「オードリーが引退表明して選んだ作品」おすすめ度
★★★★★オードリーがこの作品をもって引退を表明、最後に選んだ作品が(それ迄の主演作と比べれば)地味なサスペンスだったことが感慨深い。オードリーのファッションも地味な装い(セーター&スカート)で、品は良いけれど質素な出立ち、写真家の夫との慎ましやかな生活が伺えます。
何だか同時にこの後の私生活での自分の生き方まで表明しているような気さえしてきます。
作品はテレンス・ヤング監督の演出の巧さが冴えわたる秀作です。
ようやく自分のピンチに気が付いた彼女が、恐怖に怯えながらも、部屋中の灯りを消して防衛体制を整える様子は健気で賢くて・・・いじらしくて抱き締めたくなるほどです。彼女の最後のピンチの場面では悲鳴をあげてしまいました。皆様もご注意ください。
「正統派スリラーの傑作!」
おすすめ度 ★★★★★
ヒチコックの映画やこの映画を見ると、いかに映画のプロットや伏線の張り方、小道具の使い方が重要なのかがよくわかる。映画製作を目指す人は一度は見ておくべき、非常によく出来た正統派のスリラー。今、怖い映画というと派手な特殊効果のグロテスクな映画か、後は見るものの精神を追い詰めるような病的なサイコスリラーが多いが、それに比べれば刺激は少ないものの、純粋に娯楽として楽しめる作品だ。ヘップバーンは、はかなげだが、利発で機知に富んだ盲目の女性に扮し、アカデミー賞にノミネートされたほどの名演技を見せる。この映画の出演後、彼女はスクリーンを遠ざかり、10年後の「ロビンとマリアン」までその姿を見せなかった。
「サスペンスの秀作?確かに当時は。 でも今も見方を変えれば、輝き出す。」
おすすめ度 ★★★★☆
まあ、今の基準で言えば決してテンポは速くなく、サスペンスと言うほどのこともなく。現在の刺激の多い映画になれてしまった目には、なんとものんびりしたサスペンスの 「秀作」だ。
と言ってしまうのは簡単だが、映画とはそんなものでもないだろう。あのオードリーがサスペンスに挑む。
彼女の状況や、その時代背景とも合わせてみると、かったるいサスペンスが、俄然輝きだしてくる。
貴方は、この映画をどのように見るか?刺激の多い現代から過去の映画としてか、あるいは同時代人の映画としての穏やかな気持ちとしてか?
「オードリーがオードリーであった最後の作品。」
おすすめ度 ★★★★★
どんなに大きな困難に陥っても、知恵と勇気を振り絞って立ち向かえば必ず乗り越えられるということを、オードリー扮する、か細くか弱い盲目の女性から教えられます。
そのオードリーの演技は、例えばメリル・ストリープやジョディー・フォスター等の第一級の演技派女優に比べると一歩譲るものがあるでしょうが、しかしながら、逆説的になりますが、そういう演技派女優たちのように演技しすぎることなく、オードリーならではの持って生まれた素養と演技自体との絶妙のバランスの下で観客を魅了する、そこにオードリー作品の魅力の核心があるということを、この作品を観てもあらためて思います。
さらに本作についていえば、テレンス・ヤングの緻密に計算された見事な演出と、ヘンリー・マンシーニの甘美で切なげなメロディーが、オードリーの可憐な美しさと優しさを一層引き立てていることを付け加えておきたいと思います。
概要
麻薬が隠された人形を持ち帰った夫。何も知らない妻のもとに、夫の留守中、麻薬を求めて男たちがアパートにやってくる。そして盲目の妻は絶体絶命のピンチを迎えるが…。
オードリー・ヘップバーンが主演したサスペンスの秀作。ヒロインの目が不自由という設定がスリルを倍増させている。しかし、ヘップバーンはただ恐怖おののくヒロインではなく、暗闇に強いという利点を生かした行動もとれる利発な女性。彼女の行動がテンポのいいスリルを生み出しているといえよう。思いもよらないところからの光で、ヒロインが窮地に陥るシーンは本作の名場面、ショッキングで思わず「あーっ!」と声を出してしまうかも。監督はテレンス・ヤング、音楽はヘンリー・マンシーニが担当している。(斎藤 香)