住民参加型の意思決定プロセス

メトロの意思決定プロセスの最大の特色は、あらゆる局面での住民の参加が徹底して行われていることです。勿論、最終議決権は議会にあり、政策検討および立案は専門技術を持つ職員を中心に進めらますが、そのプロセスは行政主導ではなく、住民協議に基づく大変ダイナミックなものです。ポートランド地域では伝統的に住民自治が根付いている上に、憲章も州の土地利用法も住民参加を条文に盛り込んでおり、かつ一部のプロセスは憲章で明確に義務づけられているためです。具体的な住民参加の方法は以下のようなものです。

メトロ諮問委員会

諮問委員会は議会、知事、そして職員に対する様々な勧告、助言を行うものです。メンバー構成は各委員会の目的により様々ですが、メトロの知事や議員、職員も出席して、隔週程度の頻度で集合しています。現在、設置されている12の諮問委員会に関する説明を下に添えました。なお、諮問委員会は市民参加室(Office of Citizen Involvement)によって、運営されます。

メトロの会議への参加、および資料の公開

議会から日常の職員の打ち合わせまで、全てのメトロの会議は住民が自由に参加することが認められています。特に、議会や諮問委員会では住民が証言を行う時間が必ず設けられており、それを受けて職員への詳細な作業支持が出されます。また、メトロは住民に請求されれば、全ての資料を公開する義務があります。これらの情報公開は法律で義務づけられています。

住民ワークショップ

メトロ職員は計画の初期段階から住民を対象にしたワークショップを管轄地域のあちこちで開き、住民のニーズを探り、また計画への支持を取り付けていきます。通常のワークショップでは、150〜300人位の住民が参加します。これらのワークショップには、知事や議員も普段着で参加します。また、重要な意思決定の局面では、議員主導で住民ヒアリングを行うこともあります。これらは全て自発的に行われており、法律で規定されているものではありません。

世論調査

メトロは頻繁に住民への世論調査を行い、住民のニーズを探り、また計画への支持を取り付けていきます。マスコミ(テレビ、ラジオ、新聞など)、人の集まる場所でのパンフレット配布、郵便、電話、FAX、インターネットなど、考えうる全ての手段を用いています。先日の調査には、11,500もの住民が回答を寄せました。これらは全て自発的に行われており、法律で規定されているものではありません。


高度にシステム化されたメトロの意思決定プロセスは、内外から高い評価を受けていますが、決して完璧なものではありません。まちづくりにおいては、全ての人が欲しいものを手に入れることは不可能ですから、自分の考えが反映されず不満を持つ人も存在します。例えば、都市成長境界線の指定問題だけを取ってみても、メトロは20を越える住民グループからの訴訟を抱えています。もう一つの問題は、住民参加がシステム化されるにつれてルーティン化してしまい、かつての民主的ダイナミズムは失われつつあることです。実際、一部のNPOや住民グループは市民参加のプロとなり、「市民参加のための市民参加」が行われている場面も見られます。

少数意見への配慮は不可欠であるとはいえ、まちづくりの原則は大多数の住民の利益の追及です。統計的に信頼できる与論調査によって、メトロの計画は多くの住民に支持されていることが実証されている以上、現在の計画の方向性は間違えていないと私は考えます。そして、今後重要なのは、さらにプロセスを改善し、計画に少数の声を反映していく作業です。先日、監査役からメトロの都市計画プロセスは、もっと信頼性を上げる余地があるという旨の報告書が出され、住民の間でも注目されています。こういった自浄機能がメトロに存在し、地域内でメトロの機能(時には存在意義そのもの)に関する議論が継続的に行われている事実は、ポートランド地域における住民自治の成熟の証拠であると思います。

参考:都市成長境界線拡大の意思決定プロセス


<メトロ諮問委員会>

諮問委員会は議会、知事、そして職員に対する様々な勧告、助言を行うものです。メンバー構成は各委員会の目的により様々ですが、メトロの知事や議員、職員も出席して、隔週程度の頻度で集合しています。現在、設置されている12の諮問委員会は以下の通りです。

メトロ政策諮問委員会
(Metro Policy Advisory Committee=MPAC):

自治体の首長や市民の代表から成る24人の委員が、メトロ議会に対して、フレームワーク・プランに関する助言を行い、またメトロから自治体への規制や指導の承認および棄却を行います。MPACは憲章で設置が義務づけられています。

メトロ技術諮問委員会
(Metro Technical Advisory Committee=MTAC):

都市計画の専門家、市民および産業界の代表から成る24人の委員が、メトロ政策諮問委員会に対して、詳細で技術的な支援を行います。

メトロ市民参加委員会
(Metro Committee for Citizen Involvement=MCCI):

27人の市民が、メトロの市民参加プログラムの開発、実行および評価を支援し、そして地域計画に市民が参加する最善の方法を助言します。MCCIは憲章で設置が義務づけられています。

交通合同政策諮問委員会
(Joint Policy Advisory Committee on Transportation=JPACT):
自治体の首長や交通関連部局長などから成る17人の委員が、メトロ議会に対して交通政策に関する勧告を行います。

メトロ交通政策代案委員会
(Metro Transportation Policy Alternatives Committee):

JPACTへ対して、交通計画、優先順位および財源に関する代案を提出します。

地域交通計画市民諮問委員会
(Regional Transportation Plan Citizen Advisory Committee):

21人の委員が、地域交通計画に対して広範な角度からの視点を提供します。

南北交通軸市民諮問委員会
(South/North Transit Corridor Citizen Advisory Committee):

19人の委員が、ライト・レール(MAX)南北線運営委員会に対して、ライト・レールに関する政策や問題を独自に勧告します。

地域環境管理諮問委員会
(Regional Environmental Management Advisory Committee):

25人の委員が、既存の固形廃棄物計画とその実施状況を審査し、新しい政策を評価し、そして勧告をメトロ知事と議会に提出します。

地域公園緑地諮問委員会
(Regional Parks and Greenspaces Advisory Committee):

11人の市民が、メトロ地域公園緑地局の方針、計画、プログラム、料金、予算に関して助言します。

緑地技術諮問委員会
(Greenspaces Technical Advisory Committee):

公園管理団体の代表と公園に関する専門家が、地域緑地総合計画の実施に関する助言をします。

スミス・アンド・バイビー湖管理委員会
(Smith and Bybee Lakes Management Committee):

近隣団体、支援団体、環境団体、資源部局などの代表から成る10名の委員が、ポートランド北部の800haの野生自然地域の管理に関して助言します。

水資源政策諮問委員会
(Water Resources Policy Advisory Committee):

上水および下水供給公社、環境団体、連邦および州の天然資源部局の代表代表から成る20名の委員が、メトロ議会に対して水資源に関する助言を行います。

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