<<我が家の知恵>>
西瓜の皮がとてもおいしい漬物になることをご存知だろうか? こんなの食べるの我が家だけ?
外側の緑の堅い皮と、内側の赤い部分の残りを落とし、白い部分だけ一口サイズに切る。
私の場合は4つにわけて、
1)塩もみ
2)塩もみののち昆布を入れる
3)塩もみの後ざっと洗って甘酢で漬ける
4)塩もみの後、醤油と日本酒で漬ける
以上4種類をつくる。冷蔵庫に1時間程度から食べられるようになるし、これとおそうめん、あるいは茶粥があ
れば、夏の食欲のないときでもいくらでも食が進むんである。
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<<現代人の知恵>>
下宿時代は堅い皮と食べ残しの赤い部分はコンポスト(バケツに土を入れただけ)にいれて堆肥にしてい
た。これで西瓜ひとつたべても生ゴミはゼロである。
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<<中国人の知恵>>
ところで妊婦は西瓜を食べてはいけないと言うのは中国人の常識である。
妊婦だけではなく、冷え性・低血圧・貧血・めまい・立ちくらみ・生理中の女性などには禁物である。これは、
これらの症候群が漢方医学では「涼」「寒」に属するもので、西瓜もまた「涼」の食物だからである。「涼」な食
物にはこのほか、瓜類すべて、白菜、レタス、大根、蜂蜜の巣などいろいろある。(すべて相棒の受け売り、
間違ってたら指摘してください。)
とくに西瓜の皮は、のどの腫れや便秘(どちらも「熱」「火」の症候群)などの治療に使われる漢方薬の一種
でもあり、「涼」を促進する効果が著しい。くりかえすが妊婦はゼッタイにとってはいけないのである。
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というわけで、相棒と全く同じ内容の夕食であったのにもかかわらず、夜8時ごろから胃痛と腹痛が始まる。
相棒の「涼」「熱」説にしたがって、生姜湯をどっさり飲まされる。生姜は「熱」い食物の代表。低血圧の私が
白菜を料理する際にはかかせない。生姜湯に使う砂糖は「紅糖」。さとうきびの糖を精製せずに固めた赤い
塊である。砂糖大根からつくる「氷糖」(日本で言う氷砂糖)は「涼」の糖なので、この場合は使えない。
11時ごろ、うんうんうなりながら眠る。
2時、激痛で目が覚める。痛みの中心が下腹部に移っており、身体の現状が現状だけに慌てる。生姜湯をも
う1杯。相棒が酒瓶を空けてタオルで巻き、即席の湯たんぽを作ってくれる。役に立つ男をムコにして本当に
良かったとしみじみ思うが、痛みが引くわけでもない。
疼痛と激痛が間欠的に続く。流産にともなう仮性陣痛ではないかと考えてぞっとする。先週から止まらない
セキがひどくなり、メガネが曇るほど体温が上がってくる。激痛のピークには横にも縦にもなれず、よつんば
いになって下半身をゆすりたてるという、事情を知らん人が見たらいったいなにをおねだりしてるのだろうとい
う格好で耐える。枕に顔をうずめてうーうー言っていたら、相棒が救急車を呼んでいた。
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生まれて初めて救急車に乗り、生まれて初めて担架で運ばれる。
「なんで妊婦に西瓜なんか食わせた!」
常識中の常識に反する行為をした相棒を、救急車の救護員が責めている。「涼」「熱」説、マジであった
か・・・
「で、生姜湯は飲ませたのか?」 これもマジ・・・
中国人の共通認識に感心しながら夜中の医院に運ばれる。寒い車内で血圧をはかると上が160、低血圧の
私には目をむくような数値であるが、生姜湯様(←格上げ)の効き目か痛みがおさまってきた。病院までの
道のりが長く感じられたこと。
到着。と、広い待合室は人でいっぱい。草木も眠るうしみつどきの病院が、なんでやねん?
血圧を測られ(上が140まで落ちついていた)、出血の有無を確認されていたら(出血なし)、私と前後して運
ばれてきた妊婦らしき女性ががひどい出血で血圧も下がっているらしく、慌てた医師と看護婦がそっちにか
かりっきりになってしまった。彼女はすぐに手術室のようなところに担架のまま運び込まれて行った。
さて私は超音波スキャナで胎児の心臓を確認。懐中電灯のような簡易スキャナでは確認できず、スキャナ室
まで歩いていく。このとき、結構普通に歩けたので安心する。胎児(胎名ちびぞう)は無事、盛大に動いてい
た。これが一番心配であったので、あとはどうでも良くなってへらへら笑ってしまう。
そのままお手洗いに行きたくなり、こもっているうちに「緊急を要する患者」から格下げされたらしく、待合室
へ戻された。しかしなんなのだ、この人数は?しかも、とりあえず急患には全く見えない・・・
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<<香港人の知恵>>
さて、実は香港の公立病院では、夜中の急患は無料なのだそうだ。
というわけで、実は今この待合室にいる待ち患者のほとんどが、無料のこの時間を狙ってきている単なる外
来なのだという。見ると、「ただいまの待ち時間160分」と、本物の急患が聞いたら気を失ってしまうような札
が出ている。患者は別にイライラする風もなく、サッカーの深夜中継を観戦している。コーラなどを飲んでいる
人も多い。
夜中に診療を受けると無料である上、勤めを休まなくてもよい。不安定な職業についている人にとっては願っ
たりかなったりで、特に土曜は翌日出勤しなくてもいい人々で混み合うのだそうだ。私の住んでいる地域は
低額所得者層が確かに多い地域である。土曜の深夜に発病した私は運が悪かったわけだ。
トイレちかくに陣取り、イライラと行き来して待つこと1時間半、やっと名が呼ばれた。
検便とのどの検査。
「あー、感染症ですね。細菌性の腸炎と上気管炎です。抗生物質と痛み止めがよく効くんですよ。でもアナタ
妊娠中だから、なんにもしてあげられません。」
気休めの点滴と、生理食塩水をもらって治療はおわり。生理食塩水の粉末もらって、ずんずん病院の玄関か
ら出て行く相棒に、私「治療費は?」、相棒「言うたやん、夜中はタダなの。」、私「救急車も?」、相棒「気に
するな、この中でオマエの納税額が一番多いことはオレが保証してやる。」
夜中のタクシーで帰りました。
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