Tran-DS: The Side Story of Tran-D
Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 2: UES Heinlein
part3
ゲート消滅事件からさらに五時間が経過していた。
エンジンの修理が乗組員の負傷者が多いため思うようには進まなかった。
そしてとうとうスペースタグが到着してしまった。
「申し訳ありません、すぐに引っ張ってこいと言われまして・・」
タグの操縦者が申し分けなさそうに言った。
フォルスリングは頭を掻きながら対処の仕方に困っていた。
しかし状況が状況であった。
ゲートの事件意外になんの以上も無いはずの空域から中村准将はできるだけ早く彼らを追いだそうとしている。
その不自然すぎる態度にフォルスリングはどうも納得しなかった。
彼が軍の連中に嫌われてることはこういう好奇心というか警戒心があったからかもしれない。
しかし、彼はその性格のおかげでいままで自分の船の乗組員とうまくやっていき、クルー全員に親しまれていた。
再び考えるしぐさをし時間稼ぎを考えた。
だがその時間を与えないように命令をされたか、タグはいきなり強力なトラクタービームを発射させた。
「わかった、お任せします・・・」
あきらめたかのような顔をしながら相手にそういい、通信を切った。
だがその顔はある意志を伝えるかのように戦術席のキエフ中尉にむいた。
-いつでもあれを切断できるよう準備しとけ-
キエフ中尉はなにも言わずに正面に向き直し、いくつかのキーを押した。
数秒後、彼のコンソールの小型モニターに
-Target Locked-
と表示され、PDSを保護しているカバーがほんの少し動き、レンズ一個がその姿を見せた。
タグがゆっくりと進み始めた。
そして前方数百メートル先に何かを射出した。
なにかが一瞬光り、そこに青い渦巻きが現れた。
タグがそれに向かって進む。
艦長がいつ命令を出すのか待つブリッジの人はできるだけ彼の方を見なかった。
発射の合図をする準備をするかのように手を上げた瞬間、異変が生じた。
「艦長!右舷1キロ内にニュートリーノ粒子異常発生!!!ゲートが開きます!」
索敵に座っているサモン軍曹が悲鳴に近い声で報告した瞬間、右舷1キロという至近距離で青い渦巻きが発生し、船一隻が突っ込んできた。
「!!!!前方スラスター全開!!!」
命令が下されてる最中にヒュート少尉はその行動を入力し実行していた。
ハインラインの前方スラスターが吹き始め、船の進行をとめる。
同時にタグと綱引き戦が開始された。
ゲートより現れた船がハインラインをタグの間に割り込むような形で来る。
「まずい!このままでは!」
このままその船がビームにその速度で突っ込めば重量が違うタグは、そのみずから放つビームに振り回され相手の船に衝突してしまう。
「キエフ中尉!」
いわれなくても分かっていますよ、といっているかのように彼も本能的に銃器の発射を実行した。
PDSレンズから放たれた光は正確にタグのビーム発生装置を破壊した。
勢いが余ったタグはそのまま自分が作ったゲートへと転がるように入って消えた。
ハインラインもその反動で後方へと動き、突っ込んできた船をぎりぎりでよけることができた。
ゲートから現れた船はハインラインの前方10mを通り過ぎると減速した。
「ふう!」
ブリッジクルーは同時に緊迫から開放され、皆席に沈んだ。
つぎの瞬間、通信席から受信音がなり、岬少尉はすぐに確認をする。
「艦長、あの船から通信が・・・」
「なに?・・スクリーンへ」
そこに現れた顔を見て彼は言葉を失い、
「君は・・・・」
としか言えなかった。
○
蒼いTAがベッドに収められ、金属音で固定された事が確認される。
その足元で口をぽっかりと開け、驚きを隠せない人達がその機体を見上げていた。
そこへフォルスリングが到着する。
人だかりの前へ進み、Tran-DSのコクピットハッチの側に立っている二人のMPに頷いた。
それを合図に彼らはコクピットハッチを開け、中にいる人物が出るまで銃をそこに向けた。
三人はリフトに乗り、降りてくる。
格納庫にいる者の目はやがてその機体から彼女へと移った。
長い白銀の髪を直しながらリフトを降りた彼女はフォルスリングの前で足を止め、敬礼をした。
「フェナ・フェアランスです、乗艦許可を願います」
「うむ、許可する、ハインラインにようこそ、といいたいところだが・・・・」
ちょっと間をおいてからフォルスリングは答えた。
「君には聞きたい事が山ほどある、身支度をしたらすぐ艦長室にきてくれ」
「はい」
返事をした彼女はすぐに彼女の機体へ目をやった。
「ラグナスからの荷物は届いている」
「そうですか」
フォルスリングの一言にフェナは感情のない答えをした。
そんなフェナをみてから彼はMPに顔をむけた。
「おまえたちは彼女を医務室まで案内してから、準備ができ次第艦長室につれてきてくれ」
「了解しました」
命令をされたMPはフェナの前後に付き彼女をつれて格納庫を出た。
「整備長・・・・こいつの修理にすぐに掛ってくれ。だがほかのパイロットは、近づけるな」
「とくに零少尉ですか?」
苦笑をしながら整備長が答えた。
「そうだ・・念のためここを一時的に整備員第一班以外立ち入り禁止にしろ」
「人選はまかせてもらえますね」
何故だ?と聞くほどフォルスリングは馬鹿ではなかった。
整備第一班の大半はあの時TAの下敷きになり、この世にはもういない。
「ああ、それと・・」
胸のポケットからフォルスリングはカードを取り出し整備長に渡す。
それを手にした彼はそれが何であるかをすぐに理解して無言に頷いた。
「おもえら!何ぼやぼやしている!仕事は山ほどあるんだぞ!」
その掛け声を聞きながらフォルスリングは格納庫を後にした。
○
「君たちは下がっていい」
「はっ!失礼します」
MPが部屋を出てフォルスリングは彼の前に立っている女性に目をやった。
蒼い機体が収容されて一時間たっていた。
フェナはあの後医務室にいき、簡単な精密検査を受け、軍の制服をあたえられた。
背中まである髪は三つ編みにされて結い上げられていた。
襟には少尉の称号がついている。
「さて、話を聞こうか」
といいながら彼は机に座る。
フェナはその前で立つ。
部屋の証明が暗くなり、ホログラフィックスクリーンが浮かび上がった。
ハインラインの現在位置とリキュールが地球からエルファへ取るはずだった航路がしめされる。
フェナは、自分が知ってる事に元付きここまで来るまでのいきさつを説明したが、もちろん言わない事もあった。
フォルスリングは、時々目を細くしながら彼女の話を聞いた。
感情がこもっていず、そして詳細を細かく説明する声は、コンピューターが報告をしているようであった。
いや、コンピューターの方がまだ愛敬があったかもしれない。
母親の死のこともフェナは平然と話した。
さすがに相手の船がゲートに入った時にリキュールを爆破したと聞いたときは彼の表情が歪んだ。
「以上です」
「なるほど・・そういうことか」
まるでパズルの最後の破片を見つけたかのように、フォルスリングの頭の中では絵が一つ完成されていた。
しかし問題が一つ浮かび上がった。
『この事をどうやって皆に話すか・・・』
しばらく頭を抱えることになるなと思いながら彼は照明をつけ、再びフェナへ目を向ける。
彼女はただ無言に立っているだけであった、まるで人形のように。
沈黙がしばらく続いた。
それに割り込むようにフォルスリングのラップトップから音がする。
『艦長、ダカウより調査隊が帰還しました』
「わかった」
ダカウ・・・・フェナがブリッジだけつぶしたエクセル級の戦艦。
ブリッジだけがつぶされていたため、まだ航行可能だった。
フェナはWileをダカウのメインコンピューターに接続させ、それでゲートを開いたのだ。
戦艦のコンピューターに接続させ、TAのコンピューターで船を一隻動かす事は不可能のはずだった。
「この様な作業のために私はプログラミングされていません」などの愚痴をいわず彼は自分を再設定し、ダカウを格納庫からあやつった。
それでここへ来た事になるが、ダカウを残したのは意図的なものであったと言っても過言ではないだろう。
「失礼します」
報告書を手にしたサモン少尉が入ってきた。
「何かわかったか?」
「はい、とにかくこれをみてください」
ダカウのメインコンピューターからダウンロードされた情報をまとめたものをフォルスリングが目を通す。
ページをまくり、読む事につれ彼の表情が険しくなっていく。
データは、フェナがダカウのブリッジをつぶした瞬間で終わっていたが、フォルスリングはそれ以前の内容をみていた。
同じページを何回も読み、ある時点ではハイライトマーカーをとりだし、ある部分に記をつける。
そして冷や汗を少し流したところでサモン少尉の顔をみる。
サモン少尉の顔にも汗が流れてるのがみえた。
そしてもう一度フェナの目を直視した。
「とんでもないことになっているな」
フェナはただ無言にフォルスリングと目を合わせただけであった。
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