6月7日(土)

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(サルカンニエミ II)

 また、サルカンニエミに行った。先月25日(日)に遊園地を訪れたときは、はっきり言って寒かった。曇っていたせいもあるかもしれないが、日本の3月上旬くらいの感じで、冬物衣料を船便で送ったのを悔やんだものだ。それから、わずか2週間。今日は快晴で11時の気温は28℃、夕方7時過ぎ(と言っても太陽はまだ高く午後3時くらいの感じ)の気温が26℃であった。完全に夏である。遊園地では上半身裸の男性をよく見かけたし、女性もノースリーブの人が多い。Tシャツまたはランニングシャツ一枚で十分である。2週間前には、町角の屋台でアイスクリームが売られている(しかも、それがよく売れている)のに呆れたが、今なら何の違和感もない。冬から一気に夏になったように感じる。前回に比べて4〜5倍の入場者が居るように見える遊園地を避け(避けた理由は込み合っていたからではないが)、今日は、水族館、展望塔、イルカのショーをこなす予定である。

  

 水族館は、申し分けないが見るに値しない。30年以上前から営業されている蒲郡市の水族館に、はっきり負けている。鳥羽の水族館や、名古屋港水族館を見学したことのある人なら、どうしても比較してしまうであろう。展示されている魚の種類は少なく、大型水槽もなく、場所が狭い。はっきり言って、ここは屋外水槽で泳ぐ2頭のあざらし(入園しなくても見えるのでタダ)を、ボーと見ているだけで十分である。魚(特に海の魚)に関する両国民の関心の違いか、単純に人口密度の違いか。

  

展望レストラン

 展望塔は有料で、大人15マルッカ(375円)、子供10マルッカを払って、エレベータに乗る。フィンランドのエレベータにしては(失礼!)高性能で、始動停止時の加速度を低く抑えてあり、100m以上の高度差を短時間でこなす。鼓膜に気圧差を感じ、思わず唾を飲み込まざるを得ない。上部は2層になっており、下部は休憩所とセルフサービスのカフェ、上部は本格的な回転展望レストランになっている。普段の西澤家の行動パターンでは、絶対に行くはずのないレストランに今日は入った。
午後2時を過ぎているがレストランは結構はやっている。その場で予約を申込んだ。ここは高級レストランではないが、フィンランドでは一般にレストランは高い。大学食堂やケバブの店のようにはいかない。手持ちの金額を確認し、清水の舞台(ナシンネウラの上)から飛び降りたつもりで席に着く。
  
 席は上空から見て時計周りに回転し、1時間で約1回転するので、食事をしながら、周囲の景色を楽しむことができるのである。われわれが着いたのは、丁度、タンペレ駅のある南東に面する席であった。メニューは、親切にも英語のメニューを準備してくれたので(くれたのだが、)全然、料理のイメージが湧かない。絵と知っている単語をつなぎ合わせて、なんとか、料理を注文した。魚料理を2品、肉料理を2品(牛のステーキとポークソテー)、野菜サラダを2皿にビールとオレンジジュースを各2本である。400マルッカは越えていないはずだから(実際には388マルッカ、税込だった)、支払に困ることはなかろう。しかし、このとき密かに夕食はパスする決心をした。
2食分と思えば、そう高く . . . (やっぱり高い)。料理の盛は多くないが、子供たちでは一皿平らげることはできない。それらの大部分がまわってくることを、予め計算に入れていたとしたら、父ちゃんもセコイ性格であるが、けっしてそんなことは無いであろう。出された料理は、きれいになくなった。4種類の料理を試して見て、ソースにかける料理人の情熱を感じた。日本料理が鮮度の良い素材を選び、その良さを引き出すことを中心に考えるのと対称的である。しかし、日本で食べられない味ではないだろう。ただ、私があまり食べたことのない味付けというだけだ。

(湖の国、スオミ)

 景色を眺める時間はたっぷりあった。席に着いてから料理が届くまでに約半周、タンペレの市街地を詳しく観察できる。子供たちは、すぐ下を通る車や、ときどき通る列車、街の向こうに見えるピュハ湖の遊覧船を見ている。ビールが先に来たので、私に焦る気持ちはないが、レストランに入りなれていない子供たちの注意は、景色にそらすしかない。ヘルバンタの水道塔や高層アパート群の頭も遠く林の向こうに見える。やはり、ヘルバンタの位置は、豊橋の駅前から見た豊橋技科大の位置に似ている(方角、距離とも似ている)と再認識した。料理が届くころには、タンペレの北側にあるナシ湖が眼下に広がり始めた。
  
 フィンランドでは市街にも木が多く、郊外の住宅も森林に囲まれているので、地表にいると周囲の湖を感じないが、上空から眺めると本当に湖が多い。タンペレの中心部は南北からピュハ湖とナシ湖に挟まれているが、ピュハ湖は北のヴィラトまで、ナシ湖は南のハメリンナまで、それぞれ約100km、8時間の湖上クルーズが可能である。ヘルバンタの手前には小さなイーデス湖も見える。フィンランド人が自国をスオミ(湖の国)と名付けたのも、うなずける。
(展望塔からヘルバンタの方向を眺める)

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