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 Rock


Nast's Santa1
Who's Santa Claus?
Part 4
現代のサンタ・クロース

Index Page
Part 1 セント・ニコラスについて
Part 2 いろいろな民話とニコラス
Part 3 アメリカでのセント・ニコラス
● Part 4 現代のサンタ・クロース

 



「耳山」(夏)
丘の向こうに「耳山」が現れました。

特徴ある「野うさぎの耳」が、今も世界の子供たちの声に耳を澄ませています。
 



● 現代のサンタ・クロース
現代のサンタ・クロースについて語るとき、この「耳山」ほどふさわしい場所はないでしょう。
Korvatuntri
冬の「耳山」
楽しいお話とはうらはらに
ここには過酷な自然があります

耳山 (Korvatunturi) は、ラップランド (Lapland) のサヴォコスキ (Savokoski) にある高い丘です。

最も高い所で約500m、3つの峰があり、フィンランドとロシアの国境がそれらを分けています。形に特徴があり、見る場所によっては、「野うさぎの耳」のようにも見えるので、「耳山」と呼ばれています。

このありふれた北の果ての丘が、軍事上の拠点としてではなく、世界中のそれも特に子供たちの注目を集めている、とお聞きになればさぞ首をかしげられることでしょう。

実は、ここはフィンランドのファーザー・クリスマスである「ユールプッキ (Joulupukki)」が住むと言われている場所です。この場所は、フィンランドで家畜としても使われているトナカイの育成区にも当たっており、雪に閉ざされているだけの北極よりもサンタが住むにうってつけの場所でした。しかも、ロシアとの国境に位置している関係上、一般の旅行者は立ち入り禁止となっていて、誰も近寄れない、という現状がますますこの場所を神秘的なものにしました。



● 北極でトナカイは何を食べるの?
実際はこの「伝説」は非常に新しいものです。

ことの起こりは1925年に溯ります。
大人たちにとり、「サンタ・クロースがどこに住んでいるか?」というのは昔からの頭の痛い問題でした。子供たちが毎年必ず尋ねるからです。
「ねえ、サンタさんはどこに住んでいるの?」

すでにサンタ・クロースは「妖精」のような陽気なおじいさんで、毛皮のコートを着ている、というイメージは定着していました。そこで、「北極に住んでいる」というお話が一番子供たちを納得させるものでした。

こうして、「サンタクロースは北極に住んでいて、そこにはクリスマスの贈物の工場がある」、というお話が生まれました。(今でも、この「北極説」は一部で強い支持を受けています)

しかし、そこに、素朴な疑問が起こりました。
ある子が、こんなことを質問したのです。

「じゃあ、草も生えない北極で、トナカイさんたちは何を食べているの?」
これには大人たちも考えこんでしまいました。

「トナカイたちは別の場所にいて、そこでは食べ物がいっぱいあるから心配しなくてもいいんだよ」
「ふうん、そんじゃ、トナカイさんたちのいるのはどこ?」

このデッド・エンドに解決を見出したのが、1925年のアメリカの新聞記事でした。

「草を食べるトナカイが、草のない北極に住んでいるはずはない。その通り! だって、サンタクロースは北極じゃなくて、フィンランドのラップランドに住んでいるんだから!」

この「ラップ・ランド説」の元々の根拠はよくわかっていません。よく言われている、そこにトナカイがたくさん住んでいることに新聞が注目した、というのが真相かも知れませんが、いずれにせよこの「フォーカス記事」で、アメリカ中の子供が色めき立ちました。「ラップランド?それはどこ?」だれもが地図帳を開いてその場所を探しました。

それと前後し、1927年、フィンランド・ラジオのパーソナリティだった「マーカスおじさん (Uncle Marcus)」ことマークス・ローシオ (Markus Rautio) が、決定的な発言をしました。それは次のようなものです。

「ファーザー・クリスマスは、ラップランドの耳山に住んでるんだよ。どうしてそうかって言えば、その耳で世界中の子供たちの願いを聞くためさ!」
これについては、「ほんとうにいい子でいるか、悪い子でいるか、ちゃんと聞いているんだ」という理由だった、と言う人もいます。

これは、マーカスさんの創作でした。「耳山」という名前と、アメリカの騒動を結び付て子供たちのために楽しいお話を作ろうとしたのです。しかし、この「お話」は大ヒットしました。戦争や金融不安で揺れていた時代で、人々は夢を求めていました。

さらに、「耳山」が、世界の耳目をあつめる「事件」が起こります。

第2次大戦後、ロシアは、山全部をロシア領とする要求をフィンランドにつきつけました。ロシアは強硬で、フィンランドは譲歩せざるを得なくなりそうな気配でした。しかし、フィンランド政府は、その山がフィンランドの子供たちにとって、どれだけ大切な山であるかを説明しました。それを聞いてロシア側は態度を和らげ、やがてその要求自体も取り下げられたのです。

しかし、これは考えようによれば、「ロシア政府は、『耳山』をサンタクロースの聖地だと公式に認めた」ということにもなります。こうして、「耳山」は世界的に「公認」されることになりました。



● サンタ・クロースの事務所
Santa & girl
フィンランド政府は、誇りをもって「サンタ・クロースの住む国」として、フィンランドを世界に紹介しています。

北極にある、とされていた「サンタの工場」はフィンランドへ移されました。そこでは、チュートン起源の妖精達がたくさんサンタの助手として働いていることになりました。スカンジナビアは「エッダ」を始めとして、神話・妖精伝説の「宝庫」です。「トトロ」のモデルになった「トロール」も、フィンランドの出身です。まさに、「妖精ならまかせとけ!」という意気込みです。

1950年までに、「サンタ・クロースの村」や「事務局」、「郵便局」までが誕生し、その場所に選ばれたフィンランドのロヴァニエミ (Rovaniemi) の近くのナッパピイリ (Napapiiri) は、いつでも大勢の子供たちでにぎあう場所になりました。

そこには、子供たちや、いつまでも心が若い大人達が沢山訪れます。そこでは「本物」のサンタ・クロースとも会って話をすることが出来ます。

サンタさんが尋ねることは何かって?それは、もちろん「クリスマスには何がほしいかね?」だそうです。

その郵便局では、世界中から寄せられるサンタクロースへの手紙を整理して、それをサンタさんへ渡しています。



Santa Claus & the Reindeers


● 最後に

いろいろとサンタ・クロースについて見てきました。
この伝説は、はるか昔のトルコ地方に始まり、中世の様々な言い伝えを取り込み、幾多の凄惨な戦争、宗教改革の嵐の中でも民衆の心の中に生き続けた「何か」でした。

この特集の最初に書いた疑問、「一度も会ったことのないサンタ・クロースに、なぜ親しみを感じるのか」その答は、恐らくこの世で一番簡単なものでしょう。

サンタ・クロースは、本当は「ニコラス」でも、「クリスト・キントル」でも、コーラの宣伝のポスターのおじいさんでもありません。その人は、私たちのすぐ身近にいる人です。空飛ぶトナカイに乗らないかも知れません。素晴らしく高価な贈物をくれないかも知れません。しかし、この世が生きる値打ちのあるものだと、私たちにいつも教え続けてくれています。その役割は伝えられ、深められ、印象を変えながら、私たちの命の連続の中で今も光っています。


絢/1998年11月。



参考資料
Santa Claus and related traditions
Christmas in Scandinavia
Aspects of the Antebellum Christmas
ENCARTA 95


これでこの特集はおしまい!次回の特集も読んでくださいね!


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