1997年10月23日のメトロ議会において、都市成長境界線を1,600〜1900ヘクタール(4,100〜4,800エーカー)拡大するという法案が5対2の賛成多数により議会決定されました。この決定は、メトロを中心に自治体、住民、環境グループ、産業など、メトロ地域の土地利用に利害関係を持つあらゆる団体を巻き混んで、長年に渡り白熱した議論を踏まえたものでした。そして、メトロ地域のまちづくりプロセスを凝縮したものでした。 議論にあたって考慮すべき事項には、
ここで重要なのは、各主体がデータ再検討や都市計画および不動産に関する研究を行ない、問題の再整理と解決策の提案を理論的に行なったことです。それぞれの価値観が異なることは皆が理解した上で(モリセット議員の口癖は「思想的な違い」でした)、異なる意見に対してはあらゆる機会を活かして理性的な説得を試みたのです。コンサルタントや職員を挟んだ打ち合わせ、公聴会、諮問委員会、議会証言などは勿論、新聞の社説や投書欄なども議決直前はこの問題一色でした。それぞれの主張の隔たりは大きく、結局歩み寄りの無いままの議会投票でしたが、問題の認識が広まったことは確実です。そして、この議論は論点を住宅問題に移しながら継続されており、12月11日のフレームワーク・プランの議会制定にも大きな影響を与えました(この件は、後日追記します)。 私は、このプロセスを大変高く評価しています。まちづくりは常に政治と科学の間で行なわれており、科学だけで正解を出せるものではありません。しかし、政治的な問題を可能な限り科学的に議論するという発想は、異なる価値観を持つ人々の間で議論を行なう際には不可欠ですし、これなしでは今後のまちづくりに関する科学の発展もありません。実際、このプロセスから住宅政策に関する議論が大きく深化しました。もう一つ見落としてはならないのは、最終決定権は直接選挙で選ばれた議会にあった点です。各議員は支持団体や選挙区民の要望に応えるのは、次の選挙で落選させられないためにも当然ですが、24市および3郡を管轄する地域政府メトロの議員の立場では、地域全体の利益を考慮せざるを得ません。そのため、時には選挙区民に反対してでも、自分が正しいと信じる票を投じる場面が出てきます。これも、責任の主体が明確であり選挙という洗礼がきちんと機能していることの証明です。政治的駆け引きがあるのは世界中どこも共通です。ただし、駆け引きのルールに関しては、日本がアメリカから学ぶべき点は多いと思います。 参考までに、ジ・オレゴニアンに寄せられた各議員の声をご紹介します。選挙区の特色や支持団体を見れば、投票の賛否は明らかです(ちなみに、今回の反対票はいずれもがより大きな拡大を求める立場のもので、より小さな拡大を求める反対票はありませんでした)。
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スーザン・マクレイン議員:(賛成)
ドン・モリセット議員:(反対)
ジョン・クヴィスタッド議員:(反対)
エド・ワシントン議員:(賛成)
リサ・ネイトー議員:(賛成)
パトリシア・マッカイグ議員:(賛成)
ルース・マクファーランド議員:(賛成) なお、責任を果たした議員達は、投票後は皆笑顔で退出しました。 |
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