもある。これは分類して論じるほど私の頭の中で整理されていないので思いつくままに述べる。(ただ、クサイという表現が、発酵系のニオイだけに用いられるものではないことだけは確かである。)

まず、頭に浮かぶのはドリアン――果物の王様の臭さは見事である。ほとんどの人が悪臭と感じるだろう。ところが、ある人には悪臭であっても、別の人には、それが全然気にならないという「ニオイ」があるから話がややこしくなる。例えば、同じポピュラーな果物類でも、パパイヤは臭いと言う人と気にならない人にわかれる。確かにわずかなアンモニア臭があるのだが、それがダメという人がいるわけだ。トロピカル・フルーツには、クセのある味のものが多い。マンゴー類や釈迦頭、サポジラ、グアバなども苦手という人も結構いるが、逆にそのクセがたまらないという輩も多い。

そういう意味では、さらに「青臭さ」や「魚臭さ」が好き嫌いのある典型だろう。
実際、青臭い(ウリ臭い?)というのでキュウリやメロンが苦手という人も結構いる。青臭いと言えば、青汁は嫌いな人のほうが多いだろうが大好きという人もいる。山菜やハーブ類の香りが青臭くてダメという人もたまにいる。
磯臭い香りも好き嫌いがある。ホヤがその最たるものだろうが、アイゴなどの磯魚がダメという人がいる。中にはウニが磯臭いといって食べられない人もいる。
西欧系の外国人には、緑茶の香りをfish-smell(魚臭い?)といって嫌う人がいる。一方、東洋人には牛乳などを「乳臭い」といって嫌う人もいる。
無論内臓ホルモン類も良い臭いとは言えないし、各種鳥獣肉の臭さも毛嫌いする人が多い。蛇類や野鳥、野獣類のみならず世界的なメジャーな肉である羊肉も日本人には臭うから嫌いという人がいる。
食べ物ではないが、匂い製品の極限ともいえる香水だって、大いに好き嫌いがある。特に森の香りや皮系の香りは、嫌いという人が少なからず存在する。

結語


こう並べてみると万人に良い匂いと思われているものは、結構少ないようである。食べ物に関して言えば、むしろ多少クセのあるものの方が、病みつきにさせる美味さを有しているように思われる。ただ、臭くて美味いものは大好きなひとも多いかわりに、嫌いな人が必ずいる。これは、まさに個性的な人間のありかたと同じようだ。本当に「人間くさい」話ではある。

私は幸いにして、一般的な食べ物に関しては好き嫌いがなく、なんでも食えるタイプだが、どちらかといえば、魚・植物系が好きで、獣臭い食べ物はやや苦手である。やはり、アジアモンスーンの漁労農耕民族の血が流れているのであろうか?

Ver 1.02 (1999.5.18更新)

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