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18階の窓から眺めた摩天楼に誘われるように外へ出たが、空港で頭痛さえ覚えた寒気は一向に弱まっていない…目立つ看板のハードロックカフェに立ち寄り、ニットのキャップを購入し、被ってみた。暗い硝子に映る自分を見ると、普段と少し違う雰囲気で気恥ずかしい感もあったが、ピッタリと頭を包んで保温性も高いことに気付く…シカゴ滞在中、キャップは活躍することとなった…クリスマスの本番は過ぎたが、華麗な装飾は随所に残っていた… 静かなオフィス街の、摩天楼の谷間でヒッソリと華麗な姿を見せてくれた… |
月が明るい静かな夜だと思いながら、休日で、しかも人が退けた夜のオフィス街を闊歩していると、時々上の方に目が向く…静かな摩天楼群の間に、通り過ぎる車の音や風の音などが反響する…そして空は静かにその音に耳を傾けているかのようである。シカゴのオフィス街には、様々な年代の高層建築が肩を寄せ合うように林立している。それらが登場して以来見上げてきた空の色や、見下ろしてきた通りの光景を思い描きながら歩く…月が明るいだけの夜空のモノトーンは、街灯のセピア色を若干反射している感ではあるが、無制限な色彩を想起させる…そうしていると、北米一の高さを誇るシアーズタワーが眼に留まった。最上階から、巨大なビル内部からの熱を排出している。巨大な建築物の内部の熱供給系統は、巨大な生き物の血管のように建物の中を巡っている筈だ。排出されたものの中の水分が、冷えた上空の空気に触れて白煙のような水蒸気となっている。寒風に耐えながら深呼吸をしているようにも思える… カメラを上空に向けた。決して良い撮影条件ではない。少し遅めのシャッター速度で、相対的に明るく感じられるとは言っても暗い夜空に浮かぶように見える建物を、カメラ手持ち状態で撮るのである。 何度かシャッターを下ろしていると、若者が4人乗った車が通り掛かる。どうやら二組のカップルのようだ…「そこの人!何やってんの?」「何の写真だい?」「UFOか?」と口々に叫ぶ声が、静かな街路に響く。彼らは車の窓から身を乗り出して私がレンズを向けていた方を見ていた。が、やがて叫び声の残響とエンジン音を残して直ぐに過ぎ去ってしまった… この大きな街で、私一人がこの夜空に覗く、寒気の中で呼吸をしているようなシアーズタワーに出会えたような気がした。シカゴの夜空は摩天楼の呼吸する音を聞かせてくれたのかもしれない… |
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