Tran-DS: The Side Story of Tran-D
Tran-DS
The Side Story of Tolled Armor Tran-D
Chapter 5: The Beginning of the End
Part 7
「このおおお!」
目の前の敵をパイロットの掛け声と共に、トランゼスが一刀両断した。
爆発を待たずにそのトランゼスは次の目的を探すためにジャンプをする。
それをねらってかキラードールがフェイスキャノンを開き、ためらいもせずにビームを放った。
「!!!」
それに気が付いたパイロットは本能的にシールドを構えるパターンを入力する。
コマンドに対応し、連邦軍のロゴが入ったシールドが身体の重要点をカバーした。
直後にビームがシールドに直撃をする。
あまりにも高い熱のためシールドは溶け出した。
舌打ちをしながら、パイロットはシールドを放棄し、肩に付いているレールガンの照準を今自分に攻撃したキラードールにあわせた。
ロックが確認された瞬間光がレールガンの銃口から放たれ、キラードールのフェイスキャノンに直撃する。
エネルギー充填をしていたのか、フェイスキャノンは大きな爆発を起こした。
残った下半身は無残な姿とともに地に倒れる。
『チャック、油断しないで!』
凛とした声が通信機を伝わってくる。
「へいへい」
右目でウインクをしながら、右手の親指を上へ突き立て、チャックは通信ウイドーに写っているグレナディアに自分は大丈夫だということを示した。
『まったく』
とあきれている最中にグレナディアの機体が衝撃のため大きくゆれた。
別のキラードールがフェイスキャノンを撃ち、それがグレナディア機の側に着弾したからである。
それを見て、彼女は別に慌てずにそのキラードールに突進した。
まるで驚いたしぐさをするキラードールは回避する暇は与えられなかった。
あっという間にグレナディアそのキラードールを高速で通り過ぎた。
なにかしたのか、そこグレナディアはそこで機体を止めた。
キラードールはそれを嘲笑うかのように振り向きフェイスキャノンのカバーを再びあけ発射しようとする。
しかしそれまでだった。
次の瞬間、キラードールは動かなかったからである。
上半身が斜めに滑り始めたからである。
ずる、とある線をたどり滑ったその上半身は、地に落ちると同時に下半身と四散する。
通り過ぎる一瞬のうちにグレナディアはプラズマソードを引き抜き、キラードールの身体を切ったのである。
その速さは達人でないとできない技であった。
爆発の中、トランゼスの目はまるでその瞬間を知っていたかのように光ったかのように見えた。
グレナディアの動きはそこでは終らなかった。
次の獲物を見つけてはそれに突進する。
ナックルショットが音を立て装備された瞬間放たれ、状況を理解出来る前に一機のキラードールの腹部を貫く。
びくびくと痙攣するそのドールをグレナディアのトランゼスは軽々ともう一機のキラードールに投げつけた。
両機が当たる瞬間、腹に大きな穴を持ったキラードールは爆発し、もう一機のキラードールをあの世へと道連れにした。
「ずげー」
チャックはグレナディアの動きに感動できないわけがなかった。
早すぎるのだ。
彼女の反応と対応が。
「く!負けるかい!」
グレナディアに負けない意気込みでチャックも次の獲物を探した。
そのころハインラインのブリッジでは重い空気がその空間を支配していた。
次々と現れてくるキラードール。
その数と流れが以上なのである。
「どういうことだ・・・」
フォルスリングはいつもの考えるしぐさでスクリーンに目をやった。
この7年間たまに単独ででしか現れなかったキラードール。
それがいま、一度に大量の数が現れている。
トランゼスの模擬戦をやっている最中に彼らは砂漠の中から現れ、攻撃をしかけてきた。
理由は一つしか、考えられない。
トランゼスが彼らの邪魔になったからである。
しかしその邪魔になった理由をフォルスリングは理解できなかった。
それに現れているキラードールのもろさ。
ハイ・ランスでも倒せるキラードールだけである。
そのため、一機もこのハインラインを攻撃していない、いや、できないのである。
その時・・・
「艦長!」
岬少尉がヘッドセット抑えながら悲鳴に近い声で彼に声をかけた。
「なんだ?!」
「トリエスタ市内にキラードールが現れて、キラーアニマルと交戦中との報告が・・!」
「なにい!」
どういうことだ!と状況をもっとくわしく調べろと岬少尉にいったものの、現在地からトリエスタに戻ろうとしても最大戦速でトリエスタまでは一日かかってしまう。
それに大量のキラードールをほっとおくわけにもいかない。
なにもできない腹立だしさからフォルスリングは拳を自分の席のコントロールパネルにおろすしかなかった。
○
「ミアああああああ!!!」
アーリーはまるでフェナを放りだすかのように手を放し、落下したキラードールの手のそばに駆け寄ろうとした。
幸いリックが片腕を出し、倒れるフェナを受け止めた。
煙の中に走り込んでいくアーリーはそこにキラードールがあることを忘れたかのようだった。
「ミア!!」
最悪の状態が脳裏を横切ったが、アーリーはそれを否定した。
ミアに限ってそんなことはないはず、いや、ないからと信じていたからであった。
「お、おにいちゃあああん」
ミアの声が煙の中聞こえたきた。
「ミア!どこだ!」
ミアの声を便りにアーリーが進と巨大な指が現れた。
そしてその指の間に、二つの人影があった。
「おにいちゃん!!」
半べそを書きながら、肩にフィリスをかけたミアがいた。
ほとんど奇跡だった。
落下の際、開いた手の指の隙間にミアがすっぽりと入ったのだ。
「大丈夫か?!」
妹が無事である事にアーリーは目に涙をためながら、ミアの側に駆け寄った。
フィリスも無事であったが、まだ意識はもどっていなかった。
「立てるか?」
「わ、私はいいから、フィリスさんを・・・」
小さい笑みを上げながらミアは気絶したフィリスに目をやった。
こんな状況でも笑みを上げられるミアはさすがだおもったアーリーだが、ここでは口をつぐんだ。
「ほら、いくぞ!」
「う、うん」
ミアは腰を上げようとするが立てない。
「あ、あれ?」
腰を抜かしたのか下半身が言うことを聞かない。
ほら!とアーリーは自由の手でミアを強引に引き上げた。
「きゃ!」
腰に手を回してちょっと抱いてしまうことになったが、そのおかげでミアは立つことが出来た。
「ほら、いそがないと!」
と、アーリーはパン!ミアの背中を打つと駆け足でその場を離れる。
それについて行くミアは、
-めずらしく、格好いいじゃない-
とつい、思ってしまった。
○
「はあ、はあ」
肩で生きをしながら、フィオはその場を離れていく三人を見送っていた。
下のキラードールが動かないよう監視する必要があったからである。
込み上げてくる憎しみを抑えるが必死であった。
今にも再び引っかいてバラバラにしたい衝動を抑えなければならなかった。
自分の中にいる獣が騒ごうとしていたのである。
何かがうごめいている・・・・・・・そうとしか感じられなかった。
キラードールを見るたび、このキラーアニマルに入るたび、自分の中に潜んでいるものが表に出ようとしてる。
そして今の状況、自分が有利でしかないこの状況のなかで、それが今にでも暴れだしそうであった。
黒いものが。
『よくもやってくれましたね』
深い、いやな声が通信機から聞こえてきた。
本能的にキラードールを抑える足に力を込んだが、下にあるキラードールはそれに逆らい身を起こした。
「く!」
フィオはいったん離れ、シルフィードの口砲にエネルギーを集中させた。
光が口に集まる。
だが・・・・
「ふふふ、出来るかなあなたに」
たちあがったキラードールは腕に仕込んである銃を出し、下にいる人間に向けた。
その中にもちろんフェナがいた。
手も足も出ないことに、フィオは唇を噛むしかなかった。
『卑怯者!!』
とフィオは叫ぶがそれに対し、ステファンは笑うだけだった。
怒りと悔しさで突進しようとした時、フィオの頭の中に小さな声が聞こえた。
それは弱々しくいまにも途切れそうであったが何かを言おうとしていた。
フィオはすぐにそれが誰だか分かった。
シルフィードの目をキラードールに気付かれずにフィオはある人物に望遠拡大をする。
そこにはかすかに目を開き、唇を小さく動かすフェナがいた。
言っていることがかすかに腕のブレスレットを通じて聞こえてくる。
『ま、町の中で、戦っては・・・だ、だめ』
「でも!」
『いい、か、ら、聞き、な、さい』
「う、うん」
フィオは手も足も出ないふりをしてステファンをにらみ続けた。
しかしその耳はフェナの声に向けられている。
『彼は、プライドが、た、高いの・・・・だ、だから、それに傷を付ければ・・・』
「乗せやすい?」
『そう・・・・』
もう一言葉をフィオに残しておきたかったが、フェナの声はそこで途切れた。
しかしフィオは不安を感じず、ぐっと拳に力をいれた。
「やい!そこの変態おやじ!!」
その一言でどっかで人がこけたようあったが、それはおいておこう。
『な・・・・』
「そうだよ、あんただよ、その怪しい男の格好をしているがらくたに乗っている変態おやじだよ」
威勢はいいが、フィオは内心震え上がっていた。
無理もないことである、なにせ彼は先ほど自分を恐い目にあわせた男だからである。
しかしフェナの助言とその無事である証拠が、なんとか自分に勇気を与えてくれていた。
『貴様・・・・・』
「どこが変態かだって?それはあんたがとる行動をみればわかるじゃない。女一人に逃げられて、今でもその女の尻を影から追っかけているじゃない」
その女・・・ちょっときつかったかなとフィオは思っていたが、この際、状況が許してくれるだろう。
なによりも、フィオはフェナからこの男のことについてなにも聞かされていなかった。
したがって、これは全部自分が考えあげた想像であった。
どうやって、このような想像が出来たかは、今言わない方がいいであろう。
しかし、図星を刺されたのか、彼が操縦しているキラードールさえ、彼の心境を写すかのように怒りで震えているようであった。
『そういうの、ストーカー・・・または変質者というのよ!』
さすがに今のでは声の震えを隠せなかった。
だが、ステファンは変態呼ばわりされたので、それに気が付かない。
『きさまぁあああ!』
とうとう切れたのか、ステファンのキラードールは先ほどフェナ達に向けていた銃を引かせ、シルフィードに突撃した。
逆上して行動は隙をつくり、フィオは簡単にそれを避けた。
「やーい、やーい!こっちまでおいで!」
と言いながら、フィオはシルフィードの尻を見せ、しっぽでパンパンと叩いた。
その自分を馬鹿にするような物を見せられて、ステファンは冷静さを完全に失った。
顔を真っ赤にしながらステファンは、猛攻をかけるがフィオはそれを簡単によけていた。
「こっちまでおいで!」
と、言い残すとフィオは別の、もっと広い戦い場所をさがそうとその場を離れた。
完全に乗せられたステファンはそれを追った。
ミア、アーリーとリックはその姿を唖然とした顔でみていた。
そしてフェナは・・・・
「Calamite・・・飛行パーツを出して・・・・・飛ぶことだけでも出来る・・はずよ」
-Roger-
同じブレスレットに通信機を内臓したのか、フェナはフィオがステファンを挑発している間にCalamiteとコンタクトを取っていた。
「Will、フィオに援護を送ることは・・・・・・」
一人であのキラードールを相手にするのは無理だと、フェナは分かっていた。
なんとか、旧式のTAでもいいから、フィオに戦力を送りたかった。
-I don't think that will be a problem. The military has already dispatched several TAs and they are on their way. ETA 5 minutes-
(それは問題ないと思います。すでに軍が数機のTAを出撃さ、こちらに向かってます。到着まで後5分です。)
5分で間に合うといいがと、フェナは密かにおもったが、今はどうしようもない。
『今は、フィオを信じよう』
だれかの声が頭の中で響いた。
しかしそれが誰なのか、と分かる気力がフェナにはなかった。
Willとの通信を行っている間に、ラグナス・セカンドファクトリーでは異変が生じていた。
闘技場の地面が割れて、ハッチがその大きな口を開いたのである。
なんだ、なんだと作業員と整備員が騒いでいる中、なにかがエレベーターによりその姿を地上に現し始めた。
巨大な戦闘機であった。
いや、戦闘機にしては大きすぎる、どちらかといえばTAを輸送するヘリほどの大きさはあった。
真紅と黒に塗られていたそれは、エレベーターが地上に到達する前に逆噴射をかけ、その巨大な姿を現した。
そして、その動きに従うかのように闘技場の天井が開いた。
それを抜けるとその飛行物体はたためられていた翼を広げた。
その翼幅は簡単に20メートルを超している。
翼を広げた瞬間、それはエンジンを全開にし、町の方へと発進し、あっと言う間にフェナ達がいるところに到着した。
翼を再びたためながら、逆噴射をかけ、高度を下げていく。
暴風の中、リックは何が起こっているのかわからなかったが、自分の肩ににあるフェナの手に力が込むのが感じられた。
「乗って・・・はやく・・・」
どこに?と聞く前にフェナは機体の後方にある、なにか収納庫みたいな物に指を指した。
いくぞ!とアーリーとミアに声をかけるとリックは出来るだけ早くそれに乗り込んだ。
だれかが、みているのか、皆が乗り込んだとこを確認すると、収納庫の扉は閉じられた。
次の瞬間、すごい勢いで機体が上昇していることをリックは感じた。
上昇が止まったと思ったら、どん!と言う感じで機体は前進したが、すぐに動きを止め、高度を下ろしはじめた。
扉が開くとそこには白衣を纏った救護班がすぐに駆け込み、怪我人をストレッチャーに乗せいずこへと連れていく。
そして、またその様子を見ていたかのように、皆が降りた瞬間それは再び逆噴射を駆け、ある方向へと消えた。
「フィオを、・・・おねがい」
誰にいっているのか、その言葉を最後にフェナの意識は暗い淵へと沈んだ。
○
トリエスタの街の海岸線・・・・
そこで獣型と人型の兵器がにらみ合っていた。
その姿を見て、逃げ惑う人もいれば、映画の特撮を勘違いして見る人もいた。
ほかに動くものといえば、海岸に撃ちあがる波とそれに運ばれてきたものを、くちばしで引っかけるうるさい海鳥であった。
「・・・・・・・・・」
フィオは、いつまでも飛び掛かる準備をしていた。
コマンド入力のキーの上には左手、右手はコントロールボールを握っている。
緊張で両腕が力んでいるため、つりそうだ。
おなじく、前進が汗を流している。
ずしゃ!っとステファンのキラードールが一歩前に出た。
それがまるでなにかの合図だったかのように、フィオはステファンへ突進した。
鬣を立て、突進すると同時に小さな飛行物体が放つとステファンのキラードールに飛び掛かる。
咆哮を上げながら、フィオのシルフィードは鈎爪で仕掛ける。
「ふ・・」
しかし、爪が切ったのは空気だけであった。
はずしたと見た瞬間、シルフィードが放った小さな飛行物体はステファンの機体にロックオンするとすぐに小さなビームを放った。
だが、それはすべてキラードールの装甲に弾かれてしまう。
「無駄とさっきいったはず!」
さきほど、フィオに侮辱されたステファンは怒りのため、口調まで替えていた。
空振りしたシルフィードのタイミングを見計らって、ステファンは拳を出した。
金属がぶつかり合う音共にシルフィードの巨体が吹っ飛ぶ。
しかし、まるで猫のように、空中で一回転をすると四足で奇麗に着陸をした。
「く!」
口の中が赤く輝きだし、次の瞬間三連の光がシルフィードから放たれた。
それをいとも簡単にステファンは避けてしまう。
そして、フィオは、再び殴られた。
砲を撃ったすぐ後だったので、対応が間に合わなくシルフィードは砂と飛ばしながら、海岸の上に倒れてしまい、勢いがあまり小さな売店に突っ込んだ。
ぶつかると見た店員が先に飛び出し、怪我しなかったのがせめての救いだった。
機体を立ち上がらせ、フィオは頭を軽く振った。
身体が震え始めてる。
フェナはいない不安なのか、始めて一人でキラードールを相手にするので、その恐怖からか、震えは身体の芯から沸き上がっていた。
自分はこのために訓練し来たはずなのに・・・
「ふふふ、さっきの威勢はどうした?」
ステファンが挑発する。
自分の中、フィオの中の黒い者が突進させようとする。
戦いを楽しんでいるかのように。
-だめ・・・落ち着くのよ・・・・-
フィオは、そう自分に言い聞かせると、息を大きく吸った。
そして気を引き締めると目をキラードールに向けた。
コントロールボールをもう一度握ると、自分の状況を確認する。
目の前にあるキラードール、回りを飛ぶちいさな飛行物体・・そして側に波を立てる海。
そして足元にある砂。
フィオはそれをすべて考量にいれるとある「手」を考え、それをシルフィードに伝える。
すぐに了解の答えがきた。
しかし・・
「ふふふ、時間稼ぎのつもりですか?」
「!!!!!!」
いつのまにか気を取り戻したステファンがいう。
「もう、だめでしょうねぇえ。あの出血だと・・・・。おとなしくくればあんなことにはならなかったのに」
くくくくく、と笑う彼をこの手で潰したい気持ちがフィオの心の中に沸き上がる。
そして黒い者がいけ!やれ!そうすればすっきりする!と囁く・・・
「私の腕の中であんなに幸福感を感じいたのねぇええ・・・・もったいない・・」
腕の中で・・・・という言葉でフィオはさすがに切れた。
「な、フェナに何をしたの?!」
侮辱したのかどうかは定かではなかったが、フィオはそう感じる。
「ふふふ、私はなにもしてませんよ・・・彼女から求めてきたんですよ・・・私を・・」
「な?!」
求めて来た・・・・その言葉の意味をフィオはわからなかった。
しかしけしていい気持ちがする言葉でないと、本能が教えた。
「そんなわけないでしょう!!!」
「それは貴方が・・・彼女を知らないからですよ。私は彼女の内なる感情をとき放っただけですよ・・・・男に・・・・ね・・・」
「な、なにを!」
なにがなんだか、わからなくなって来たフィオは、頭をはげしく振り、ステファンが最後にいった言葉を否定した。
そんなわけがない、あのフェナが、とフィオは信じたくなかった。
「うそ、うそ、うそ!!!!!!」
「嘘ではありません・・・・・ふふ・・・知りたければ、貴方にも教えますよ・・・貴方の中にある本当の自分を・・・」
耐えられなくなり、フィオは仕掛けた。
ステファンは口元を歪め、まってましたと言わんばかり構える。
突進するシルフィードの口の中の銃口が飛び出した。
切れたパイプに見えるそれは横にされ、口で構えられると両端に光が発生された。
光が取った形は刃である。
突進すると同時に回りに飛んでいる飛行物体の数を増やし、キラードールに向けて攻撃させる。
攻撃は弾かれるが無数と言えるビームの数と弾かれる者は目くらましを十分働いていた。
「く!やってくれますね!」
蝿みたいな飛行物体をステファンはキラードールの剣を取り出し、叩き落としはじめるが・・・・
「もらった!」
フィオは間合いをつめると、シルフィードにジャンプさせる。
さすがに予測できなかったか、ステファンは片腕を上げるしか防げなかった。
そして、シルフィードの口にある剣はそれを縦に奇麗に切った。
小さな爆発がキラードールを揺らす。
しかし、勢いをあまってしまったのか、フィオは着地を失敗する。
というか、ステファンの前に着陸してしまう。
その隙をステファンは見逃さない。
ばき!という音がし、シルフィードはキラードールの右足蹴りをくらい、飛ばされてしまう。
水飛沫があげ、シルフィードは海に落ちた。
そして、静寂が戻る。
「なかなか、よかったですよ・・・ふふふ、面白い、おもしろいですねぇ・・・お嬢さん」
いやらしい笑みを上げ、ステファンのキラードールは、シルフィードが落ちたとこにある泡をみる。
だが、そこから何も上がってこない。
「そんな、手に引っ掛かると思っているんですか?」
初歩的な作戦であった。
落ちたと見せかけ、様子を見にくる相手に再び襲い掛かる。
だれでも使いそうな動きである。
「でも、お嬢さんのためにひかかってやりましょうか」
と余裕たっぷりにステファンは機体を海の側に動かした。
そして予測通りに、何かが海の中から飛び出した。
「ふふ!もら・・・・!」
もらったといいたかったんだろうが、海から出たのはシルフィードでなく、細長いものであった。
海から出た瞬間それは半分に割れたかのように開き、巨大なビームを放った。
ビームは奇麗に破損したキラードールの腕に直撃し、爆発させた。
そして、八つあるそれは立て続けに攻撃をする。
どうしようもなくステファンは次々を攻撃を食らう。
「ぐおおおおおおお!!!」
機体は揺らされ、コントロールは聞かない。
フェイスキャノンを連射させ、なんとか打ち落とそうとするが、これがまた飛行物体はすばしこい。
押されるステファンには、そこで動く砂を見えなかった。
何かが高速で地に動いてるかのように、砂が盛り上がり、それが通ったあと陥没する。
そしてそれがキラードールのそばに来ると、赤い光と放ちながらシルフィードが砂を飛ばし飛び出た。
口砲を打ち続け、砂を掘ってフィオはシルフィードを地下で進めていたのだ。
そして、シルフィードの首にあった鬣がない。
おそらくあの海から飛び出た細いものが、小さな飛行物体とおなじく遠隔操作が出来る武器であったのであろう。
飛び上がったシルフィードは咆哮をあげ、ステファンに落下してくる。
すがん!と鈍い音ともにキラードールのフェイスキャノンの銃口がひん曲がる。
「ぐ!!!!!」
さすがにこれは予測できなかったステファンに手も足も出ない。
フィオは、それでステファンに猛攻をかけた。
細長い飛行物体、そして地の中から現れたシルフィードの攻撃にステファンはただやられるなかりであった。
フィオの中にいる黒いものはもったやれ!殺せ!破壊しろ!歓喜の声を上げていた。
そして、フィオはそれにしたがうかのように次々と打撃を与える。
勝利はもらったフィオは最後の攻撃をするため、シルフィードは大きく振りかぶった。
おそらく、口の牙を食い込ませるためであろう。
ぐおおおお!と咆哮を上げて頭を振り下ろしたシルフィードではあったが、そこに隙が生まれた。
それをステファンが見逃すわけなく、ひん曲がってるふフェイスキャノンを発射させた。
銃口がおかしくなっているためか、ビームが広がりシルフィードの下半身を捕らえた。
至近距離で放たれたビームのため、下半身がとける。
爆発が起こり、シルフィードの上半身が砂の上に叩きつかれた。
「あう!」
フィオはその振動でコントロールを失い、身体を荒らしく揺らされた。
「ふ、ふ・・・・そうくるとは・・・・思いもしませんでしたよ・・・・」
冷や汗をかいた思いをしたのか、ステファンは荒々しく息をしていた。
「く!」
と舌打ちをするとフィオは飛行物体に攻撃命令をおくる。
しかし、攻撃が再開する前にステファンは機体を突進させ、シルフィードの頭部を掴み持ち上げると、フェイスキャノンをもう一度発射させた。
『きゃうううんん!』
「シルフィード!!!!!!!」
シルフィードの悲鳴と焼かれる痛みがフィオに正確に伝えられる。
そして、主を失ったせいなのか、飛行物体立ちは稲妻に包まれ爆発した。
「いやあああ!」
シルフィードが死んだと思ったフィオは生きた前足でもがくが届かない。
身体をやられ、その動きもにぶく、おそい。
「ふん」
と鼻笑いをするとステファンは無造作に放りなげた。
身体の大半をやられては体制も修正できず、シルフィードは二、三回砂の上を転がった。
「ぐ!」
衝撃にフィオは身体を激しく撃つ。
ズシャ!ズシャ!とステファンはゆっくりと一歩、一歩近づいてくる。
「く・・・・・た、たって・・おねがい!」
間接が悲鳴を上げ、震えながら、シルフィードはなんとか立ち上がる。
しかしそこから一歩も動けない。
「ふふふ!!気にいりましたよ・・・・あなたが・・こんな気持ちになったのは・・・そうですね・・・・」
近づきながらステファンはいやな笑みを上げた。
「戦場でフェナが戦車一台でキラードールを倒したときですか。その時の彼女もあなたのようにすばやしこく、相手に大打撃を与えていましたからねぇ」
くくくく!と笑いながら彼は自分の世界にいったかのように笑い出した。
「その時、彼女の美しさと頭のよさにほれましてねぇ・・・一緒に持ち帰りましたよ・・・」
まるでフェナが物だったかのようにステファンは喋る。
それに腹は建つが、フィオはどうすることもできなかった。
「そして、彼女が私だけを・・・・・・・するようにしまして、私好みの女に・・・・・ましたよ」
それを聞いてステファンへ対しての憎しみがフィオの中で膨れあがる・・・・
「ふふふ、今度はあなたを・・・・・」
その言葉を聞いた時、フィオの背筋が凍った。
逃げないと思うが、シルフィードは動かない、どうすればと思った時目の前にキラードールの足が現れた。
「いや、・・・助けて・・・・」
がたがたと震える身体を抑える、フィオは絶望感を感じてきた。
キラードールはゆっくりとその手でシルフィードの頭部を掴もうと下ろした。
「いや、いや」
フィオは操縦席にあるはハッチ開放のスイッチを狂ったかのようにおした。
しかし、ハッチはあかない。
「さあ、いきましょう」
とステファンがいい、頭部をつかもうとしたその時!
すがん!とどこからか放たれた光線がキラードールを直撃した。
「「な!」」
二人とも驚きの声をあげ、あたりを見回した。
そうすると・・・キーーーンという低い、ジェットエンジンの音がしてくる。
ビームが再び放たれ、キラードールを揺るがす。
ビームが撃たれた咆哮をみるとそこには赤い物が高速でむかってきていた。
-Run-
とコンピューターの声がフィオに話し掛ける。
「え?だれ?」
聞き覚えのない声がフィオに話し掛ける。
フィオに覚えがない声だ、しかし、あれは、あの飛行物体は、Tran-DSZのパーツの一つである。
フェナ達をおろしたのち、それはフィオの援護をするために向かってきたのだ。
-Beep Beep-
車のホルンみたいな音を立てるとそれは細長い機首の両脇にあるカバーを開放した。
そしてそのなかにある物をを一斉に放った。
ミサイルであるそれは、まっすぐステファンのキラードールに向かった。
「ふん、なにかと思えば」
とステファンは軽く笑うと、フェイスキャノンを放つ。
広がったビームはミサイルをことごとく打ち落とした。
そして、その中をそのパーツは飛びぬきキラードールに体当たりをくらわせた。
おそらく、押し倒し、フィオが逃げる隙を与えようとしたのだろう。
しかし、ステファンはそれをがっちりと掴み、うごかない。
-Run-
もう一度彼がいうが・・・・フィオはどうしようもなかった。
ハッチの開放スイッチが作動せず、かといって子供が手で開けられる扉ではなかった。
「無駄なあがきを・・・」
ステファンは掴んだパーツを頭部を向け、フェイスキャノンを放った。
爆発が起こる。
肩翼は飛び、エンジンは完全に沈黙し、パーツはゆっくりと砂に落ちた。
-R@#&@#un@@#&*-
最後の力をしぼって「にげろ」といい、彼は爆発した。
赤い炎が機体を包み、黒い煙が、もうもうとあがる。
「ふん」
とステファンは笑うと、片足で、コクピットに見えるところ踏んだ。
爆発がまたおこり、新たな煙があがった。
「う、う、く、・・・・・うわああああああああああ!!!!!」
やれ!ころせ!仇をうて!
黒い声が囁く。
フィオにそれを否定する良心は怒りに押し殺され、冷静さは消え失せ、憎しみと怒りだけが心を支配した。
そして、それがどういう分けか、シルフィードをジャンプさせた。
それと同時に下半身大きなおとを建て割れ、上半身だけが飛んでいた。
下半身はその場で爆発した。
口砲が最後の力をため、赤く輝いた。
目標は目の前にあるキラードール。
-なんとしてでも倒す!-
心に叫びながらフィオは照準をあわせた。
「くくく、そっくりですねぇ、その無駄なことをするとこが・・・」
ステファンを笑うとキラードールをかがめた。
フィオは口砲を発射させるが、キラードールがかがんだため、光はそれの後ろに着弾、砂を飛ばした。
「そ、そん・・・」
言いおわる前に鈍い振動が機体を揺るがした。
タイミングをはかり、ステファンはソードでシルフィードの頭部を切ったのである。
それから、地面に叩きつけられまでの時間はフィオにとって、とても長く感じられた。
地面に叩きつかれた時、意識はほとんど飛ばされた。
負けた絶望感にフィオはやる気をなくした。
そして、頭部が何かに広い上げられ、ハッチが強引にあけられ、光が当たるの感じた。
だれかに抱えあげられ、人の形をした物の暗い穴へと向かう。
あたりにはなにかが燃えてる。
見覚えのものがあり、かなしくて、涙が流れた。
「ほ・・・・・・・・ち・・・く・・・で・・・・・み・・・・・と・・・・あ・・・・た・・・・・も・・・・・・か・・・・・・可愛いですね・・・・っふ」
何をいってるのかいるのかわからない。
黒い穴に連れ込まれたその中は暖かく、いい匂いがした。
その香りを吸い込むと頭がどんどん真っ白になっていき、あたたかく心地よく、身体がういているかように感じる。
「ふあ、あ、」
「きもちいいでしょう?」
耳に囁かれる。
素直に小さく頷いてしまう。
「これを飲めば・・・もっと・・・・」
といわれ、口になにか入れられる。
蜂蜜みたく、あまく、いい香りをしていた。
ごほ!いきなり液体を流されて喉につまり、咳をする。
「しょうがないですね・・・・・」
とその言葉を最後に生暖かい感触が唇に感じる。
そしてあまく、暖かいものが流される。
ごく、とそれを飲み込むと、ふわあと熱いものが身体に回る。
「あ・・・・う」
「ふふふ、それではいきましょうか」
そういうと穴の入り口は閉じた。
ここにはいてはいけない、この人は危険だと心のどこかが訴えるがフィオはそれを否定する。
この生きてはじめて感じるこの感触と温かさを感じていられるなら。
ふと、だれかの顔が浮かぶが、もうそれがだれなのかわからない。
あたたかさだけを身体がもとめ、フィオはそれに従った。
もうどうでもよかった、あたたかさだけがほしかった。
これが手に入れば、自分はどうなってもいいという思考がフィオの頭を通った最後の思いであった。
ステファンのキラードールは燃え盛る残骸を残し、その場を光と共に消えた。
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