メトロの都市計画:「地域2040」

メトロの都市計画は、1973年のオレゴン州土地利用法によって、総合土地利用計画を策定し、都市成長境界線を設定および管理することが州内の自治体に義務づけられた時から継続されています。その後、自治憲章によって土地利用計画権限が更に強化され、また経済の上昇により開発圧力が高まった1990年代前半より「地域2040」と呼ばれる一連の計画作業が進められています。

「地域2040」およびフレームワーク・プラン(後述)の計画内容の概略は以下のとおりです。

  • 田園地域の土地の保全
  • 公共交通軸の周辺にコンパクトな開発を推進し、新規の土地開発を抑制
  • 既存の近隣の保全
  • 都市成長境界線内部における恒久的オープンスペースの整備
  • メトロ管轄エリア外の近郊コミュニティとの協同
  • 災害への相対危険度が高い地区を開発対象地域から除外

上記の計画内容は地域住民の価値観を反映したものであり、見直しをせずに日本に応用することは不可能です。例えば、ポートランドの「高密度」は日本では「低密度」に相当しますし、公共交通の利用度は日本の大都市部とは比較にならないほど低いものです。しかし、以下にまとめた計画プロセスは大変参考になります。

  • 徹底した住民参加と自治体との調整
  • 手法の検討に先立つ計画目標の明確化
  • 高度な地理情報システムを用いた定量的計画
  • 都市成長境界線の合理的運営による都市成長管理
  • 財政的フィージビリティの十分な検討
  • 都市成長管理実施計画と実行基準による明確な実施スケジュール

「地域2040」の経緯を以下に記します。

1)地域都市成長目標
(Regional Urban Growth Goals and Objectives=RUGGOs) :

州法による土地利用目標の義務づけを受けて、地域都市成長目標が1991年に議会によって制定されました。これは、メトロが地域計画プログラムを定める政策の枠組みと、地区毎の計画との調整プロセスを定めた記述です。

2)メトロ憲章(Metro Charter):
1992年に住民投票で承認されたメトロ憲章は、メトロの最重要任務を地域の土地利用計画と定め、将来ビジョン(後述)と、それを実現するための総合計画であるフレームワーク・プラン(後述)を採択することを義務づけています。一般に、自治体は現在の問題や日々の運営(法執行、消防、道路清掃と整備など)に専念しなければなりませんが、メトロは将来の地域ニーズを予測し、それを受けて計画を立てることを義務づけられたのです。

3)2040成長構想(2040 Growth Concept):
望ましい50年後の地域将来像を検討する基礎資料として、地域2040レポートがピーター・カルソープ事務所の協力により1994年5月に作成されました。この中でメトロは以下の4つの代案を地理情報システムを用いてシミュレーションし、幅広く住民ヒアリングを行いました。

住民は地域の拡大路線(参考、A案)を否定し、既存の都市部の密度を上げる方向(B案)を明確に支持しました。職員はB案に技術的検討を加え、都市成長境界線の拡大を最小限に抑えた推奨案として2040成長構想を作成しました。これは始めて「物理的な」計画の概要を定めたもので、議会によって1994年12月に採択されました。

4)将来ビジョン(Future Vision):
憲章で策定が義務づけられた将来ビジョンは、1995年6月15日に議会で採択されました。内容は2040成長構想を発展させたもので、2040年を想定した土地利用や交通などを含む構想図が初めて示されました。

5)都市成長管理実施計画(Urban Growth Management Functional Plan):
州法に基づいて1996年11月に議会で制定された都市成長管理実施計画は、将来ビジョンを実現させる総合計画の見直し方法(もしも実現が不可能な場合にはその理由)の提示を各自治体に義務づけています。

6)都市化保留地域(Urban Reserve)の指定:
1997年3月に、州法に基づいて
都市化保留地域が指定されました。
(都市化保留地域の地図)

7)フレームワーク・プラン(Framework Plan):
目標年次を2017年とし、メトロおよび自治体が将来ビジョンを実現する方法を明示する総合計画であり、1997年12月31日までに策定することが憲章で義務づけられています。そして、1997年12月11日に議会制定されました。この制定によって、既存の計画文書は全て統合され置き換えられます。特筆すべきは、自治体が満たさねばならない実行基準が定められていることです。これは、都市成長管理実施計画の実行を予測、達成基準、そして評価し、予測どおりに進んでいない場合には再評価を行う方法を規定しています。財政的フィージビリティも重視されています。

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