〜まちづくりプランナーと呼ばれる人々〜
エッセイ第2回では、私の考える「職業としてのまちづくりプランナー」について、アメリカまちづくりプランナー協会(以下、AICP)の資料を引用しながらお話しします。同協会は、「まちづくり」及び「職業としてのまちづくりプランナー」の発展を目的とした、まちづくりプランナー(=専門家)の自主組織であり、アメリカまちづくり協会の内部に置かれています。AICPの会員になるには、同協会が毎年一度実施する認定試験に合格した後、同協会の倫理及び専門家行動規定を遵守せねばなりません。
「まちづくり」という住民主体の行為に、そもそも専門家は必要なのか? 必要であれば、専門家はどのような資質が必要か?そして、どのような役割を果たすべきなのか?以下では、これらの問いへの解答を、認定試験の内容と「倫理及び専門家行動規定」を参考に考えます。
認定まちづくりプランナーは総合的な--「つながり」を扱った-- まちづくりの経験を持つ。「つながり」とは、私の考えるこの文章のキーワードは、「つながり」と「コミュニティを長期的な目標へ誘導」の2つですが、これではあまりに抽象的ですね。以下では認定試験の内容について、もう少し具体的に調べてみます。などの関連性を意味する。そして、認定まちづくりプランナーは、現在のコミュニティの問題への解決策を、コミュニティを長期的な目標へ誘導するような方法で見い出す技術を持っている。
- 交通と土地利用
- 住宅とオープンスペース(公園、緑地、空地など)
- 環境保護と経済発展
- ゾーニングと社会基盤整備
学位 | 合計実務経験 |
---|---|
認定まちづくり修士号 | 2年 |
認定まちづくり学士号 | 3年 |
その他の修士あるいは学士号 | 4年 |
学士号なし | 8年 |
日本には、まちづくりに特化した大学プログラムは数校にしかなく、まちづくり教育の殆どは建築や土木などのプログラムの一部として行われています。しかし、アメリカにはまちづくりのプログラムを持つ大学あるいは大学院は数多くあります。プログラムの認定はAICPが行っており、同じプログラムでも内容の変化によって認定が取り消されることもあります。
一方、実務経験(教育・研究を含む)は、単に年数の規定を満たすだけではなく、内容に関する以下の4条件を全て満たさねばなりません。
興味深いことに、AICPでは「まちづくりの実務経験」に数えられない仕事として、以下のものをわざわざ列挙しています。狭義の技術・専門性が重視される仕事、公共の利益よりも特定の個人あるいは団体の利益を優先しがちな仕事は、まちづくりプランナーの主な仕事ではない、という強い主張が窺われます。
書類審査に合格したら、3時間で150問(4〜5択形式)の筆記試験を受けねばなりません。出題範囲は、「まちとまちづくりに関する全ての事項」という恐ろしく広範囲なものです。広く浅い知識が求められているためですが、一方で「この状況ではどう行動すべきか?」という倫理的判断を問われるシナリオ型の問題が多いのも特徴です。なお、AICPは大学卒業直後の人の方が、卒業後に長く実務を積んだ人よりも合格率が高くなっています。試験に合格するために、実務を中断して大学院に入り直す人もいるくらいです。この理由は、1)3時間という体力勝負な試験であること、2)広く浅くの出題傾向のため暗記力が必要なこと、3)清濁合わせ飲んだ実務経験よりも、倫理性への純粋な信念が重要であること、などでしょう。
これらの条件により、アメリカでは、「公共の利益に関わる公的な意志決定」を「総合的かつ適切に」支援せねば、まちづくりプランナーの実務経験とは見なされません。従って、どんな職業にも要求される専門知識や判断力などの一般的資質に加えて、まちづくりプランナーにはジェネラリストとしての総合力と、公共利益を扱う倫理性が不可欠です。
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