1998年6月2日更新
さてさて、久しぶりにひっそりと更新してます。謎のランキングです。最後の更新以来、いろいろとネタを仕入れたのでそろそろやろうかなという所ですね。今回は真面目編です。
それではバニーズ再発の期待を込めて・・・ブガル〜?
1 「Shotgun」 The Golden Cups
2 「Hold On I'm Coming」 The Golden Cups
3 「汐鳴りの幻想」 The Voltage
4 「If I Didn't Have A Girl Like You」 Zoo Nee Voo
5 「空に書いたラブレター」 The Outcast
6 「We Got To Get Out Of This Place」 The Spiders
7 「エミー・マイ・エミー」 The Voltage
8 「陽はまた昇る」 The Golden Cups
9 「イエローキャッツ 映画版」 The Tigers
10 「Hold On I'm Coming」 Zoo Nee Voo
ゴールデンカップスのファーストアルバムは優れた曲もありますが、曲ごとのばらつきが大きい感じがします。その点2枚目の方はお約束の「落差」はあるものの、カヴァー曲の出来がよく、聞き所の多いアルバムです。「Shotgun」はそのセカンドアルバムの冒頭を飾る名演です。ファンの女の子を動員した偽スタジオライブでメンバー紹介なども入りますが、無敵のファズギターが、好き嫌いのはっきり別れるであろうとてもいやらしい音で炸裂します。
8位と下の方に入れましたが、「陽はまた昇る」もゴールデンカップスらしい演奏が聴けます。この曲はGS的な曲調でもあり、ゴールデンカップスのR&Bのカヴァー曲に馴染めない人にも親しみやすい曲かもしれません。モップスの「ベラよ急げ」などと似た印象が残ります。
「Hold On I'm Coming」はGSによってよくカヴァーされた曲のひとつですが、多分最高傑作はこのゴールデンカップスのヴァージョンでしょう。ボルテイジの方がガッツを感じさせるものの、いまいち合わないブラス・セクションさえ気にならなければゴールデンカップスのヴァージョンは素晴らしい出来です。
同じ「Hold On I'm Coming」のズーニーブ−のヴァージョンは、ギターがサウンドの中心となっている点がズーニーブーとしては珍しいかもしれません。ズーニーブーがいまいちGS的な魅力に乏しいのは、バンドらしくないからでしょう。ソウルのカヴァーをやる歌ものグループという位置づけが、ズーニーブーの限界にそのままつながります。本家よりうまいわけでもなく、バンドとしての演奏の魅力があるわけでもない中途半端な存在なんですね。この曲ではバンドとしてのズーニーブーが聴けますが、多分ギターのテクニック的な問題、ヴォーカルのうまさなどからギターバンドになる選択はできなかったんでしょうね。ブラスセクションが使える立場にあったのも、今から見れば善し悪しだったといえます。
そのズーニーブーの本来的な魅力が発揮されているのが「If I Didn't Have A Girl Like You」です。2人のヴォーカルの力量はGS界では抜群に高く、この手の曲をやらせたら彼らより上のバンドはありません。
どこまでネタが続くかアウトキャストってな感じですが、この「空に書いたラブレター」は、ほとんどのメンバーを一新した後期アウトキャストによるシングル曲です。メンバーを代えても地味なのは何故? まあ、それはともかく、流石にオリジナル・メンバーのベースは強力で、骨格となるグルーブを作り出してます。気合いのこもったガレージロックというより他にない演奏です。
「We Got To Get Out Of This Place」はアニマルズのカヴァーです。堺正章のヴォーカルが素晴らしいです。彼らのセカンドアルバムに収められた曲で、このアルバムはB面がすべてR&Bのカヴァーとなっており、この曲もそのB面の曲です。このB面はA面の腑抜けたビートルズカヴァーとはうって変わって名演が並んでおり、一聴の価値ありです。英語と日本語の折衷によるロックというテーマに挑んだアルバムであり、この曲でも日本語と英語の歌詞が交差します。他の曲に比べると日本語部分もスムーズな印象ですが、やはり英語歌詞になった所での盛り上がりを前にすると、全部英語でやった方がよかったんではないかなと思います。
「エミー・マイ・エミー」をランクインさせるのは不可解かもしれませんね。この曲を選んだのは、ボルテイジの曲としては力の入ったつくりであり、日本のロックのひとつの道筋を見せているように思えるからです。R&Bの「Sunny」あるいはR&Bをベースにつくられていることが明白な「Whiter Shade Of Pale」「」からの影響を強く受けているこの曲は、もしかしたら日本のシンフォニック・ロックの道を切り開いたかもしれないと思うんです。オーケストラの入っているGSバラードなら他にもありますが、R&Bは他にあまりないでしょう。実際にはここに流れは生じず、GSはロックから離れていくモーメントにあったのでしたが、このような徒花的な試みに当時の日本のロックの可能性を見ることが出来るのです。
さて、順番が前後してますが、同じボルテイジの「汐鳴りの幻想」です。これまたひとつ間違えばエポックメイキングになり得たインパクトの強い作品で、どういうわけか民謡とR&Bの接点を探る怪作です。エスノ・ロック、あるいはミクスチャー・ロックと言えば聞こえはいいかな。聞いてみると極端に変ではありません。えんやとっとなノリながらも、むしろ、ここにもしかしたら「道」があったのではないかとすら思えてきます。揺れ動くGSシーンの中でボルテイジはR&Bとの接点を求め続けたグループだったのでしょう。ロックのライブ・パフォーマンス的な部分がもっと浸透して、GSの魅力がそこにあるのだと受けとめられていたら、ボルテイジのようなグループは大成したのかもしれません。実際に売れたGSはライブ的魅力とは縁遠いものであったのは不幸でした。
タイガースがここに入るのは最初で最後だろうと思いますが、この「イエローキャッツ」は映画「世界はボクらを待っている」の挿入歌で、劇中で使われたヴァージョンはバンドのみの演奏で結構いいです。ただし、タイガースが演奏していないのではないかという疑惑もあるようで、もしかしたら演奏はアウトキャストあたりかもしれません。歌詞は、新聞紙のタクシーにライバル意識を燃やした日本の作詞家の入魂作とでも言うべき怪作です。歌詞からみてもこの曲が映画の挿入歌である理由も特になく、恐らくはシングル化できなかった残り物の曲なんでしょう。面白いんだけど、歌詞をきちんと聞いてしまうと脳味噌に三回転捻りが加わります。映画の方はコアな方以外にはお薦めしません。いや、お薦めできません。
ゴールデンカップスのセカンドアルバム「The Golden Cups Album 2」は最近LPにてP-VINEより復刻されました。CDは「音蔵」シリーズとして東芝EMIより出てますが、やや入手困難でしょう。ファーストアルバム「The Golden Cups Album」も同じく「音蔵」シリーズでCDになってます。
スパイダースのセカンドアルバム「The Spiders No. 2」は限定盤ですが、LPで再発されています。スパイダースはテイチクが権利を獲得し、再発が開始されるとの情報もあり、もしかしたらこのアルバムもCDで聴けるようになるかもしれません。
ズーニーブーは2枚のCDで全部聴けるかな。このランキングに上がっている曲は「ズー・ニー・ヴーの世界」(COCA-13945) に入っています。
アウトキャストとボルテイジの今回取り上げた曲はいずれも「カルトGSコレクション テイチク編Vol.3 空に書いたラブレター」で聴けます。
タイガースの「イエローキャット」だけは映画「世界はボクらを待っている」の中でしか聴けません。CDになっているのは別テイクで、かなり違います。
棚橋勝敏(イージーファン)
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