Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 4: Ragnus Heavy Industries
part7

白い天井が目に写った。
どのくらい天井とにらめっこしていたのかわからない。
ただ気が付いたときにそれが一番始めに目に入った。
体がだるく、頭もはっきりしない。
最後におぼえているのは白い地面に向かって落ちて行ったことだった。
ここはどこなんだろう。
ふと気になった。
窓から差し込んで来る光がむぶしい。
あたりを目だけで見回すとどうやら病室みたいだったが、病院ではないらしい。
医療施設と言った方が正確のようであった。
心地のよい風がカーテンを吹き上げながら窓から入ってくる。
手に目をやると点滴の針がさされており、透明な液体が体に流れ込んでいる。
どうやら栄養剤を体に与えているようだ。
体を起こそうとする。

「!!!」

しかし脇腹の痛みがそれを許さなかった。
息があらくなり頭も余計にぼうとする。
しばらくしてもう一度体をおこそうと試みた。

「く!!」

痛みを我慢しながらベッドにある手すりをつかみ何とか体を起こした。
外をみると町があり、彼方の方には海が太陽の光を反射していた。
白い波が立っており、かすかだが潮の香りが風に運ばれてきていた。
風が気持ちよく、眩しそうに外をみていたその時、鳥が窓際に着陸する。
かなりの大きさを持ったもので、地球の鷹と同じぐらいであった。

くるるるる・・・

地球にいる同じ鳥の鳴き声をし、興味あるかのように頭かしげる。
とっとっと足の音をたたせ、ベッドの所にきた。
ばさ!と一度飛ぶとベッドの手すりに着陸した。
鋭いつめが目に入る。
何を思ってかフェナは手を差し伸べくちばしの下をこする。
くるるるる、と小さな声を鳥があげる。
喜んでいるようだ。
その時、かちゃ!とドアのノブが回される音がして、ドアが開く。

「あ!」

鳥はその音でおどろいたのか、その黄色と白の大きな翼をはばたき窓から飛びでた。
女性が飛び込んでくるが、鳥が逃げたと気が付くとため息をした。

「またにげられてしまった」

腰まである濃い茶色の髪に大きなリボンをした彼女は少々疲れた表情をした。

「あ、いきなり入って来てすみません!あの鳥を追っていたものですから」

深く頭を下げ彼女は誤った。

「いえ」

気にしていないことを示すと女性は、いや少女は小さく笑った。

「本当にすみません、・・・・じゃ私はこれで」

もう一回頭を下げると彼女は部屋を出ていこうとした。

「あ、あの・・・」

「はい?」

自分でも驚くくらい声は弱くなっている。

「ここは?わたしはここにどれぐらい?」

「ここはエルファラグナス重工の医療室です。あなたは三日前ここに瀕死の状態でつれ込まれました」

女性は丁寧に教えてくれた。
それ以上今、聞く気にならず、彼女は失礼しますといいながら部屋を出ようとした。

「きゃ!」

だれかとぶつかる音がして何かが落とされる音もする。

「す、すみません!」

「い、いえ」

彼女がまたあやまり、落ちた物を拾おうと腰を下げる。
そのためぶつかった相手の顔が見える。
真沙緒だ。
落としたものを拾い上げると女性は頭を再び頭を下げる。
真沙緒はそれでベッドの上にいる人物がおきていることに気が付く。

「フェナ!・・気がついたの?だめよまだねていなきゃ!」

真沙緒が荷物を抱えて部屋に急いで入ってくる。
だがその名前を聞いた時女性の顔の表情が変わった。
そして真沙緒に頭をもう一度下げるとまるで逃げるかのように廊下の奥へと消えていった。

男が一人芝生の上に寝転がっていた。
まるで太陽の光を遮るかのように一枚の紙を顔の前にかざしそれにかかれているものをみている。
あるTAのシルエットの側に数字と文章が書かれている。
何回も開かれていることが折られている紙の筋からわかる。
ため息を吐くと彼は再び折ると胸のポケットに戻した。
腕の頭の後ろに組み、通り過ぎていく雲を見つめる。
どこかで工事をやっているのかパイルドライバーの音が聞こえる。
その時影が彼の頭を覆う。

「おお、おお、動かないから死体かとおもったぜ」

「・・・・・・」

男が話しかける。
返事がないので彼はため息をすると隣に寝転がり、同じように雲を眺める。

「まだ気にしているのか?あのこと」

「ああ」

腹立だしく彼は答える。
おれもそうだと相手が答えると二人はしばらく通りすぎて行く雲を眺めた。
「おにぃーちゃーん!!」

少女の声が片方の男を呼ぶ。
しかし呼ばれた男はそのまま空を見詰めている。
ずいぶん探したのか息があがっている彼女はおこった顔で兄をにらんだ。

「もう、何やっているのよ!グレナディアさんが待っているのよ!!」

しかし男は答えない。
寝ているふりをしているか彼は彼女を無視する。
それで何かがきれたか、彼女は男の脇腹を思いっきり蹴った。
男の悲鳴が響き渡る。

「ミア!おまえ何を!」

「何をじゃないでしょう!!仕事ほっぽといて!」

「み、ミアちゃん何も蹴ることは・・・・」

「リックさんもここで寝てなくてライズの整備どうしたの?長谷川さんおこっていたわよ」

彼女の気力に負けた二人は重い腰をあげ自分の仕事場に戻ろうとした。
しかし首は下を向いている。
足取りもおそい。
もう一発入れようとミアは準備をするが蹴りを出す前に彼女の兄は走り出した。
そして一度振り替えると

「ミア、おれは今日はこれで終わりにする。グレナディアに誤っておいてくれ」

「ちょ!おにいちゃん!」

追いかけようとミアは走りだすが、リックに片腕をつかまれる。

「リックさん、はなして!」

「今は、あいつの・・アーリーの好きにさせとけ」

「でも、これじゃ!」

「いや、あいつが自信をつけるまでは時間の問題さ」

「え?それ、どういう意味?」

「まあ、みとけって」



車椅子がラグナス重工セカンドファクトリィの廊下を進んだ。
角でとまり、だれかいないかと乗っている人が調べる。
いないと確認するとさらに奥へと進む。
そして「立ち入り禁止」の表札が付いている扉にくると車椅子を止めた。
ロックを解除しようとナンバーパッドに触ろうとしたその時、

「やっぱりここだったね、フェナお姉ちゃん」

フィオが反対側の角から現れた。

「フィオ・・・」

かまわずフェナはナンバーパッドにコードをいれるが拒否される。

「むだよ」

同じ角から真沙緒が現れる。
彼女の手にあるカードキーが現れる。

「これがないと開かないわよ」

二人とも怒った顔をしている。
当然であった。
まだ体が治りきっていないのにフェナは医療室を抜け出したのである。
安静が必要だといわれているにもかかわらずだ。
表情を変えずフェナは二人を一度見ると再び目を扉に向けた。

「Will、ロックを解除して」

-Roger-

女性のコンピューター声が答え、ロックは解除された。
扉が開きフェナは入る。

「・・・・ちょ!フェナ!」

二人は彼女を止めようとするが扉は閉まってしまう。
扉を叩いたり、カードキーを使おうとするがコードが変えられたのか扉は開かない。

「どうする?」

フィオが真沙緒にたずねる。

「・・・・・管理室から見るしかないわね」

ため息を吐きながら真沙緒がそういうと、二人は廊下のおくへと消えていった。

「Will、Wileはどう?」

無残に破壊されたTran-DSの破片の山を見ながらフェナはWillにたずねた。

-I'm sorry, I could only retrieve the Data that he left for us-
(ごめんなさい、彼が残してくれたデータしか回収できませんでした)
そう、と答えながらフェナは唯一形を残しているTran-DSの頭部に触れた。 熱いものが一つ彼女頬を伝った。
7年前からずうといっしょにいた彼はフェナのよきパートナーであり、友人でもあった。
しかし感傷に触れている時間がないかのようにフェナはWillにそのデータの解析を始めさせた。

「新しいAIを組み始めて・・・名前は・・・そうね、Calamity(惨事)にしましょうか」

昔、地球でやっていたカーツーンでWile E. Coyoteの後継者Calamity。
母親の趣味をそのまま継がせ、フェナはもう一度Tran-DSの頭部に触れると側にあるターミナルに移動した。
そして指を鳴らせ

「さて、はじめましょうか」

というと勢いよくキーボードを叩きはじめた。


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