老婆の舞いは南国のリズムに乗って
(12月31日 沖縄〜名護)





 次の日は、西海岸沿いに名護まで走る。国道58号線は、沖縄本島を南北に貫く随一の幹線道路であり、かつては米軍専用道路だった。片側3車線で信号も少ない道路がまっすぐ伸び、そこを荒っぽく車が疾走していく様は、まったくアメリカ調である。ヤシの木が街路樹として連なり、道の片側は高い鉄条網の向こうに嘉手納基地が広がる。在日米軍基地の75%が沖縄に集中しており、その面積は沖縄本島の2割を占める。特に嘉手納町は8割以上が基地で占められた町である。




 今日は天気がすっきりせず、丘の上にある座喜味城跡に到着すると、大雨となった。木陰で雨が小降りになるのを待ってから、再び出発する。しかしその後も断続的に雨が続き、足取りは鈍る。

 雨宿りも兼ねて、昔の琉球の農村を再現した琉球村に立ち寄る。あまりお仕着せのテーマパークは好きではないが、雨のなか無理に走り続けるよりはだいぶマシである。伝統的な古い民家のなかでおばあさんが三味線を奏で、独特の南国のリズムに乗って、元気に舞を見せてくれる。

 ここでは「ハブとマングースの対決」というのが名物の一つだったが、動物愛護法の改正によりそれは禁止され、3Dの立体映像を代わりに楽しむことになっていた。映像が終わると、子どもたちが「なんだ、これで終わりなの」と正直なつぶやきを漏らした。




 次第に雨が上がり、空が明るくなってきたのを見て、北上を再開する。恩納村は大ホテルが並び、「沖縄の海」を代表するような有名なリゾート地で、村役場の庁舎も派手で真新しい。海沿いを行く道路は向かい風が強く、ヤシの並木の葉もなびき傾くほどであり、自転車の歩みは鈍る。

 やがて、海の向こうに今日の目的地である名護の街並みが見えてきて、ほっと安心する。彼方の市街地が少しずつ大きく近づいてきて、少しずつ自分の足で街から街へと進んできたことが、景色で実感できるのである。

 夕方、空が暗くなってきても沖縄は暖かい。本州なら、冬の夜ともなれば身が縮むような寒さであり、一刻も早く建物のなかに入りたくなり、目的地が遠ければ強い不安が襲ってくる。しかし南国の夜は、まあ一晩外にいてもなんとかなるさ、と思えてしまうような生暖かい空気が漂っているのである。







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