<出でよ 人形遣い>8(伝説との攻防戦:前編)
by 福助二世
ようやく帝都某所に落ち着いたとは言っても、あの事件が元になっての、突然のアジトの引越しにはさしもの福助軍団もてんてこまい させられた数日だった。やっとカタチだけは整った第二アジトの一室に あの2人の姿を見ることが出来る。
由希
「ああいう人だったなんてなぁ、、、、早まっちゃったかなぁ、、、いいえ、、、ああん、でも、、ああ言う性格だったなんて、、、ショックだな、、」
二世
「おいおい由希?さっきから何をぶつぶつ言ってんだい?気味が悪いな、、、」
由希
「ふううっっ、、気味が悪いな。、じゃありませんよ、、、まったく。寄りによって何もあの伝説の怪人にあんな、、事、、それも私に変装してる時にだなんて、
、、」
二世
「なんだよ、なんだよ由希、まだあの事、怒ってんのかい?仕方ないじゃないか。
こっちだってアジト一つ、パァにしてるんだぜ。あのやろう、、時間があったらあの恰好のまま街まで、、」
由希
「いやっ!言わないで!もう良いです・・・聞いた私がバカでした、、あああんもう、トラバーユでもしてやろうかしら。」
読者のみなさんは解っておいでの事でしょう、牧瀬由希さんがなんで、ご機嫌が悪いのか、その理由を。そうそれは前回、タイトルだけは読者狙いの おどろおどろしいものだったにもかかわらず、期待して読んだら・・・事もあろうに希代の怪人※※※※の※※※に細い紐を※※※※※※※※※してしまったという、アノ一件が原因なのです。ですがそれを仕掛けた張本人の顔色はなんだかパッとしていないのは、なぜなんでしょう。
二世
「だけどな由希・・・・・」
由希
「なんですか?アタシにあんな事したいなんて言ったら、いくら二世でも、ひっぱたきますからね!」
「ばぁか、誰がそんな事するかい、、そうじゃない、、あんなもんなのか?、、、彼の実力って、、、」
「え?、、、どう言う事なんです、それって?」
「変だ!、、絶対に変だ!、、、あれが 俺達がこの世界に足を突っ込むきっかけになった怪人だなんて、、、いくらなんでも変だ。。。信じられん、、」
「それじゃ二世、、、貴方は、、、」
「ああ、賭けてもいいさ。奴は俺達が心酔する伝説の「怪人20面相」なんかじゃない、真っ赤なニセモノって事さ。彼があんな罠に引っ掛かる筈はないんだ!、、、くそっ、、」
「え?、、そうなの、、、だから二世、、貴方、、、」
「最初は正直言って確信はなかった。だけど途中から何か変だと思ったのさ。、、そうしたら許せなくなったんだよ、いくら俺達が頑張っているって言っても、あれがかつて日本を震撼させた大盗賊の20面相だったとしたら、あんな罠に引っ掛かるなんてありえない、、、出来れば この手で、ニセモノの化けの皮を剥してやりたかった。やはり連行するんだったな。くそっ!」
「そうだったんですか、、、でもきっと伝わりますよ。あの怪人には、、きっと、、」
「だと良いんだが・・・・な、、、あれ?なぁ由希。このPCのモニターに貼ってあるメモ、、二代目からじゃないか?」
「あ!忘れてました。さっき二代目からソフトを取りに来いって内線貰ってたんだ、私ちょっといただいてきますね。」
「ああ頼む、、それからついでに 二代目に「原稿」はどうした?って聞いておいてくれ。俺じゃ誤魔化されるから。」
「あははは、わかりました。」
心底ホッとしたのか、由希はさっきとは打って変わった明るい表情で二代目の作業している研究室にお使いに出ていった。と同時に、読者のみなさんも前回の二世の不謹慎というか破廉恥な行動の理由が少しは理解出来たのではないでしょうか?、、、ところが、、、
ところが!、、、、、、まだ事件は終わってはいなかったんです。リズムマシンからHOUNDDOGが流れる中、どうやら事件は新たな展開に入って行くようです。ほらほらさっそく引っ越したばかりのアジトに警戒報が・・・・・・
Veeeeeeeee,,,Veeeeeeeee,,,Veeeeeeeee
,,,Veeeeeeee
Hei Boys! Trick or Treart? WaHaHaHaHaHaHaHa,, Trick or Treart?
「万聖節か、しかしどこのどいつだ?警報用のマイクテストでハローウィンとシャレ込みやがって?・・・・・え?」
般若ぁ、波羅ぁ密ぃ多ぁ心、色即是空、空即是色、、、、ギャーテーギャーテーハーラギャーテハラソーギャーテーボージソワカァ、わはははははは、、やはりハローウィンに「般若心経」は似合わんな、こっちは諸君らの命日まで取っておく事にするか、それでは改めて、、
Trick or Treart? Mr Fukusuke2th?
わははははははははははは
「こ、、この声は、、まさか!?、、、警備班!おいっ警備班!どうした?応答せよっ!」
人を馬鹿にするにも程がある。事もあろうに、アジトの警戒報スピーカーからハローウィンのセリフを流したかと思ったら命日の「般若心経」だと。だが緊急用の内線モニターに飛びついて叫ぶ二世に対して警備室からの応答はなかった。異変はそれだけではない。アジトのどこかにいる筈の二代目からも由希からも何の反応もないとは、、異常事態か!、
、、、二世の全神経が針ネズミのようになり、氷のような緊張が走る。
「くそっ!突然、姿を消してから何十年経ってるってんだい・・・あいつしかないぜ。これ、この手口こそ蘇りつつある怪人らしいってものさ。ID反射ビーコン、、IFF識別信号発信!」
ピピピッッッ、チカチカチカ、、、チカチカチカ、、、ピピピッッッ、チカッ、チカッ、チカ、、、
「連続3点滅が由希、、1点滅が二代目、、2人ともこの建物の中で生存しては、いるらしいな、、と、なると応答出来ない状態って事か、、、ちくしょう!!」
二世は思わず、足元のごみ箱を蹴飛ばしていた。ごみ箱は派手な音を立てて部屋の
隅まで転がっていった。
俺に悔やむ資格はない・・・・二世は口に出掛かったそのセリフを、ぐっと飲み込むと、2人のいるであろう場所に向って部屋を飛び出した。・・・これは自分の甘えと奢りと慢心が招いた結果なのだ。悔やんでいる暇があったら2人を救出する方が先決なのだ。
二世は通路を駆け抜けながら、開けっ放しの警備室のドアから中を覗き込んで立ちすくんだ。
「お、おいっ、、、これっていったい・・・」
二世はその場で絶句してしまった。警備室の中には班長を始めとして、ここの警備室には6人のスタッフがいた。彼らはついさっきまで、ある者は整然とモニターカの前に座って、ある者は立哨警備にと、それぞれの任務をこなしていた、、、筈だった。だが今彼らは見るも無残な姿にさせられていた。警備要員全員、1人の例外もなく、その制服の上から、頑丈な梱包用ガムテープで手足を厳重に縛られ、口にもテープを貼り付けられて床に転がっている。
男女入り乱れての緊縛監禁姿は、ある意味で壮観ですらあった。女性警備スタッフは、そのスカートをはいた足首をストッキングの上から、テープでぐるぐる巻きにされ、ふとももと膝の下も同様に拘束された両脚は一本の棒の様になってしまっている。
両手は、背中に回された手首を十字に組んだ姿勢でテープで縛られているだけでなく、いくらもがいても両手が自由にならないように、縛った両手首と胴体をテープで巻かれていた。
口の中には、なにか詰め込まれているらしく、大きく広げられた唇の上にも、同じテープが貼り付けられ、そのテープが簡単に剥げないように、顔の周囲を幾重にも巻き付けら頬にテープが食い込んている者もいる。他の者も同じようにされて、床にごろごろと連なって転がされていた。いずれも、同様に厳しくテープ拘束をされ口にはガムテープを貼り付けられ、完全に身体とと言葉の自由を奪われているのだ。
「むむんんんんっっっっ」
「うぐぐぐんんんっっっ」
「むふっふふんんんっっっ!!」
二世を見つけた警備スタッフ達は不自由な態勢から首を持ち上げて、助けを求める呻き声を上げた。
「いったいだれに やられたんだ、こんな・・・・」
二世は1人の口のガムテープを剥がしながら そう質問すると、とんでもない答が返ってきた。
「はああぁぁぁっふうううぅぅ、、はい、一時間ほど前ですが、牧瀬チーフが差し入れて下さったコーヒーを飲んですぐに意識がなくなりまして、、、気かついたら、、。」
「それが屈強な精鋭が これだけ完璧な梱包を許した理由か・・・恐らく、その牧瀬チーフは誰かの変装に違いなかろう。休息時間以外の喫飯は禁止されている筈だからな。」
二世はいまいまし気そう言うと、ポケットから出したナイフで、申し訳なさそうに身を縮める警備スタッフの手首のガムテープを切ってからすぐに移動した。2人が心配だ。
その頃、由希はそんな警備スタッフ以上に悲惨な状況を強制され身心ともに、消耗しきっていた。彼女が監禁されている倉庫には、彼女の横に見慣れない金属製の箱が置かれており、中でコチコチと時計が時間を刻む音が響いている。時限式の爆発物か!?
由希専用に開発されたそのドールスキンによって創られた、女體をがんじがらめに拘束するロープは、由希がどんなに起き上がろうとしようとも、正座のようにキッチリと折りたたんだ足首と膝を一体にして縛られ、両手は背中で関節を逆に捻るようにして、がっちりと拘束されている為に、もがく事すらできない。こんな相当高度な逮捕術を体得しているだけでも信じられない事なのに、極めて短時間での完全緊縛など、由希は研修でも教わった事はなかった。
助けを求めようにも、口の中いっぱいに詰め込まれている布は由希の唾液をすって、さらに膨れ上り舌などもを動かせない。しかもだ、いくら顔を床に こすりつけて剥がそうと試みても、顔の周囲をぎっちりと締め上げて口を封印しているガムテープは全く剥げそうにない。
激しくめくれ上がったスカートからパンティストッキングを穿いた由希の下半身があらわになりブラウスの裾は、はだけ襟のボタンなどは はじけ飛びブラジャーの肩紐が見え隠れしている。1人いましめを解こうと いくら由希が奮闘したところで、指までも束ねてガムテープで縛られていては、自由になるのは到底不可能だった。
「牧瀬チーフ!、、おーい由希っ!どこだ?」
突然、由希の耳にどこからか二世の叫び声が聞こえた
「むむんっっっ、うぐんんんんっっっっ!!」
「そっちの倉庫かあー」
「むむんんんんんっっうううー!!」
近づいてくる二世の声に 由希は縛られた女體を必死にもがかせた。何もかもあらわになるのも気にせず、ドアの方へにじりよる由希の服装がさらに乱れる。すでにはじけ飛んだスカートのサイドファスナーの為にスカートは彼女の足元からするりと抜け落ちていた。乱れまくったブラウスとパンティストッキングだけの下半身。そんなあらわな姿になっている自分の姿を見られる恥ずかしさなど考えもせず、なおも由希は呻いた。
「むむんんんううーうーうーうっっっ」
得体の知れない金属製の箱の中で、止まる事をしない時計の音が何かの為に時を刻んでいる。時限爆弾?だとしたなら一体いつ爆発するのか?はたして二世と由希の運命は?いやそれ以前に彼らをここまで恐怖させる者の正体と目的は?
その答は次章で明らかにされよう。
≪出でよ 人形遣い≫8
<伝説との攻防戦:前編>
<完>
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【続く】
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